PANORAMA STORIES
q.b.レシピのないレシピ帳~ズブリチョラータ~ Posted on 2022/05/11 八重樫 圭輔 シェフ イタリア・イスキア
先日、我が家にイギリスから小包が届きました。
送り主は冬にイスキア島を旅行で訪れた、ロンドン在住の日本人のご家族でした。
妻が彼らと偶然出会って親しくなったのですが、あいにくレストランは改装工事で休業中だったため、バールでお茶をしたり何度かお話しをした位でした。
それなのに、思い出深い旅になったからと、帰国後わざわざ小包を送ってくださったのです。
しかも開けてみると、僕が長年欲しいと思っていたピクニックバスケットが入っているではありませんか。
中には達筆のメッセージと共に紅茶やショートブレッド、クッキーやシャンパントリュフが詰めてあって、その心遣いに本当に感動しました。
いつかイギリスで本場のアフターヌーンティーを体験するというのが僕の夢の一つでもあるので、もうこれ以上ない位の贈り物です。
家に遊びに来た友人に見せたところ盛り上がって、次の日にアフターヌーンティーをしようという事になりました。
しかし翌日、友人は用事で来られなくなり、妻と長男はピクニックに誘われて不在に。
少し拍子抜けした僕は、せめてこのバスケットを使って家でピクニック気分を味わうことにしました。
お菓子は何が良いだろうか?何か紅茶に合うような簡単なもの、、、、、そうだリンゴのズブリチョラータでも焼いてみよう。
そう決めると、早速スーパーへ買い物に行き準備を始めます。
少し面白い響きのズブリチョラータという名前は、粉々にする、ボロボロにするという意味の動詞ズブリチョラーレsbriciolareから来ていて、イギリスのクランブルに似たお菓子です。
中身はチョコレートクリームだったりジャムやリコッタチーズだったりと様々な種類がありますが、今回は僕が好きなリンゴにしました。
写真を撮っておけば後で記事にも使えるし、なんだなんだ悪くないじゃんと次第に気分もあがってきます。
生地を作ってリンゴをむいて、オーブンに入れて、部屋は香ばしい匂いに包まれます。
残った子供たちと軽いランチを済ませると、いよいよエアピクニックのテーブルセッティングにとりかかります。
ああでもないこうでもないと配置を変え、カメラを向けて試し撮りをし、フレームに収まるバスケットにうっとりしながら。
最後にほんのひとかけらの想像力を加えると、出来上がったテーブルの上にはそよ風が吹き抜け、気分はまだ見ぬロンドン郊外の野原です。
ズブリチョラータも美味しく焼き上がり、僕はこうして午後のひと時を楽しむことができました。
皆さんも今回ご紹介するズブリチョラータを作って、エアピクニックをしてみてはいかがでしょうか?
行先はイタリア、イギリス、フランス、それとも世界のどこか。
あ、もちろん本当のピクニックにもどうぞ!
~リンゴのズブリチョラータ~
材料(22㎝型)
生地
○小麦粉 300g
○グラニュー糖(又はきび砂糖など)140g
○無塩バター 110g(細かく切っておく。冷たいままでよいです)
○ベーキングパウダー 8g(無くても可)
○塩一つまみ ○レモンの皮をすりおろしたもの q.b.(適量)
○卵 1個
※砂糖を減らしたい方は30g程減らすこともできますが食感は若干変わります。
フィリング
○お好きなリンゴ3~4個(700g程)
○きび砂糖(またはお好きな砂糖)30g ○レモン汁少々
○干しブドウ(ぬるま湯に漬けておく) 20~30g(無くても可)
○松の実やクルミ、またはミックスナッツ 20~30g(無くても可)
○シナモン q,b, ○無塩バター 20g
作り方
生地
①小麦粉とベーキングパウダーをふるい、砂糖、塩、レモンの皮と混ぜます。
②バターを加え、指や手のひらで潰しながら素早く①とすり合わせます。
少しダマが残る位でよいです。
③卵を加え、こねずに軽く指でつまみながらすり合わせ、そぼろ状にします。
玉の大きさは均一でなくても構いません、全体がポロポロになればよいです。
冷蔵庫で30分ほど冷やします。
④リンゴの皮をむき、細かくカットしてボールに入れ、レモン汁少々とシナモン、砂糖を加えて混ぜます。
⑤フライパンにバターを入れて熱し、りんごを加えて中火で炒めます。
リンゴがしなっとしてきたら干しブドウを加え、やわらかくなって水気が無くなるまで炒めます。
リンゴの種類にもよりますが10~15分程です(もしも水分がなくなってもリンゴが固かったら水を少々加えて炒めてください)。
火を止めてナッツを加えて混ぜ、お皿に移して冷まします。
⑥冷蔵庫で冷やした生地を半分強程、型に敷き詰めます。
ギューッと押しすぎるとポロポロの食感が無くなるので軽く押す感じでやりましょう。
側面も1cmほどの高さまで壁を作ります。
(開閉式でない型や、くっつきやすい型の場合はオーブンシートを敷きます。後から取り出しやすくするため、型から少しはみ出すように敷きます)
⑦残りの生地をまんべんなくふりかけてリンゴのフィリングを覆い、手で軽くおさえて整えます。
⑧180度に予熱しておいたオーブンで約30分ほど、全体がきつね色になるまで焼いて出来上がりです。
1時間ほど置いて熱を冷ましてから食べましょう。
ポロポロ、カリカリとした食感が美味しい、素朴なお菓子です。
さて、こうして細かく書くと難しく見えますが、生地をこねる必要もなく大雑把に混ぜるだけなので、実際はとっても簡単なお菓子です。
もしかしたらその力の抜き加減が分からない、という方もいらっしゃるかも知れませんが、大体でよいのです。
適宜、適度に適当に。
毎日をうまく切り抜けるコツと似ている気もしますね。
疲れがたまっているなあと思ったら、このズブリチョラータを作って心の凝りもズブリチョラーレ(粉々にする)!
それではまた普段着の食卓でお会いしましょう。
※タイトルのq.b.とは適量を意味するイタリア語quanto basta(クワント バスタ)の略です。細かいことは気にせず臨機応変に、あなたなりのレシピに頂けたらという思いを込めて。
Posted by 八重樫 圭輔
八重樫 圭輔
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シェフ。函館市生まれ。大学在学中に料理人になることを決め、2000年に渡伊。現在は家族とともにイスキア島に在住。