PANORAMA STORIES

リサイクル三四郎日記「吾輩は犬である。ムッシュはどんな人?」 Posted on 2023/02/11 三四郎 天使 パリ

吾輩は犬である。
ご主人のムッシュがどんな人かって? 
それはとってもいい質問だと思うよ。
まず、ムッシュはどこからやって来たのだろう・・・。
ぼくはすっかり安心をして、とっても幸せな日々を送っているけど、ある日、不意にどこからともなくこの人が現れた。
そして、その時からぼくの人生は間違いなく、大きく変化しはじめた。
ムッシュはいつもぼくと遊んでくれるし、ぼくをしょっちゅう膝の上で寝かせてくれるし、ぼくのお腹をさすってくれるし、ぼくに十分なごはんやおやつも与えてくれる。
ムッシュは一日中、ぼくの近くにいる。
少し離れることもあるけれど、机に向かってお仕事をしている時なんかに・・・。
ぼくは遠くからムッシュの背中を見守り、お仕事が終わるのを待っている。
ムッシュは毎日、何時間か、机に向かって、背中を丸めたまま動かなくなり、四角い機械を叩いている。
カタカタという音だけが家中に響き渡って、どうやら、それが彼の仕事のよう・・・。
ぼくはムッシュが仕事をしている間は、ムッシュの背中を見つめながら、ベッドに寝転がって彼が戻って来るのを待っているのだけど、だいたいそのうち、寝てしまう。
寝ている間も、カタカタは続く。安心できるリズム・・・。

リサイクル三四郎日記「吾輩は犬である。ムッシュはどんな人?」



それから、ムッシュは毎日、何回か、ぼくを散歩に連れ出す。
正直、ぼくはお外があまり好きじゃない。散歩に行くぞ、と言われるのがイヤ。
ぼくが歩道で動かなくなると、「三四郎、いい加減に普通に歩いてくれよ」とムッシュは、小言をいう。
そして、ぼくが脚を広げて、道の真ん中に寝そべって、歩きたくないポーズをすると、困ったやつだという顔をして、やっと抱っこしてくれる。
「これじゃあ、散歩に出る意味がないじゃん」
だって、それはぼくが望んだことじゃないんだよ、ムッシュ。
犬がみんな散歩好きだとは限らないんだよ。まァ、いいけど・・・。

リサイクル三四郎日記「吾輩は犬である。ムッシュはどんな人?」



ムッシュは散歩中もずっとぼくに語り掛けている。
それはぼくに語り掛けるというよりも独り言に近いのかな。
ぼくには意味の良くわからない話が多い。
「今夜は何を食べようかな」とか
「もうすぐ嵐が来るんだ。ほら、だから風が強いだろ。でも、怖くはないぞ。ぼくがずっと傍にいるんだからね」とか
「そういえば冷蔵庫に鶏肉と茄子とフェンネルがあったっけ。あれで何か作ればいいよね?」とか
「最近、Lさんから連絡がないんだけど、なんかあったのかな」とか
「恒ちゃんはね、いつも母さんにごはんを作ったり、散歩に連れ出したりえらいんだよ。母さんはね、86歳だよ。この間もね、検査入院中に家に帰ると言い残して、出て行こうとしたみたい」とか
「犬好きな菅間さんがね、お前に会う前に天国に行っちゃったから、会わせられなかった。あの人がいたら、日本で君の面倒を見てくれたよ、間違いなく」とか
「三四郎、たまには返事しろよ」とか、
言うのである。
ぼくには関係ないことまでぼくに伝えようとしてくる。
ムッシュの心の声だと思うし、ぼくは嫌ではないから、返答したりはできないけど、黙って聞いてあげている。
それがぼくのムッシュに返せる唯一の仕事だと思っている。
ぼくでよければ、話し相手になってあげるよ、ムッシュ。

散歩は好きじゃないけれど、ムッシュと浜辺を歩くのは好きだ。
砂地にムッシュは座って、目を細めて水平線を眺めている。
そして、いつもあの外国語の歌を歌っている。
囁くような低い声で歌うから、ぼくは寄り添って聞いている。
もうすっかり耳にこびりついてしまった。風の音、波の音、かもめたちの鳴き声、そして、ムッシュの歌声・・・。
ぼくがやって来る前まで、ムッシュはどうやって生きていたのだろう、と思うこともある。
一人で浜辺に行き、誰もいない海に向けて語り、歌っていたのだろうか。
ムッシュは独り言の途中で、よく、ぼくの頭を撫でてくれる。
抱き寄せ、おなかもさすってくれる。
ぼくは安心なんだ。わかるかな。

リサイクル三四郎日記「吾輩は犬である。ムッシュはどんな人?」



いつもこうやって、ぼくの傍にいてくれる、ぼくのことだけを考えてくれている人がいるということがどんなに素晴らしいことか・・・。
それはムッシュと出会った、あの瞬間に、もう、わかったことだった。
でも、確信していたわけじゃないよ。だから、最初は不安でしょうがなくて、ちょっとムッシュが離れると、行かないで、と吠えまくっていたぼく、
・・・今はもう、吠えなくなった。
ぼくは一人でお留守番もできるようになったし、夜もムッシュを起こさなくなった。
ムッシュが自分の部屋のベッドで寝ているのを知っているし、朝、太陽が昇るのと同時に、頭をぼさぼさにし、ひどい顔で寝室から出てくるのもわかった。
いろいろとガミガミうるさい人だけれど、褒めてる時も怒ってる時も実に楽しそうなのだ。
ムッシュにもっと構ってほしい時に、ぼくがわざとピッピを外していること、・・・ムッシュは知らないのかもしれない。
見てよ。ぼくはいつだって、尻尾を振り続けているでしょ?
こうやって安心していられる毎日が嬉しくて仕方がない。
怒られても、抱きしめられても、嫌いな散歩も、死ぬほど嫌いなシャワーも、ムッシュと一緒だから幸せなんだ。
ムッシュはどんな時にも、ぼくを抱き上げ、膝の上にのっけてくれる。
ムッシュの腕の上に自分の顎を預けて、丸くなって寝る。なんて幸せなんだろう・・・。
ムッシュはもう一方の手でぼくの身体を優しく撫でてくれる。
「三四郎、三四郎・・・」
ぼくはうつらうつらする。そのうち、ムッシュの手も動かなくなって、二人で仲良くお昼寝をしてしまうんだ。
もう、ずっとそういう日々の中にいる。
ぼくには、昨日もないし、今日もないし、明日もない。
特別な希望も目標ないけど、無意味な後悔も反省もない。
ただ、今しかない。
ムッシュといる二人だけの世界しかない。

つづく。

リサイクル三四郎日記「吾輩は犬である。ムッシュはどんな人?」

そしてね、ムッシュにかわって、ぼくからのお知らせだよ。
そんなムッシュがね、2月の26日に「父ちゃんのカフェ飯教室」というのをやるんだって。ぼくを連れて行ってくれるカフェで出される、美味しそうなごはんを再現するらしい。興味のある皆さん、どうぞ、参加してみてくださいね。楽しいらしいよ。
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Posted by 三四郎

三四郎

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2021年9月24日生まれ。ミニチュアダックスフント♂。ど田舎からパリの辻家にやってきた。趣味はボール遊び。車に乗るのがちょっと苦手。