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第六感日記「三四郎の部屋に、真夜中、飛び交う無数のオーブ出現」 Posted on 2022/04/24 辻 仁成 作家 パリ

某日某日、ぼくは毎晩、三四郎を22時半に寝かせ付け、三四郎の部屋の灯りを消して、寝室のドアを閉めて、寝る。
たまに、三四郎がぐずって、呼び出されることもあるが、生後七か月を超えて彼も安心をしたのであろう、最近は大人しく寝てくれる。
ぼくは三四郎を寝かしつけてから、ちょっとだけメールの返信などをして、その後にベッドに入る。今日は23時過ぎだ。
そして、必ず赤外線監視カメラで、三四郎の寝ている状況を確認するのだが、昨日、怪奇現象が起きた。
三四郎は肘掛け椅子とぼくの寝室のドアの間にマットを持ってきて(自分で)そこで寝るのが習慣なのである。
時々、肘掛け椅子の上や暑い日は床でゴロンと寝ている時もあるが、今日は見当たらないので、いつも通り、肘掛け椅子の向こう側で寝ているのだろう。
安心したので、スマホを消そうとしたその次の瞬間、肘掛け椅子の方から、白いふわふわしたものが、すうっと飛んできて、画面中央で明滅して消えた。
「え?」

第六感日記「三四郎の部屋に、真夜中、飛び交う無数のオーブ出現」



ぼくは目の錯覚だろうと思って、目を凝らしてみたら、その直後、別の場所から、ゆらゆらと飛んでくる白く丸い物体が見えた。
あ、オーブだ、と思った。
ぼくが北海道にいた頃、小中学生の頃は頻繁に見ていたし、たまに、今も、現れる。
玉ゆら現象とも言われているもので、一般に、水蒸気や埃に光が反射したものだとの説が有力である。もちろん、霊現象と呼んでいる研究家も多い。よくわかっていない。
これの特徴はカメラに映りこむことで発覚するので、肉眼では普通見えないのである。
しかし、問題は、三四郎の部屋には、窓がない。
つまり、光源がないのである。
唯一あるとすると、この監視カメラの赤外線ライトだけど、まぶしいといけないと思って赤いライトの上にぼくは紙テープを貼っている。
それでも、監視カメラはきちんと作動するので、分かればいいからそのままにしてきた。
もう一つ、息子の部屋の前にWi-Fiボックスがあり、そこの機械の中が少し明るいけど、どちらも、光源というほどのものではない。
真っ暗なのである。
トイレに立つ時は、仕事部屋を迂回しないと、三四郎の部屋は暗すぎて、彼のポッポ(うんち)を踏んづける可能性もあるので、そこは通らないように心がけている。
ということは、埃や水蒸気であるならば、光源が必要なのじゃないか、と思った。
じっと監視カメラを見ていると、次の瞬間、数十のオーブがどこからともなく現れて消えた。まるで幽霊の集団じゃないか、ぎゃあ、これはさすがに、ちょっと、怖い!
慌てて、スマホをスクショするのだけど、早いので間に合わないのだ。でも、いくつかを撮影することには成功した。
もっと圧倒的に数が多いのだけど、撮ろうとすると消えるので、苦心をした。とりあえず、おさえられたものを、御覧頂きたい。

第六感日記「三四郎の部屋に、真夜中、飛び交う無数のオーブ出現」

第六感日記「三四郎の部屋に、真夜中、飛び交う無数のオーブ出現」

※ 写真だと止まっているように見えるだろうか、これが、遠くから出現し、カメラ手前でふっと消える。消えると別のところから出現し、またどこかに消える。数匹一緒の時もある。匹? 数個体一緒の場合もある。うじゃうじゃと現れ、パッと同時に消えた時は驚いた。

第六感日記「三四郎の部屋に、真夜中、飛び交う無数のオーブ出現」

第六感日記「三四郎の部屋に、真夜中、飛び交う無数のオーブ出現」



前にも、うちの暖炉の上の巨大な鏡に大きな男の手形が付いていたことはここで書いたことがあるけれど、築120年の元お屋敷なので、過去に情念が残るような悲しい出来事があって、成仏できない魂がいても不思議ではないな、とは思っている。(普通に言うか!?)
ぼくは皆さんご存じのように幽霊が嫌いじゃなので、そこまでビビらったりはしないけれど、このオーブはちょっと特殊だな、と思った。
というのは、監視カメラをここに設置してから、毎晩、この数か月、チェックしてきたのだ。なのに、なぜ、今日、だけこんなに出現するのか、ということである。
30分くらい観察していたが、壁から出て着たり、椅子から出たり、消えたり、とにかく、漫画の幽霊のように神出鬼没で、玉ゆらな動きをするのだ。不気味だァ。
UFOがじぐざぐに移動し、消えるようなあの感じなのである。
それで、ぼくは確かめたいので、三四郎の部屋に行ってみることにした。
三四郎は爆睡していたので、起きなかった。
ぼくは監視カメラの前に立ち、目を凝らした。
「オーブ、出ておいで」
しかし、肉眼では見えなかった。
確かに、何かいる、霊的気配はあるのだけど・・・。よくわからなかった。
人間の五感ではとらえることの出来ないものがその日、三四郎の周囲に結集しているのに違いない。(笑)しかし、三四郎はよく寝ているので、問題はなかった。
「じゃあ、ぼくは寝ますよ。みなさん、お楽しみください」
そう言い残して、ぼくは寝室に入り、眠ることにした。爆睡であった。
明日、もう一度監視してみたい。続報が入り次第、お伝えしたいと思います。

つづく。



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