JINSEI STORIES

退屈日記「超げんきんな三四郎、どう思います?」 Posted on 2022/04/14 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、「三四郎、おやつ、食べる?」
とぼくが言うと、ぼくの足元で寝ていた三四郎がガバっと起き上がり、こういう顔をするので、笑った。

退屈日記「超げんきんな三四郎、どう思います?」

しかしである。何もしないでおやつをあげるわけにはいかないので、
「お手」
というと、はいはいはい、という顔をして、右手をぼくの手の中に置く。
しかし、この時、三四郎の頭の中には、おやつ、が膨大に膨れ上がっているのが分かる。心ここにあらず、という顔のお手なのである。
そうやすやすとおやつを与えられないので、そこでぼくは「反対」と告げる。
すると三四郎は反対の手でお手をするのだけど、このなんとも、無関心なお手に、お手あげな父ちゃんなのであった。

退屈日記「超げんきんな三四郎、どう思います?」

退屈日記「超げんきんな三四郎、どう思います?」



思えば三四郎にとって、大切なことは、寝ること、食べること、遊ぶこと、何かを齧ること、に尽きる。
彼は寝ているか、遊んでいるか(齧っているか)、食べているかなので、うらやましい。
寝て起きたら、背伸びをして、ぼくに「遊ぼう」と要求してくる。
ぼくが仕事をしていると、柵の向こう側で、くーん、くーん、と鼻を鳴らして寂しがっている。
しゃーないな、と思って、遊びに行くと、すごく喜んでくれる。嬉しすぎて、嬉しょんを漏らすこともある。
尻尾の振れ具合で、彼の楽しい度が分かるのは飼い主にとっての至福だ。
で、遊び疲れるとぼくの膝の上でごろんと寝てしまう。
「三四郎、おやつ食べる?」
ぼくがこういうと、ガバっと起き上がって、当たり前じゃん、という顔をするのだ。
「なんで? その愚問。そりゃあ、食べるに決まってるでしょ、パパしゃん」
と首を傾げたりもするのである。

退屈日記「超げんきんな三四郎、どう思います?」



仕方ないので、最近、彼が一番好きな子羊のおやつを与える。
おやつを食べている時の三四郎は無心になっている。
食べ終わると、肘掛け椅子から飛び降り、ボールをくわえて戻って来る。
「遊ぼうよ」
ということで、こういう日常がループしている父ちゃんの一日なのであった。
いつ、働いているのか? えへへ・・・。
これからお仕事します。

つづく。

退屈日記「超げんきんな三四郎、どう思います?」



ということで、今日も日記を読んでくださって、ありがとう。


父ちゃんのライブ日程ですが、
8月8日がどうやら、関西のどこか、
8月12日が関東のどこか・・・。
決まり次第、ご報告します。
さらに、NHK「冬ごはん」の再放送が決まりました。
NHKBSプレミアム 「ボンジュール!辻仁成の冬のパリごはん」
【再放送日時】 2022/4/19 (火) 14:44~15:43

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