JINSEI STORIES
滞仏日記「Amazonで総合1位になったよ。父ちゃん、驚いて、身を案じています」 Posted on 2022/06/21 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、朝早くから、携帯のラインメッセージががんがん入るのだけど、ぼくは窓際の机に向かい、海を見ながらエッセイ教室の課題を読んでいた。
ところが、あまりに鳴りやまないから、ちらっと覗いたら、マガジンハウス編集の大島さんからだった。
興奮気味に、「たった今、Amazonの総合ランキングで1位になっちゃいました」とわけのわからないメッセージ、何事かと思って、携帯を覗くと、発売10日前の拙著「パリの空の下で、息子とぼくの3000日」がすでにランクインどころか、1位になっている。
は? 何かの間違い?
読み返すと、最初のメッセージは「9位、すごい」であった。
僅かな時間で1位になったのが伺える。凄い、笑。
しばらく、何が起こっているのか、分からなかった父ちゃんであった。
作家生活30年、ぼくが知る限り、Amazonで1位になったのははじめてかもしれない。Amazonは最近できたから、仕方がないけど、この間、「その他の料理部門」とかいう訊いたことない部門で1位になったことがあったっけ、笑。しかし、総合で1位は自分史上、はじめてだ。
しかも、発売前で1位って、ちょっとなんでも、怖すぎる。
2位が石原慎太郎さんのあの話題の遺作なのだから、もっと怖い。
でも、冷静に考えて、この一番は瞬間風速かもしれないので、大喜びはできない。
もっとも、オンライン・エッセイ教室をこの半年間続けてきた甲斐はあった。どうやってこの一冊が生まれたのか、経緯、構成の仕方、まとめ方、など、生で少しだけ、お話出来るかもしれない。おっと、それでも、発売前なのだね・・・。怖い。
この本は、ぼくがシングルファザーになった頃から今日までの日記をまとめたものだけれど、それらをデザーンストーリーズで時系列順に検索することはほぼ不可能で、それを編集者さんと今は亡き、秘書の菅間さんが、全て引っ張り出して、ぼくが息子について書いたものだけ一冊にまとめたのであった。
なにせ、日記だけでも、3000エッセイがDSのアーカイブに保存されているのだから・・・よく書いたよね、笑。
菅間さんは生前、ぼくの全ての原稿を分類し、保存していた。今は、ほんとうなら弟の恒久がやらなければならないのだけど、やってるのだろうか。仕事というのは言われてやることじゃない、自分で見つけてやるのが仕事であーる。
ともかく、菅間さんのおかげで出来上がった一冊といっても過言ではない。
それを編集者の大島さんが内容を精査し、構成して、一冊にまとめたのである。読みやすくまとめられている。
NHKBSの「ボンジュール!辻仁成のパリの春ごはん」はぼくのこの日記のほぼほぼ裏側を実写化したものだけど、このエッセイ集は表ということになる。表はすごい。
番組におさめきれなかった細かな物語がびっしりと詰まっているので、まさに、辻家にとっては歴史本なのである。
2014年から2022年までの二人の悲喜こもごもがすべてそこに網羅されているという寸法なのだ。
ぼくの子育ての哲学・・・。それは、最終的に、どんな時も、子供に寄り添い、子供を信じるということなのだ。
※ 今日は焼きそば風パスタにしただ~、めっちゃ美味かった。手抜きしない。
息子は志望大学に合格したし、エッセイ本は1位になった。きっと、来年くらい、ぼくは死ぬのかもしれない。
いいことがあると、次に待ち受けているものは決まっていつもどん底なのである。
別に、一喜一憂したくはない。せっせと生きるに限る。
実は、今日、サウンドクリエーター(大阪のイベンター、ECHOESからの仲間)の中原さんから、ビルボードの追加公演を10月にお願いしたい、と連絡があった。
なんでも、ビルボード会員さんも買えない人が大勢出ているのだとか・・・。だから、追加公演、と・・・。
ぼくは「売れるから、やろう」というのが、ちょっと、違うんjないか、と言った。
「中原さん、ぼくがあなたに送った先日のパリライブの動画観てくれましたか? (返事なし)じゃあ、まず、そこからでしょ? 今のぼくを知らない人がチケット売れたからやろうって、ぼく的には違うんですけど・・・。ロックンロール魂はどうしたんですか? ちゃんとロックしようよ。チケットが売れたからやるんじゃなく、今のぼくがこういう音楽をやっているから、今こそ、ちゃんと届けるべきだ、というなら、わかる。ビルボードが本当にやってほしい、という気持ちがあるのか、まず、そこを教えてよ」と言ったのだった。
彼はECHOESの初期からのスタッフだし、清志郎さんにも可愛がられていた人だから、音楽を忘れないでほしい、ということを言いたかったのである。これはぼくなりの愛なんだけど、伝わっただろうか?
中原さんは今のぼくの音楽を知らない。今のぼくの音楽が好きな人とぼくは一緒にライブをやりたい。それがファンの人への誠実なのである。
ぼくは過去ばかり振り返らないし、未来ばかり見るつもりもない。今を精一杯生きたいのである。
ぼくは堅物だろうか? 62歳までこうやって生きてきた。
きっと、「辻はめんどうせーやつだ」とみんな言ってるはずだ。たまに、聞こえてくるし、笑、でも、そういうこと言ってる人間はガッツがないんだと思う。
ぼくの人生には関係ない人たちだ。
ぼくはただ、自分に嘘をつきたくないし、正直にやりたいし、とことんやりたい。まだ、62歳の赤ん坊なのだから。
毎日、毎日を丁寧に生きたい。毎食、毎食を美味しく頂きたい。それがぼくの辻道なのである。あはは・・・
つづく。
今日も読んでくれて、ありがとうございます。
父ちゃんのYouTubeライブ、下のURLからご覧いただけますよ。
Jinsei Tsuji Hitonari【Live in Paris 2022】Ver.1
https://youtu.be/syEP1_-ZPog
Jinsei Tsuji Hitonari【Live in Paris 2022】Ver.2
https://youtu.be/x1lNvaIJquA
さて、お知らせです。
『ボンジュール! 辻仁成のパリごはん 2022春』の再放送、21日、今日かな? 今日でした! 笑。早くない? 再放送。
【再放送】6月21日(火) 午後11:00〜11:59 [BSプレミアム]
NHKーBSを視聴できない方は以下からご覧いただけます。
【NHKオンデマンド】6月18日18時〜2週間配信
会員登録が必要で、単品利用の金額は1本220円かかってしまいます。すまんです。
そして、父ちゃんのオンライン。エッセイ教室は、6月26日、今週の日曜日に、パリからオンラインでエッセイ教室を行います。
ブロガーの皆さん、エッセイスト目指している皆さん、プロ・アマ問わず、エッセイが好きな皆さん、どしどし、ご参加ください。
詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックくださいね。