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パリ最新情報「農業大国フランスが誇る一大イベント、サロン・ド・アグリカルチャー開幕!」 Posted on 2022/02/27 Design Stories
※農作物でできたエッフェル塔
「アルザス行く? コルシカ島にする?」という会話が聞こえてくるのは、フランス各地の物産ブースや模擬店が並ぶ展示場。
農業大国フランスの一大イベント「農業見本市(Salon de Agriculture, #SIA2022)」が2月26日(土)に開幕し、3月6日までの9日間行われる。
例年であれば、大統領もオープニングに駆けつける、国をあげての催し物だ。
今回は、ウクライナ危機もあり、カステック首相がマクロン大統領の代わりを務めた。
パリ15区のポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場という、7つの巨大ホールを抱えた大型展示施設での開催だ。
ゆっくり見ていたら、一日では回りきれないほどの規模。
※会場は7つのホール全てを使って行われる
さて、パリにいながらにして旅行気分で、フランス各地のグルメを堪能できるのは、ホール3。
ブルターニュ地方の塩バターキャラメルの甘い香り、サヴォア地方のラクレットチーズが焦げる香ばしい匂いなど、食欲を誘う。
各地方毎に大きく区画分けされているので、歩いているだけで地域の特産品や郷土料理が何か、感覚的にわかってくる。
※ブルターニュ地方のクレープとシードル
※音楽隊が祭の雰囲気を盛り上げる
音楽隊の生演奏が巨大ホールに鳴り響き、お祭り騒ぎだ。
出店している人たちは、笑顔いっぱい、誇らしげに自分たちの生産物を説明してくれる。
昨年は、新型コロナで開催中止になった分、より勢いを増しているように感じた。
フランスといえば、ファッションのパリを思い浮かべがちだが、素敵なレストランの一皿を支えているのは、地方で美味しい食材を生産している人たちだと気付かされる。
※ピンクの可愛らしいキノコ
一番の目玉は、国際農産物品評会(Concours Général Agricole, #CGA)に出品される動物たちだ。
フランスでは農作物だけでなく、酪農や畜産も重要な分野だ。
在仏者であれば、この金、銀、銅のメダルマークを見かけたことがあるだろう。
チーズやハムなどの食材に貼られたものが馴染み深いが、牛、馬、ロバ、山羊、羊などの動物も、このメダル受賞を目指して、フランス全土から一堂に集められる。
※CGA:Concours Général Agricoleのマーク
そして、メイン会場のホール1では、数え切れないほどの牛が地域別、品種別に並び、牧草の香りが漂う空間は、ここがパリということを忘れてしまうほど。
コンクールへの出場準備のコーナーでは、飼育員たちがバリカンで毛の長さを切り揃え、ドライヤーで毛並みを整える。
さながら美容サロンのようだった。
※身繕いをする様子は、美容院さながら
たくさんの牛たちの中でも、「ネージュ(Neige=雪)」と名付けられた今年のスター牛は一際輝いていた。
毎年、一頭、見本市を象徴する牛が選ばれ、ポスターのモデルになる。
ネージュは、スイスの国境近くにある、オートサボア県のル・グラン=ボルナンから来た、アボンダンス種(Abondance)の4歳の乳牛だ。
※今年のミューズ牛「ネージュ」
選考理由は、「赤毛のコートをまとい、雪が舞い降りたような真っ白な腹部、そして、太陽から目を守るサングラスのような黒縁のまぶたを持つ、アボンダンス種を代表する美しさ」だったそう。
もちろん、乳量もたっぷりで健康的だ。
見本市の主催者がテレビ局france3に語ったところによると、例年7割の来場者はこの「ミューズ牛」の写真を取るそうだ。
そのくらい、この見本市では注目度の高い存在だ。
※輝く「赤毛のコート」をまとったネージュ
この見本市は教育的にも大変支持されており、多くの家族連れが来場していた。
大きな牛をみて驚き、羊の柔らかさに触れ、馬のいななく声に怖がる子どもたち。
干し草の香りを嗅ぎ、食を通じて命を頂くことも学ぶ。
たくさんの子どもたちが目を輝かせ、五感を刺激する見本市を楽しんでいた。
このような原体験が、農業大国の明るい未来を創っていくのだろう。(ウ)