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滞仏日記「霊的エネルギーに襲われ高熱が出た翌朝、三四郎に救われる」 Posted on 2022/03/14 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、実は、2日前から頭痛が始まり、いきなり高熱が出た。
今日が、地球カレッジだったので、昨夜は、やばいなァ、初の中止かなァ、と思っていた。
ぼくの平熱は35度と低く、滅多に37度を超えることがない。
それが38度に迫る感じだったので、すわ、これはコロナかな、と疑い、PCR検査を受けたけど陰性。
頭痛が腹痛にかわり、それが腰に移動しはじめて、何かが身体の中で暴れている感じとなった。節々が痛くなって、朦朧としてきた。
この症状は「あれだ」と思いついた。
またまた、読者の皆さんに疑われることを覚悟で白状するが、ぼくは時々、霊的な力におさえこまれることがある。(あ、皆さん、今、笑ったでしょ? 別にいいもーん)
土曜日、何かが上からふっと覆いかぶさって来たな、と思った瞬間があって、払おうとしたのだけど、バタバタしていたからほったらかしていたら、その夜、高熱が出た。(本当だもん)
特に対処法はないのだけど、何かのメッセージが届く時に起こることが多いので、注意深く意識を澄ませていたら、浮かんできたのが「神棚」であった。
(だから、・・・)



その「神棚」は、ぼくがかつて所有していた八ヶ岳の麓の家のちょっとわかりにくい場所に設置されている。
天井が5メートルくらいある吹き抜けの大きな家で、その天井部近くの高い場所に、人目につかない感じで取り付けられてある。
具体的に説明すると、高いクローゼットの内部、しかも天井部にあるので、見ようと思わなければ見ることが出来ない。
しかし、そこは、八ヶ岳の力を受けることが出来る、いわゆる最高のパワー・ポジションなのである。(本当なんだもん)
ちなみに、その家には、棟のような二階建ての家が付帯しており、二階のかつて仕事場だったところから階段を上ると三階の踊り場に出る・・・。
そこから真正面に八ヶ岳を拝むことが出来るのだ。
夏の朝など、山が朝陽を受けてピンク色になる瞬間もあり、それはそれは心が洗われる別世界なのであった。

滞仏日記「霊的エネルギーに襲われ高熱が出た翌朝、三四郎に救われる」



その家は、谷風が抜ける素晴らしいロケーションにあり、神聖な雰囲気を持っているのだけど、それもこれも、家の角地に祀られた神棚のおかげなのであった。
日本で暮らすのであれば手放したくなかったが、もう、しばらく、日本に戻ることが出来そうにない。
ところが、自分が取り付けた「神棚」のことをその社長さんに言い忘れていたことを高熱の最中、思い出してしまった。
というのか、熱にうなされている時に、その神棚のイメージが脳裏に浮かんだのである。

社長さんに「神棚のことを言い忘れてましたが、お酒をかえてください、手を合わせてあげてください」とメールを書いたからか、その後、平熱に戻り、嘘のように身体が楽になったのである。
(あはは、絶対、嘘だと思ってるでしょ? )
でも、こういうことがよくあるのだ。
ともかく、わずか一日で高熱や節々の痛みが引いたのだから、神棚様が、わしを忘れるな、とメッセージをくださったのだな、と感じた次第であーる。

滞仏日記「霊的エネルギーに襲われ高熱が出た翌朝、三四郎に救われる」



そういえば、ぼくが高熱に襲われた時、三四郎にもちょっと異変が起きた。
あれほど悪戯好きなかまってちゃんが、何処に消えたか、と思うほど静かになり、自分のマットから出ず、ずっと寝ていたのである。
ぼくが高熱でうなされている間、息子は適当に食べてもらったが、子犬はそうはいかない。なのに、吠えることもなく、要求することもなく、じっと動かず、待っている。
丸くなったまま死んでるように寝ていた。
餌を与えた時だけは、起き上がって食べていたけど、あとは本当に動かないので、これ幸いとほったらかしていたら、朝までうんともすんとも言わなかった・・・。
地球カレッジの回線チェックが11時からだったので、ぼくは8時半くらいに起きて、寝室のドアを開けると、なんと、三四郎が椅子の上に座って、ぼくが出てくるのをじっと待っているではないか・・・。
ドアを開けた瞬間、目が合った。

滞仏日記「霊的エネルギーに襲われ高熱が出た翌朝、三四郎に救われる」

いつからそこにいたの?
いつもなら、お腹すいた、遊ぼう、と吠えたり、壁を叩いたりするのだけど、ただじっと忠犬ハチ公のように長椅子の上にちょこんと座ってぼくが出てくるのを心配そうに待っていたのだから、うううむ・・・。
その三四郎の姿を見た次の瞬間、何かがぼくから抜け出して遠ざかっていった。
「パパが具合悪かったの、分かったのかい?」
「・・・・」
「もう大丈夫だよ。ほら、たぶん、もう大丈夫」
「(尻尾をふりだした)」

ぼくは三四郎にごはんを与え、自分はシャワーを浴び、それから着物に着替えて、回線チェックに挑んだのだけど、その時には、すでに熱は下がり、節々の痛みも消えていた。
もちろん、始まった時はまだ本調子ではなかったし、途中、額や胸元に冷や汗が出ていたけれど、それでも頑張って講義に集中しているうちに、気が付くといつもよりエネルギッシュな授業が出来ていたのである。
あの高熱、なんだったの?
文章教室の最後に、三四郎が登壇をして、いきなり、胸元を舐められて、大変だったが、あれは実は、全快してよかったね、という三四郎なりの気持ちの炸裂だったのである。
本当に、無事に、終わることが出来てよかった。
地球カレッジのスタッフさんらには始まる直前に一応「体調が悪い。何かある時はよろしくお願いします」と伝えておいた。
「お大事になさってください」という一万キロの距離を感じるお返事を頂き、思わず苦笑してしまった父ちゃんなのであった。

つづく。

お知らせ。
次回の地球カレッジ、文章教室は、4月24日に開催されます。

地球カレッジ



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