欧州最新情報
パリ最新情報「ブリジット・マクロン大統領夫人、誹謗中傷へ立ち向かう。訴訟問題へ」 Posted on 2022/06/16 Design Stories
ブリジット・マクロン大統領夫人が人権を侵害されたとして女性を提訴した。6月15日にパリ裁判所にて初公判が行われ、被告は民事・刑事の両面で責任を追及されることになった。
事の発端は、フリージャーナリストを自称する被告が配信したYouTubeの動画であった。
大統領夫人が実はトランスジェンダーであること、彼女の出生名はジャン=ミシェルであることなどが動画内で述べられている。
配信は昨年秋にスタートした。この時期はマクロン大統領が続投するか否か、世間の関心も高かった頃だ。そのため通常より多くの人の興味を引き、噂には尾ひれがついてしまう。最終的には夫人が小児愛性者であるという根も葉もない話になった。
ブリジット・マクロン大統領夫人はこの偽情報によって尊厳が傷つけられたとし、今年春から訴訟を起こす意向を固めていた。
マクロン夫妻はこれまで、たびたび誹謗中傷の的となってきた。
ファーストレディは各国で注目される人物だが、夫妻の場合、多くがその年齢差に関心が集まった。
フランス国民の大多数は政治家のスキャンダルに関して興味を示さない。ところが夫妻は年齢差によるものなのか、心無い一部の声が非常に大きい。マクロン大統領自身は2017年の大統領選挙期間中にゲイであるという疑惑がかけられたほどだ。
フランスでは「表現の自由」が重要視される。中世から続く一つの文化であり、芸術家によって時には命がけで守られてきた。
ただ、今日においては何を言っても良いというわけではない。
仏政府は19世紀末より表現の自由に制限を設けており、名誉毀損や憎悪・暴力の扇動、テロリズムの擁護については違法と定めている。なおこれには人種・宗教・性的指向などに基づく誹謗中傷も含まれる。
テロリズムの擁護については2014年から厳しい措置が取られており、有罪となれば禁錮5年と7万5000ユーロ(約1000万円)の罰金が科せられる。発信がSNSの場合はさらに重く、禁錮7年以下と罰金10万ユーロ(約1400万円)となる。
今回の大統領夫人の訴訟問題は、人権侵害・プライバシーの侵害に基づくものだ。
夫人は当初「遠くから眺めていた」としていたが、被告が夫人の兄弟や子供にまで話を膨らませたことで訴訟に至ったという。
なお仏紙に対しては「私は5年間もあらゆるハラスメントを受けてきました。今何もしなければ私の声は届かない」とコメントを発表している。
また夫人は、過去に自分を標的とした暴力の呼びかけが一部SNSで上がったことについても言及した。
「ブリジット男性説」という新手のバッシングが勃発した昨年だったが、大統領夫人は毅然とした態度で法廷に持ち込んだ。
きっかけは、一人の女性が流したデマだった。しかし大統領選が迫るにつれ、極右や反ワクチン派がそれを助長し炎上させたという事実もある。そういった複雑な背景を含めて、今回の訴訟問題には大きな関心が寄せられている。(内)