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パリ最新情報「イヴ・サンローランの展覧会がパリの6美術館で同時開催」 Posted on 2022/01/29 Design Stories
モードの歴史にその名を刻むフランスのファッションデザイナー、イヴ・サンローラン。
彼の最初のショーから60周年を迎える今年、パリの名だたる6つの美術館で、サンローランのオマージュ展が開かれる。
6つの美術館とは…、イヴ・サンローラン美術館、ポンピドーセンター、パリモダン美術館、ルーブル美術館、オルセー美術館、ピカソ美術館。
各美術館の専門分野、個性により、サンローランの新しい側面や魅力が引き出され、今までにない視点で、ドレスやコスチューム等の服を始め、デッサン、オブジェ、写真等々が展示されている。
期間は1月29日から基本的に5月15日まで。
サンローランが26歳の時に、公私の生涯のパートナーであったピエール・ベルジェ(実業家でフランスの文化芸術を愛し庇護した)と共にイブ・サンローランの名でメゾンを創立したのが1961年12月4日。
初めてのショーが開かれたのが1962年の1月29日(展覧会開始日もぴったり同日だ)。
この初ショー以来、サンローランというブランドはその価値を下げることなく、世界のモード界に大きな存在感を示し続けている。
サンローランが自ら生み出した作品たちといえば、ファッションというカテゴライズを曖昧にし、時を経るごとに芸術的な価値を備える。
そして2022年の今日、私たちはそれらに美術館で遭遇するのだ。
とはいえ、サンローランの作品がアート美術館に展示さえれるのは初めてのことではない。
彼の生前、1983年にニューヨークのメトロポリタン美術館でサンローランの展覧会が既に開かれている。
しかも約64万人が訪れ成功を収めた。
その後に中国でもロシアでも開かれ好評を得ている。
彼は言っていた。
「誰もが審美的な幽霊をもって生きる。私にとってはモンドリアン、ピカソ、マチス、そしてプルースト」。
モンドリアンのワンピースはサンローランの服を代表するとされるものの一つであるが、彼にとって芸術はインスピレーションの源だった。
ポンピドーセンターではそんな、彼がインスピレーションを受けた作品を横に、彼がデザインした作品が見られ、ここまでそっくりだったかと驚く。
またパリモダン美術館ではウォーホルの描いたサンローランが、ルーブル美術館では金やクリスタルをふんだんに使った宝石のようなコスチュームが、私たちを迎えてくれる。
まるでイヴ・サンローランフェスティバル。
そして私たちは、サンローランの才能を、彼がどこまでもモードを愛していたことを、知らされる。
彼の服たちは、美しくしなやかでありながら、断固としたエネルギーのようなものがある。
例えば1971年に「プルーストのダンスパーティー」のためにジェーン・バーキンにデザインしたレースを施したドレスは、ベルエポックをイメージし古典的だが、すらりとシャープで背の飾りが驚く存在感でドレスを引き立てる。
しなやかさと断固としたエネルギーの、相反する美点が、サンローランの手にかかると魔法のように混ざり合って、そしてそれは服のオーラとなるのだ。
「スーツ(男性仕立ての)を着る女性ほど美しいものはない」と語った彼の思考からも、彼が女性の服をデザインする時に抱く女性の理想像が、そこにあったのではないかと思う。
そしてその女性像、美しくしなやかでありながら断固とした…、は、サンローランのみならず多くの女性の理想像なのかもしれず、だからこそサンローランの服は、普遍的に世界で愛されるのではないだろうか。
(ア)