JINSEI STORIES
フランスごはん日記「オイル・サーディンのフランス人的な食べ方。これは、やってみて!」 Posted on 2024/11/04 辻 仁成 作家 パリ
サーディンの缶詰、どうやったら、美味しく食べ垂れるのか、とよく聞かれるのである。
で、シチリア風サーディンのパスタとか、と答えているが、実はもっと簡単な方法があるのじゃ。
料理をするのが面倒くさい時、父ちゃんは、サーディン缶詰めを一つ買う。
大きなサーディンが四尾入っている。(大小いろいろあるので、いろいろ試して、美味い缶詰を探すしかない。小さないわしがたくさん入っているのもあるし、唐辛子入りのピリ辛も美味い!!!)
正直、パリに来るまでサーディンの缶詰めをそのまま食べたいなどと思うことはなかった。
日本にいた頃は缶詰めの蓋を開けて、ちょっとオイルを捨てて(捨てる時にオイルが缶詰めに付着しないように気を付ける)ガス台の上に置いて、醤油を垂らし、弱火でとろとろ煮込んで酒の肴にするか、サーディンのオイルパスタを作っていた。
しかし、パリのカフェで「おススメ」というのにサーディンがあったので、興味がわいて注文をしたら、なんと、缶詰めが、そのまま、ぼんと出されたのだから、驚いた。
え? と思って、
「どうやって食べるの?」
とギャルソンに訊いたら、
「パンにバターを塗ってその上にサーディンを載せて、ちょっとフラードセル(塩の華)をパラパラ振りかけて食べると美味いんですよ」
と教えられた。
「えええええ、マジですか!?」
でね、これが、食べたら、本当に美味しかったのだ。
やばいくらいに、美味い!!!!! ワインがすすむ君なのじゃ。
それから、ぼくはサーディンの缶詰めを常備するようになった。
バゲットは焦げ目がつくまでトーストする方が美味しい。
バターはけっこう多めに塗っておくほうが美味しい。
サーディンは肉厚の有機系のサーディンが美味しい。
最後にフラードセルと黒コショウをちょっと振りかけるとさらに美味しい、ことが分かった。唐辛子ペーストとか、いろいろ、試した。
ワインとの相性がとってもいいので、料理をしたくない時とかに便利なご馳走となる。
スペインやフランスやポルトガルなどを旅するとサーディンの缶詰め専門店が結構あることに驚かされる。
ぼくが暮らすノルマンディの田舎の村にも2軒も大きな専門店があるし、普通のお惣菜屋とかスーパーなどにもサーディンコーナーが充実している。
漁港があるこんな村ににも専門店が2軒もあるのだから、フランス人がサーディンをどんなに好んで食べているのかが分かろうというものだ。
逆に、フランス人の友人には、サーディン缶詰めを使って、梅和えのパスタを作ってやったりしている。
「ぎょええええ、マジですか!?」
といつも驚かれているが、うまいねー、と褒められる~。あはは。
まさに、国によって、こんなに食べ方が違うのである。
心地よい夕刻、部屋の窓をあけて、テーブルの上には冷えたワインとこのサーディンの缶詰めが並んでいる。
もうそれだけで最高の気分に浸れる。
沈む夕陽を遠くに眺めながら、好きな音楽を流し、トーストしたてのパンにバターを塗ってサーディンを一尾載せ、パクッと頬ぼる。
うーん、たまらない。ワインがすすむ。
振り返ると、そんなぼくを愛犬が見上げている。なにげない一日の締めくくりに、オイルサーディンに癒された。
つづく。
ということで、次回のラジオ・ツジビルは、明日、11月y5日、日本時間、22時からです。ご視聴ご希望の皆さんは、下のTSUJIVILLEのバナーをクリックしてみてください。