JINSEI STORIES
退屈日記「ママ友とは何か? パリジェンヌとの付き合い方」 Posted on 2022/04/02 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、「ひとなり、あなたは息子に甘いし、育て方が日本的過ぎる。ここはフランスよ。そんなスクエアな教科書通りの育て方じゃ、彼が混乱するわよ」
こういうママ友の意見はこの十年間、いやというほど浴びせられてきた。
かっちー----ん、の連続であった。
しまいには、
「彼の気持ちを分かってない」
とか、
「もっと尻叩いてやらせないと、あの子の将来がダメになる。私たちは目を光らせていますよ」
などと、フランス人にしては珍しくうるさい。
それはひとえに、我が息子、十斗がマダムたちに愛されている証拠である。なぜか、お母さん受けが凄くいいのだ。優しいし、アジア系の男子は人気があるねー、笑。
息子が通っている私立の学校は幼稚園から高校まで一貫教育を実践する学園で、有名校ではないけれど、外国人も多い、こじんまりとしたお坊ちゃんお嬢さん学校である。
私立といっても、日本の私立とは異なり、そこまで高くない。もっとも公立だと学費は無料なので、それに比べると、高い。年間で10万円くらいかなぁ。
カトリック教会が支援する学校だけれど、イスラム教徒など宗教に関係なくさまざまな学生が通っている。
息子は、実は、ここが経営する保育園から通っているので、最古参である。
とくに小学校時代の友だちとはいまだに仲が良く、ウイリアム、トマ、アレックスは彼の親友であろう。「スタンドバイミーオタクグループ」とぼくは呼んでいる。
中学に入って彼はバスケットボール部のキャプテンになり友達関係に幅が出た。
離婚後からビートボックスやヒップホップに傾倒しはじめ、高校に入るとコンスタンタンとかフェリックスなどの音楽系の仲間が増えた。
なぜか、女子学生の友人は少なく、仲良しの女子学生はみんな他校の可愛い子ばかり。同じ学校の子を紹介されたことはない。
もっとも高校時代から彼はセミプロの音楽グループに参加しているので、大人たちとの付き合いも増え、たまに変な大人もやってくる。
様々な友人の変遷はあるものの、大学受験が本格化する中、小学校の4人組、スタンドバイミーグループへここ最近は回帰しつつある。
ということで、これらを網羅する形で、長い年月を得て、ママ友会が結成され、この学校の親御さんらとぼくはネットで繋がってきた。
ぼくのママ友も、いろいろと変遷がある。
息子が小学校の時、親しかったロマン君(今は話に出てこないので疎遠なのであろう)のお母さんのオディールは日本好きで何度か二人でランチもしたことがあり、前はよくぼくのライブにも来てくれていた。
2020年3月のライブで顔を見たのが最後で、その後、コロナ禍もあり、音信不通になっている。心配はしているけど、聞きにくい。
おなじみのソフィやレテシアは中学時代の友達のお母さんで、高校になると親同士のつながりが減ったので、むしろ、会ったことのないネット上のママ友が増えた。
ぼくを大批判したママ友の名前はここには記さないが、その人も、ぼくら家族への思いがあっての批判なので、根本のところで悪くは思ってない。
フランス人のママ友は他人の人生に干渉しないのが普通だけど、言いたいことはずけずけと言ってくる人もいる。フランス人といっても、オリジンは様々なので、意見の言い方も出身国によって微妙に異なる。
そこがちょっと厄介ではあるし、有難くもある。
ただ、パリジェンヌのママ友は揉めると本当に面倒くさいので、最近は距離を置いている、ということは日記にも書いた通り・・・。
パパ友も、高校三年生になると交換する情報もなくなるし、自然消滅かな。子供を介しての友人の限界はある。最近は、三四郎関係のパパ友が増えた、あはは。
すでにお父さんたちは子供たちの大学生活へと意識を移行させているので、今の高校は重要ではない。なので、自然と付き合いも減衰中。
あくまでも子供を介しての付き合いなので、当然である。
ぼくの中で残っているパパ友はアレックスのお父さんのロベルトくらいになった。イタリア人だけれど・・・。笑。
日本のママ友グループにも幾つか参加している。
中村江里子さんのグループはたいへん知的なマダムたちの集まりで、その中心的存在の江里子さんは本当に尊敬に値する人物だけど、あまりグループ活動べったりはない。笑。
もう一つ、デザインストーリーズのママ友グループがあり、面白いことに、セギュールさん、モーリヤックさん、マイヤールさん、など苗字がフランス名の方ばかり。つまりご主人(元ご主人も含め)みなさん、仏人なのである。江里子さんグループもほぼほぼそうかな・・・。
日本人マダムの会とは、ラインでやりとりをしていて、半分ほどのマダムが、夫への不満をよく口にされてる。とはいっても、聞いていて恥ずかしくなる愛すべき不満ね、はいはいはい・・・。
正直、日本人ママ友の方が疲れない。情報も得られる。でも、本気で喧嘩が出来る仏人ママ友はぼくがフランスで生きていく上で一番の刺激であったことは間違いないし、文化を知る上で重要な窓口だった。息子が大学生になってから、ママ友たちとの付き合いがどうなるのか、分からないけれど、まぁ、同窓会みたいな感じになるのだろうか。
いい意味でもそうじゃない意味でも、ママ友たちはぼくがフランスで生きていく上でのいい反面教師となった。
つづく。
ということで、今日も読んでくれてありがとうございます。