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パリ最新情報「おばあちゃんの味コンフィチュール、マーマレードが季節を迎える!」 Posted on 2022/02/17 Design Stories
フランスのおばあちゃんは、コンフィチュール(ジャム)を作るのがとても上手い。
たくさんのフレーバーが並ぶスーパーでは、一年を通してどの種類も手に入れることができる。
しかし、旬の果物をふんだんに使ったおばあちゃんの手作りジャムは、やはり格別である。
1月からはオレンジが旬を迎えており、「マーマレード作りの季節」となった。
フランスの柑橘類は種類が豊富で、一口にオレンジとはいっても色々なタイプがある。
マンダリン、オレンジ、クレモンティーヌなどが主流で、コルシカ産のものが特に有名だ。
都市部ではマルシェで果物を買ってジャムを作る、というのが一般的だが、地方では庭で採れたものや、近所からお裾分けをもらって作ったりする。
なぜこれほどまでジャム作りが浸透しているかというと、フランスではこれが朝食の主役となっているためだ。
バゲットにバターやジャムを塗り、カフェオレに浸していただく「タルティーヌ」というスタイルが、フランスの代表的なプティ・デジュネ(朝ごはん)となっている。
毎日食べるものだからこそ手作りが良いね、ということで、ジャムは母から娘へと伝わる伝統的なレシピの一つなのだ。
フランス人のお宅にお邪魔して食事をご馳走になる時、「c’est fait avec amour」と言われることがある。これは「愛をこめて作った」という意味で、言う方も言われる方もあたたかい雰囲気に包まれる。
おそらく、この言葉が一番使われる場面が、ジャム作りであるのかもしれない。
その時々のフルーツによって煮詰める時間も変わるといい、マーマレードに関しては皮あり、皮なし、または柑橘系のミックスと個人の好みが現れる。
また、自宅で作るものであれば砂糖の量も調節できるし、ミントなどのハーブを入れたおばあちゃんオリジナルレシピも存在する。
もし皮を使わない場合は、「オランジェット」というフランスのお菓子に生まれ変わる。
これはオレンジの皮を砂糖漬けにしたもの(コンフィ)に、チョコレートをかけたフランス生まれのお菓子で、フードロス問題も解消できる良い方法だ。
こうしてフランスの人々は旬のものをジャムに取り入れているのだが、他にもたくさんのフルーツが登場する。
例えば初夏のチェリー。
フランスのものは濃い赤紫色をした品種が主流で、甘みが強くとても美味しい。
郊外や地方のお宅では庭にサクランボの木がなっているところも多くあり、大量に採れるため一気にジャムにして保存するそうだ。
できたての熱々をギリギリまで瓶に詰めて、フタをして逆さまにする。そうすることで自然に密封ができ長期保存が可能となるらしい。
また夏にはアプリコット、秋にはイチジクなども登場し、春夏秋冬をこうして手作りジャムで味わうことができる。
その中でもフランスの人々が好きなフレーバーといえば、フランボワーズが真っ先に挙がるだろう。
フランスにおけるフランボワーズの人気は高く、パティスリーでもよく見かける。
ジャムだけでなくタルト、クロワッサンにも登場し、その可愛らしい見た目と甘酸っぱさで多くの人に愛されているようだ。
本来ジャムは、収穫期に食べ切れない果実を保存するために作られてきた。
今では季節に関係なく、すべてのフレーバーを手に入れることができるが、果物に限らず“旬”のものは味もよく栄養価が高い。
「おばあちゃんの知恵」がぎっしり詰まったジャムも、フランスの偉大な食文化の一つだ。(内)