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退屈日記「この世界が苛酷になりつつあるけれど、今日も息子にお弁当を作った」 Posted on 2022/02/23 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今朝もまた息子のお弁当作りから始まった。
おにぎり弁当が続いたので、今日はサンドイッチ弁当にした。
卵を潰してマヨネーズで和えた卵サンドとアボカドとサーモンのサラダサンドの二種類、それにおかずは、カレー風味の肉団子と野菜のタブレ(中東風サラダ)という、それなりに手の込んだものになった。笑。
文章で書くとなんとなくシャレオツなBENTOボックスになったのであーる。
めでたい。これで、思い切って受験勉強に向かえることであろう。
今、フランス時間の7時半に息子は登校したので、ぼくは三四郎にもご飯を食べさせ、この朝の日記を書いている。
三四郎は今、「満腹じゃあ」とぼくの股の間でグースカ・・・zzz

退屈日記「この世界が苛酷になりつつあるけれど、今日も息子にお弁当を作った」



退屈日記「この世界が苛酷になりつつあるけれど、今日も息子にお弁当を作った」

さて、今日、日本は休日だということだけど、21時51分からNHKのBSでいよいよ「ボンジュール、辻仁成のパリの冬ごはん」が放送される。
最初の春ごはんの制作を依頼され、不意に撮影が始まったのがちょうど1年前のことで、3回目のロックダウンにぶつかった。
息子を育てながら外国で暮らす父ちゃんの生活を自撮り撮影という荒業でお伝えしたのだけど、まさか1年も番組が続くとは思わなかった。笑。
春ごはんの時は、コロナ禍真っ最中における子育て奮闘記みたいな感じだったのかな・・・。
田舎への移住も決断した時期で・・・、その中で、夢を捨てない、苦しい日々を打破するためにセーヌ川でライブもやり、でも、自撮り撮影ということである意味自分を鼓舞出来たのも事実であった。
あの番組は20年後、自分に何を与えるだろう。(生きていたらね・・・笑)

そして、今回の「冬ごはん」21年から22年へと移行する激動の中、相変わらず前向きに頑張る父ちゃん、息子は成人を迎え、大学受験へ向かう中、辻家にはミニチュアダックスフンドの三四郎がやってくる、という流れ・・・。
いやはや、人生とは、筋書き通りにいかない痛快な日々である。笑。
自撮りすることなどない、と思いながら撮影がスタートしたのだけど、今回が一番内容濃厚な季節になってしまった。
息子ともめたり、大事な人が亡くなったり、料理もたくさん作ったし、観光大使に就任したのでニースやドルドーニュにも旅をしたし、・・・それでも、日々は続いていて、「人生ってやつは、死ぬまで終わらないねぇ」・・・。名言。



一方で、ウクライナの状況が心配だけど、いったい、世界はどこへ行こうとしているのだろう。
コロナ禍でこんなに大変な状況なのに、ここで戦争になれば、コロナで弱った世界の経済は相当失速し、日本にも影響が押し寄せる。
ウクライナ問題は決して遠い世界の話ではない。
ぼくは一時期、ウクライナ大使館のすぐ横で暮らしていた。小さな国だけど、まさに今、ウクライナは第1次世界大戦の「バルカンの火薬庫」みたいだ。
あの顔ぶれの世界の指導者たちに、この難題が捌けるだろうか。
誰がどのくらいの犠牲を背負うことになるのだろうか。
2022年も安穏としてはいらない。
北京オリンピックが終わり、次はパリ大会が2024年に控えているが、戦争次第なところもある。
ビルゲイツ氏が次の感染症を予言している通り、コロナが収束しても、また何かが出てくる。うんざりだ。
しかし、どのように過酷な時代であろうと、ぼくたちは生きていかないとならない。
「日々を丁寧に生きる運動」をぼくはお弁当を作りながら続ける決意を新たにした。
さぁ、息子よ、いってらっしゃい。

退屈日記「この世界が苛酷になりつつあるけれど、今日も息子にお弁当を作った」

お知らせです。
2月23日水曜日、いよいよ、三四郎も出演するNHKBSの「ボンジュール、辻仁成のパリの冬ごはん」が放送になります。
2月23日(水・祝)21時51分~22時50分となりますよ。



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