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パリ最新情報「フランスで女性首相が誕生!知られざるその素顔とは」 Posted on 2022/05/18 Design Stories
5月16日、マクロン大統領は新首相にエリザベット・ボルヌ労働相を任命した。
フランスの女性首相は、ミッテラン大統領時代のエディット・クレッソン氏に続き史上二人目、30年ぶりとなる。
前任のジャン・カステックス氏は、マクロン氏再選による内閣改造の一環として同日辞任。
16日夜に行われた就任式典では、カステックス旧首相がボルヌ新首相に向けて拍手とエールを送る一面も見られた。
ボルヌ氏はスピーチで「すべての女の子たちに『夢の果てまで行ってください』と伝えたい。そして、女性の地位向上のための戦いを減速させてはならない」と力強く語っている。
新首相となったエリザベット・ボルヌ氏は、1961年パリ15区生まれの61歳。
フランスに亡命したロシア系ユダヤ人の父と、薬剤師だった仏人母のもとに生まれた。
父を早くに亡くしたため、学生時代は貧しかったという。
しかし優秀だった氏は国の奨学金を得て、フランス最高峰の高等教育機関であるエコール・ポリテクニークを卒業する。
さらには国立船舶学校(ENA)で学位を取得し、エンジニアの肩書も手に入れた。
1987年には設備省の高級官僚として政治の世界へ。
長年にわたり、左派の重要人物と仕事を共にした。
ジョスパン首相の時代には教育省の顧問や運輸省の顧問を、ドラノエ・パリ市長の時代には都市計画少局長を歴任する。
現パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏とはこの期間に親交を深め、環境問題について共に熱心に取り組んだ。
さまざまな閣僚を経た後、2013年に女性初の県知事として仏西部ポワトゥー・シャラントの知事に任命されたほか、2015年にはパリ交通公団(RATP)の代表取締役にも選ばれた。
こうして輝かしいキャリアを持つ彼女だが、彼女が世間に知られるところとなったのは、2015年から2017年にかけてのRATP総裁時代だろう。
当時は「努力家」と評される一方、「要求が厳しい」とも言われており、RATPでは泣きながらオフィスを去った人が何人もいたという。
その厳しさから「バーンアウト」というあだ名も付けられてしまった。
しかしその後に入閣を果たすと、マクロン大統領をはじめとする閣僚たちから絶大な信頼を寄せられた。
マクロン大統領が進める一連の社会保障改革は、国民の抗議運動を引き起こすリスクがあるが、ボルヌ氏は「労働組合との交渉を慎重に進められる技量を持つ人物」だと評価されている。
事実、ボルヌ氏は慢性的な赤字体質が問題となっていたフランス国鉄の改革を推し進めたほか、パンデミック時の失業対策に取り組み、失業率の低下にも大きく貢献した。
マクロン大統領・ボルヌ新首相は、6月の議会選挙に向けて、環境や雇用を重視する姿勢をアピールする見込み。
また大統領が掲げる「年金改革」を確実に進める狙いもあるという。
雇用、環境問題、女性の地位向上とタスクは山積みだが、ボルヌ氏は16日、Twitterで「目の前にある課題は大きい。この責任を十分に理解しています」と発信している。
史上二人目の女性首相が誕生したとして、フランス国民からの期待も非常に大きい。
人気が低迷するマクロン政権の救世主となるのか、ボルヌ氏の動向に注目が集まる。(大)