JINSEI STORIES
滞仏日記「ぼくは湯舟の中で頭も身体も洗うフレンチ・スタイル派なのです」 Posted on 2022/05/05 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、4月29日、デザインストーリーズにポストされた「日本とこんなに違う、フランス人のお風呂の入り方」というルイヤール聖子さんの記事、多くの方に読まれて反響が大きかった。
フランス人と日本人の風呂の入り方の違いに着目した記事だったが、ぼくの周りの友人から「やだ~、辻さん、あれ本当ですか、信じられない」とメッセージを頂いた。
ルイヤールさんの記事では、一般のフランス人の風呂の入り方を詳細に記述しているのだが、およそ以下の3つにまとめられる。
1, そもそも、フランスの普通の家庭にはバスタブがない。シャワーだけで終わらせる人が多い。
2, バスタブがあっても洗い場はなく、フランス人はバスタブの中で身体を洗い、その洗った湯舟に浸かっている。
3, シャワーを使わないで髪の毛を洗う。頭をシャンプーで洗い、身体を反らせて後頭部を湯舟につけて洗う。(お湯を流しっぱなしにするのはエコじゃないから、という理由もあり)
※詳しくは、実際の記事を読んでもらいたいので、URLを張り付けておきます。
https://www.designstoriesinc.com/panorama/how-to-take-a-bath/
ところが、ぼくはこれを読んでもちっとも驚かなかったのだ。
我が家にはバスタブがあるが、ぼくもシャワーを使うことはほとんどない。
いつの頃からか、それはたぶん、渡仏してからであろうが、シャワーは使わず、上記、3のやり方をそのまま、ほぼ、毎日、実践している。
まさに父ちゃんの入り方と一緒なのである。
もう少し詳しく、父ちゃんのお風呂の入り方を解説しよう。
まず、フランスのお風呂は日本のお風呂のように「追い炊き機能」とかそういう便利なモノはついてない。
バスタブはバスタブでしかないので、温度を一定に保つとかありえない。
誰かが入った風呂に次の人が入るということもない。そもそも、食事も、とりわけスタイルが存在しない。自分の分は自分で食べる。人と分け合うことはないのだ。(最近は漫画の影響もあり、和食店などでは、やっている人もいるが、特に年配の人たちはやらない)
そもそも、日本のように湯に肩まで浸かって温まるという文化がない。
よくフランスの映画女優さんとかが、泡立つ風呂の中で足を延ばして優雅に浸かっている場面を見るけれど、庶民の生活の中では聞いたことがない。
シャワーで済ませる人がほとんどだと思う。冬に寒くて、身体を温めたいご老人とかなら、湯舟に入る人もいるだろうが、せいぜい、足湯的な浸かり方が多いのではないか。
で、ぼくはどうしているかというと、やはり、バスタブにお湯をたくさん張るのはもったい派なので、自分ひとりで使い切る分のお湯を張り、だいたい、半分弱くらいかな、まず、綺麗なお湯に浸かり、身体を温めることから始める。
もう出るかな、というところで身体を洗う。その後、ついでに頭も洗う。汚いと言われれば汚いのだけど、洗い場がないので、これはしょうがない。
で、身体をエビ反りにして後頭部の洗い流し難い場所を先に洗い、あとは風呂の蛇口、シャワーではなく、お湯と水が出る蛇口を適温にして、そこで頭を洗っている。
この時、お風呂の栓を開き、お湯を捨て始める。(だいたい、同時に)
だんだん、お湯が減っていく中で、頭がある程度、綺麗になったら、シャワーに切り替え仕上げに身体の石鹸を洗い流し、最後にそのまま湯舟を洗って、出るという寸法である。
「驚いた。辻さんのこと、軽蔑します」
いや、ここはフランスなので、みんながそうしているのである。
大金持ちは大きな風呂場を持っているけれど、でも、やはり、洗い場はないのである。なぜだろう?
ちなみに、うちは息子とぼくの風呂場は別々で、息子のとこにはシャワーしかない。
スイミングプールのシャワー室のようなものを彼は利用しているけれど、みんなそうなので、風呂に浸かりたいとか口にしたことがない。
なので、日本に戻ると、風呂に洗い場がついていて、あれには感動をする。(息子は逆に、パパ、ここの風呂変だよ、と訴える)
お風呂には追い炊き機能もあって、いやはや、至れり尽くせりではないか。
しかも、どこのトイレも、ウオシュレット機能がついていて、日本は文明国だ、と興奮をしている次第である。
思えば、自分もかつてはそういう生活をしていたのだ・・・。あはは。
郷に入っては郷に従え、すでに慣れてしまった。
夏に日本に帰ったら、絶対、温泉に行きたい。息子と一緒に九州の温泉でも巡ってみようじゃないか。
さてと、これからお風呂に入るかな、どっこいしょ。
つづく。
ということで、今日も、読んでくださり、ありがとうございます~。
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