欧州最新情報

パリ最新情報「再選を果たしたマクロン大統領、次の5年で計画する大型プロジェクト」 Posted on 2022/04/27   

 
4月24日、マクロン大統領の再選が決まった。
ウクライナ侵攻の渦中に行われた今回の大統領選は、フランス国内のみならずヨーロッパ各国でも大きな注目を集めた。
しかし仏国民の懸念は、物価や所得環境などの暮らし向きを表す「購買力」であることに変わりはない。
物価上昇が止まらず日常生活が脅かされるなか、フランスはロシア制裁による「返り血」をどう拭おうとしているのか。
英国不在、ドイツのメルケル氏不在のEUにおいて、フランスは今後どう舵をとっていくのか。
マクロン大統領が打ち出す、次の5年間の大型プロジェクトをまとめた。
 

パリ最新情報「再選を果たしたマクロン大統領、次の5年で計画する大型プロジェクト」



 
・インフレと購買力

インフレによる国民の購買力の低下は、すぐに取り組むべき緊急の課題である。
マクロン氏が強調するのは、「購買力を高める最善の方法は失業対策である」こと。
フランスは長らく経済低迷と競争力低下に見舞われてきたが、マクロン政権の失業率対策は決して悪くない。
就任当初の失業率が9%強であったところを、2022年2月には7.4%まで低下させた。
マクロン氏はこれを次の任期中にさらに5.5%に下げることを目標としている。
また、企業減税、公務員の給与の引き上げ、最低年金額を1100ユーロに引き上げること、最大6000ユーロの非課税ボーナスの新設などを提案している。

・定年を65歳に

2031年までに定年退職年齢を62歳から65歳に引き上げることを目的とした年金改革は、マクロン氏の主要政策の一つである。
フランスの出生率は比較的高いが、人口の高齢化で年金を含む社会保障支出の拡大が続く見通しだ。
しかし2019年末の大規模なストがあったように、国民の7割がこの政策に断固として反対している。
給与を除き、社会保障にからむ雇用面での企業負担はフランスがEU加盟国のなかで最も高い。
そのため改革を強行したい仏政府と、反発する国民の溝が深まることが懸念される。
 

地球カレッジ



 
・環境問題

マクロン氏が大きく掲げる課題に環境問題がある。
フランスは、2030年までに1990年比で40%のCO2削減という目標を持っている。
大きくは電気自動車の普及、鉄鋼業とセメント工場の脱炭素化、水素燃料の技術開発だ。
教育部門では幼稚園から高校までのサステイナブルに関する教育を充実させ、高校においては環境教育と食育を導入する。
また、2030年までに1億4千万本の木を植える(フランス人1人当たり2本)こと、エコロジー移行に関する専門職40万人を育成することも目標としている。
さらに仏国内のリサイクル産業を大きく発展させ、古い埋立地を一掃し海外への廃棄物輸出を大量に削減することを目指す。

・エネルギー

マクロン氏は脱炭素の目標を実現するため、新たに原子力発電所6基を造り、さらに8基の建設を検討する考えを表明している。
発電時にCO2を排出しない原発をエネルギー政策の中心に据えるためだ。
東京電力福島第1原発事故以来、フランスは「縮原発」の方針を維持してきたが、ここにきて方向転換が確実なものとなった。
ヨーロッパ大陸では国境を越えて互いに電気を融通し合っており、原発促進による安定的なエネルギー供給は欧州の安全を守るといった意味合いもある。
環境対策の他にも、欧州で深刻な問題となっているエネルギー価格の急騰が再来することを防ぐのが狙いである。
さらに2050年までに洋上風力発電所を50基建設すること、太陽光発電を10倍に増やすことも公言している。
 

パリ最新情報「再選を果たしたマクロン大統領、次の5年で計画する大型プロジェクト」



 
24日の大統領選では、史上最高の棄権率、過去最多の極右派投票率を記録した。
今回の選挙を通じて明らかになった国民の声に対し、マクロン大統領は「怒りや意見の相違に対し、答えを見つけていく」ことを約束している。
しかし、コロナ後の経済回復、ウクライナ問題と問題は山積みだ。
国民がマクロン氏の言う「強いフランス」を感じる日は果たしていつになるのか。(オ)
 

自分流×帝京大学