某月某日、日本はゴールデンウイークらしいが、フランスも今はバカンス中、でも、パリに残っている人も今年はけっこう多いのかな。
息子は学校もないし、家でごろごろしている。
父ちゃんは、エッセイ集の校正などが大詰めで、机仕事に翻弄されている。肩こりが酷い・・・。
すると、そこに、最近、スマホを持つことが許された二コラ君から、
「ムッシュ、三四郎と散歩に出ないの？　ぼくも一緒に散歩したいんだよ」
とメッセージが飛び込んできた。お、気分転換にいいかも・・・。
「あ、今、ちょうど、出るところだったけど、待ち合わせるかい？」
「うん。いつもの将軍のところ？」
ということで、名前は知らないけど、偉人の銅像の下のベンチでぼくらは待ち合わせることになった。ぼくは子供が大好き。
やはり、一緒にいると癒される。三四郎とダブル効果だ。
二コラの家は、お父さんとお母さんが離婚をして、お父さんが右岸地区に、お母さんが元々の場所に残ったので、つまり、お父さんが出ていった形になるのかな。
すでに、お父さんの方には新しい家族がいて、あまり深くは聞けないのだけど、赤ちゃんもいる・・・。
二コラとお姉ちゃんのマノンは、しかし、ドライに割り切っている。その辺、フランスの子たちは、さすがであーる。
「それは、パパの人生だからね。ぼくには関係ない」と前に二コラが言ってた。
ともかく、ぼくらは将軍の銅像があるところで、待ち合わせた。
やっぱり子供は動物が好きだ。二コラがリードをひっぱり、
「サンシー、オーピエ（足元に）」
と偉そうにしているのを、ぼくは少し離れたベンチのところから眺めることに。
二コラが三四郎と芝生の上を全力疾走している。リードは５メートルも伸びるので、けっこう、走り回っている。（三四郎はリードを実は噛み切って、ぼくはそこを縫い合わせたのだった。まじ、なんでも破壊魔だ）
「ムッシュ、もうすぐお昼だね」
戻ってきた二コラがぼくの顔を覗きこむようにして言った。
あはは。
こういう時は、ご飯を食べたい、というメッセージである。もちろん！

息子と２人きりよりは３人の方が気が楽だし、楽しい。
二人分も三人分も変わらないので、父ちゃん的には問題ないのである。
「おいでよ」
「うん！」
あ、じゃあ、ついでに、カメラ回してもいいかな？　（出た！！！）
「いいよ。ぼく、また映画スターになれるの？」
一応、二コラのお父さんとお母さんの両方に出演依頼メッセージを送り、二人から、どうぞどうぞ、顔だけ出さないでくださればいくらでも、というお返事を頂いた。
フランスでは、未成年の子供の顔はサイトにアップ出来ない。
「心得ていますよ。前回と同じような感じで、手元だけ、さらっと」
ということで、ぼくが撮影と料理をしている間、二コラには三四郎の面倒をみてもらうことになった。それだけでもすっごく助かる。
甘えん坊の三四郎はちょっとぼくが離れると、「くううううん、くううん」と鼻をならして、大変なのである。
うちの十斗も二コラくらいの時があった。
今の二コラは、ちょうど、ぼくがシングルファザーになった時の息子くらいじゃないか、と思う。
息子は小太りだったけど、二コラは激やせ、背がひょろっとしてきた。この子は大きくなるね。
ところで、帰りにマーシャルの八百屋で、アイユ・ローズ（赤大蒜）と春キャベツを買った。今日は二コラのリクエストで「父ちゃんのペペロンチーノ」に・・・。

制作会社の義和ディレクターから「最低、もうワンシーンは辻さんが料理している顔を撮影してほしい」と言われている。（それは昨日書いた通りだ）
ぼくの顔なんか誰が見たいのか、と思うけど、仕方がない。あはは。
ちゃちゃちゃっと携帯とカメラをキッチンにセットして、料理とあいなった。（たまたま、今朝、髪の毛を洗ったばかり！いいね）
ぼくのペペロンチーノへの情熱はかなりしつこくて、ニンニクのみじん切りは最低で１０分もかかる。
みじん切りというよりも叩いて粉々に破壊し、チューブのにんにく並みのねばねばにする。
イタリアを旅行した時に現地シェフに教わった方法だけど、こうすると、オイルに移る香り感が半端ない。
時短でもいいけど、やっぱり、極めたければとことん時間をかけて料理をするべし。
ぼくは食道楽だから、そこのところはこだわりたい。
アイユ・ローズは普通のニンニクの三倍くらいの大きさがあり、表皮が赤い。
中は生々しくて、柔らかい。ぷにょぷにょしている。
これがオイル揚げにするとやばいのだ。なので、半分をみじん切りにし、半分をそのままぶち込んでオイル揚げにした。
春キャベツは甘く、生唐辛子は超辛い。大事なのは、アンチョビである。
今日は多めに。アンチョビがニンニクオイルの中で溶けて混ざる。
そこでキャベツを炒め、茹で上がったスパゲットーニを絡めて、ワインとゆで汁で乳化させて、はーい、出来上がり！
「二コラ、ボナペティ」
ペペロンチーノは完成したのだけど、息子はどうやらまだ寝ているようだ。笑。
「どう？」

「うん、めっちゃ美味しい！」
二コラの笑顔をカメラにおさめられないのは残念だけれど、そこは想像して頂きたい。
「あのね、ムッシュのパスタは本当に本当に美味しいよ。また、食べに来てもいい？」
おいおい、カメラが回ってる時に言ってくれよ。笑。
ということで、二コラ君とは新作の「ボンジュール、春ごはん」で、みなさん、また、会えますからね、乞うご期待！！！　
和義、よかったね。

つづく。

今日も、読んでくださり、ありがとう。

大和書房刊「父ちゃんの料理教室」は６刷が決定、今、帯を新しくしています。笑。
マガジンハウス刊、「パリ、息子とぼくの3000日」は6月30日に満を持して発売予定です。

「ボンジュール！辻仁成の春のパリごはん」 が再放送！！！
＜BSプレミアムのみ＞2022/5/3 (火・祝) 10:30～11:29
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辻󠄀仁成 アコースティック セレナーデ フロム パリ
Jinsei Tsuji Acoustic Serenade From Paris
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