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滞仏日記「犬用品を買いに、ペットグッズ専門店に行った。なにー、別世界だ」 Posted on 2022/01/11 辻 仁成 作家 パリ

滞仏日記「犬用品を買いに、ペットグッズ専門店に行った。なにー、別世界だ」

某月某日、息子の学校はオミクロン感染拡大により、ただいま、遠隔授業中で、彼は家にいる。
なので、今日は彼のために特大の納豆炒飯を拵えてあげた。
揚げ春巻き付きである。
息子に(ちょっと多すぎたかな、と思うほどの)食事を与えてから、ぼくは小雨降る中、ペットグッズ専門店へと向かった。
実は、お恥ずかしい話し、生まれてはじめてのペット用品店であーる。
何せ、今まで一度も犬を飼うという経験がないので、どういうペットグッズがあるのか、ぜんぜん、わからなかった。つまり、未知なる世界なのだ。
エッフェル塔の近くに可愛いペットグッズ専門店が一軒あった。
綺麗な内装で、ペットショップというよりも、ちょっとおしゃれなセレクトの雑貨を集めているようなセンスのいい店内で、その小奇麗さに実はちょっと驚いてしまった。
きっと東京のペットショップもこんな感じなんだろうな、と想像をしながら、ボンジュール・・・。
代々木公園の近くに住んでいたので、ペット用品店が多かった。でも、入ったことはなかったし、気にしたこともなかった。
犬がいないと全く目に入らないのが、ペットグッズ専門店なのであーる。
まず、何を買えばいいのか、わかないので、しばらく、ぼんやりと眺めていた。こりゃあ、ダメだ、と思ったので、スタッフにSOSのラインを送った。ぼくがちょろちょろしているので、まもなく、店員さんが近づいてきて、何をお探しですか、と言った。
ええと、その、全部必要です、とぼくはとんまな返事を戻してしまった。
「というのは、生まれてはじめてミニチュアダックスフンドを育てるのですが、何を買えばいいのかよくわかってないのです」
「ああ、それは大変ですね。もうワンちゃんはいるのですか?」
「いえ、10日後くらいにやってきます。その前に、揃えなきゃと思って」
「じゃあ、まだ大丈夫。まだ、間に合いますよ」
「実は、ケージだけ買いました、ネットで、長さ1メートルくらい、高さ60センチの」
「ふむふむ」

滞仏日記「犬用品を買いに、ペットグッズ専門店に行った。なにー、別世界だ」



とりあえず、ぼくは携帯を自撮り棒の先に取り付けて、自撮りをしている。お姉さんが、自撮りをしているぼくを怪訝な目でみた。
「マダム、カメラはどうして」
と訊かれたので、マダムじゃありませんよ、ムッシュです、と一応、説明しておいた。
「ロン毛なだけです」
「あ、失礼しました」
「いいんです。髪を伸ばしているぼくがいけないのですから」
「・・・・」←お姉さん、どういうリアクションしていいのかわからないでいる。
「あ、この自撮り棒と携帯は、その、ぼく、ユーチューバーみたいな仕事しているんです」
自撮り携帯でテレビ番組を作っています、と説明してもよかったけど、そんなものでテレビ番組作るテレビ局はきっとフランスにはないので、YouTubeと言った方が安心してもらえる、と思った。(でも、携帯だけど4Kで撮影しているのであーる)
ともかく、胡散臭いイメージを与えかねないので、自撮り棒=ユーチューバーということにしておいた。もちろん、YouTubeチャンネルも持っているので、あながち、間違えてはいない・・・。
「へー、いいですね。もちろん。うちは大丈夫ですよ」
「あはは。ありがとうございます」
「見てみたいです。なに、チャンネルですか?」
「いやいや、つまらないから、見ないでいいですよ」
ということで、撮影の許可もおりたので、堂々と自撮り棒で撮影を続ける父ちゃんであった。
店員のお姉さんにも手伝ってもらって、店内をくまなく撮影させてもらうことに成功したのである。でも、その分、いろいろと買うことになっちゃったのだけど・・・、えへへ。

滞仏日記「犬用品を買いに、ペットグッズ専門店に行った。なにー、別世界だ」

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「はじめて、飼われるんですね、ワンちゃんを。そりゃあ、大変ですけど、楽しいですね。じゃあ、最低限必要なものを今日はそろえて、ワンちゃんがきたら、少しずつ、増やしていくのがいいでしょうね。いつか、ここにも散歩のついでに連れてきてください」
「はい、先生」
ぼくらは笑いあった。マジ、先生みたいな店員さんなのである。
てきぱきと動いて、「これが便利です、これがいいでしょう、これはやめておきましょう、まだ必要ありません」とどんどん、教えてくれた。
使い方なども懇切丁寧に・・・。
「おやつは、これがいいでしょう。ミニチュアダックスフンドは口が小さいから、大きなおやつじゃない方がいい」
「はい」
「歯がむずむずするときに、噛んで落ち着かせるやつが必要で、このちょっと柔らかいのと骨タイプのがあります」
「じゃあ、両方ください」
「首輪は、たぶん、この一番小さいのがいいでしょう。XSで十分だと思います。リードも同じのがあります。どのカラーにします?」
「はい、からし色ので」
「ベッドありますか? 犬専用のソファベッドが必要でしょうね」
「ケージの中用とサロンに置くのと二種類ほしいんです」
「ほわほわのと、ラウンドソファがあります」
「はい。それがいい。からし色のやつでお願いします」
「散歩のときに、今は少し寒いからセーターとかポンチョが必要でしょう」
「はい」
「シャンプーは?」
「はい」
「フードボウルは? 水のみ用のと」
「はい」
「これはいらないかな? おしっこをここでするのよ、という匂いをつけるスプレーがあります。犬は匂いに敏感だから、これをシートにちょっとかけておくとそこでしていいんだな、とワンちゃんたちは思うのです」
「わあ、いいですね。ください」
「じゃあ、トイレシートも?」
「はい」
ということで、えらい買い物になってしまった。

滞仏日記「犬用品を買いに、ペットグッズ専門店に行った。なにー、別世界だ」

※ 上段左から、ソファベッド(上に載ってるのは、おもちゃ、ぬいぐるみ)、移動用キャリーバック、ケージ内に入れるふわふわクッション(上に載ってるのが、首輪とリード)。
真ん中左から、おしっこシート、歯のむずむずをとる骨みたいなもの、うんち袋、犬のビスケットやおやつ、犬のうんち袋を入れるポーチ(リードと同じカラー)、フードボウル、水ボウル。
前段左から、おしっこはここでするのよスプレー、おもちゃ(お姉さんおすすめのおもちゃ)、シャンプー、おしりふき、セーター。



店に入る前に、犬に詳しいスタッフさんに手伝ってもらえないか、と頼んでいたのだけど、全部、揃った頃にその人が到着(ちょっと遠方の人なのであーる)、レジに山積みになった商品を見て、
「間に合わなかったみたいですねー」
と笑っていた。
でも、買ったものはだいたい必要なものだそうだ。
いい店員さんで、よかった。

つづく。

滞仏日記「犬用品を買いに、ペットグッズ専門店に行った。なにー、別世界だ」

お知らせです。
そして、今週、日曜日に迫ってきました。
ここではトリュフ犬とトリュフ栽培士さんと駆け抜けます。

ムーケ・夕城(トリュフ栽培士)×辻仁成「ブラックダイヤモンド、黒トリュフの魅力」辻仁成がトリュフの聖地ドルドーニュにて、トリュフ狩りに初挑戦
2022年1月16日(日)20:00開演(19:30開場)日本時間・90分を予定のツアーとなります。
【48時間のアーカイブ付き】
※アーカイブ視聴URLは、終了後(翌日を予定)、お申込みの皆様へメールにてお送りします。

この講座に参加されたいみなさまはこちらから、どうぞ

チケットのご購入はこちらから

※ フランス南西部に位置するドルドーニュ地方の山奥に位置するトリュフ園からトリュフの魅力を御覧頂く予定の生配信を準備しておりますが、天候など様々な理由で一部変更になる可能性もあります。山奥にある、広大なトリュフ園からですので、電波が乱れる可能性もございます。最大限の状況を模索しながら、当日、トリュフ犬と栽培士さんらと力を合わせ、挑む形になります。嵐にならない限りは決行いたします。
当日はZOOMではなく、映像の綺麗なVIMEOで配信をします。



自分流×帝京大学