欧州最新情報
パリ最新情報「高まる豆乳人気。パリで広がるプラントベースの飲み物」 Posted on 2022/04/28 Design Stories
近年のパリでは、植物性ミルク、とりわけ豆乳の需要が高まっている。
理由はさまざまだが、一番は酪農や畜産業がもたらす環境負荷や、アニマルウェルフェア(動物福祉)への関心が急速に広まっていることだろう。
加えてヴィーガン人口の増加、フランスでも多いとされる乳糖不耐症(約500万人もいる)からのニーズにより、プラントベースの飲み物にスポットライトが当たっているのだ。
それだけではない。
終わりを見せないウクライナ問題が、フランスの牛乳生産に打撃を与えている。
これは乳牛の個体数に問題があるというわけではなく、エサとなる飼料が不足していることに起因する。
さらには牛乳瓶、牛乳ボトルに使う資源の価格高騰もあり、フランスの酪農家はかつてないほど苦境に立たされているという。
今のところストックは十分にあるとのことだが、今後数か月で牛乳・乳製品の値上がりもしくは品薄が予想されている。
といった複合的な要因から、植物性ミルクに大きな注目が集まっている。
フランスで牛乳に代わる飲み物として販売されているのは、豆乳、アーモンドミルク、ココナッツミルク、ライスミルク、オーツミルクである。
陳列スペースは年々大きくなり、大手スーパーマーケットのカルフールやモノプリなどはそれぞれプライベートブランドを用意しているほどだ。
なかでも豆乳は成分無調整、カルシウム入り、バニラ風味と種類が一番豊富である。
ただ調整豆乳のカロリーは牛乳よりも高く糖質や脂質が多いことから、健康志向の高いパリジェンヌは無調整豆乳を選ぶ人が多い。
タンパク質、イソフラボンなど、大豆に含まれる栄養価が高いことも人気の理由である。
植物性ミルクはつい数年前まではニッチマーケットだったものの、ここにきてとうとうマスマーケットになった。
フランスのいくつかの企業もこの波に乗り出している。
仏食品メーカーのダノンは、2021年11月に国内にある二つの大型工場のうち一つを、完全にプラントベースの工場とさせた。
ダノンは、2024年までにフランス国内で植物性由来の食品が50%成長すると予測している。
またスターバックス・フランスでは、3月末より植物性ミルクの「カスタムメイド」を無料でオーダーできるようになった。
今までは+50サンチーム(+約65円)でカスタムできたものを、すべての種類が無料で植物性ミルクに変更できる。
スターバックス・フランスのSNSには多くのコメントが寄せられており、フランスのスタバ愛用者も大喜びのようだ。
ラデュレやピエールエルメでは、既存の商品に加えて新たに動物由来の材料を使用しないマカロン作りに挑戦している。
どちらもコロナ禍の2020年から始めており、乳製品に代わって豆乳やココナッツオイル、ひよこ豆などに代替したプラントベースのマカロンを開発・販売している。
出典:Starbucks France公式インスタグラムより
こうした植物性飲料に対する企業の取り組みは、厳格なヴィーガンに対応したものというより、どちらかというと「地球の資源を保護するため」との意味合いが深い。
牛乳・乳製品の過剰消費による環境負荷を減らすための企業努力の一環だ。
というのも、70年代以降の急速な酪農・畜産業の拡大により、牛から排出されるメタンガスなどが地球温暖化に拍車をかけている。
世界の人口爆発も問題であり、国連によると全ての人類が仮にアメリカ人並みの生活水準をキープするならば、2055年には地球5個分の資源が必要となるそうだ。
現在、フランスが消費する牛乳・乳製品の消費量は日本の3倍以上である。
酪農大国のフランスは、今後イニシアチブをとってこうしたプラントベースの飲料に力を入れていくのであろう。(セ)