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パリ最新情報「パリ洪水に黄信号発令。上がり続けるセーヌ川の水位」 Posted on 2022/01/10 Design Stories
冬のパリは天気が悪い。
太陽の姿を滅多に拝む事ができないくらい、毎日が厚い雲に覆われて視界がグレー一色になる。
平均気温は0〜5℃、最高でも7℃前後と寒く、フランスの人々は決まってこの時期ビタミンD不足になってしまう。
ところが、昨年末のパリは異常なほど暖かく良天候に恵まれた。
大晦日は最高気温が17℃まで上がり、身体は楽だったものの「温暖化の影響か」と心配になってしまったほどだった。
実は、気温が上昇した後のパリでは決まって雨が降る。
先週は一転して冷え込み、さらに長雨が続いてしまった。
そうなると起こるのが、セーヌ川の氾濫である。
週明けの10日月曜日、フランス気象局はパリのセーヌ川が洪水の危機に瀕する「黄信号」にあると発表した。
水位は8日土曜日の午後からセーヌ川で増加し、パリ東部のオステルリッツ橋の高さで2.67メートルに達した。
10日の終わりにはこれが3.25メートル(通常の2~3倍)を超える可能性があるという。
今週の天気予報は晴れのため今後水位は下がると予想されているが、中心部から水が引くまでには、数週間かかると見られている。
パリのセーヌ川は、これまで何度も洪水被害にあってきた。
1982年には水位が6メートルを超え、 1955年には7.12メートルを超えた。
さらに遡る1910年には大洪水が起き、パリの大部分が水没したとの記録がある。
ここ数年では、2018年1月のセーヌ川氾濫が記憶に新しい。
当時はルーブル美術館が所蔵品を避難させたり、数千軒の家屋が浸水する事態となった。
気になるのは、これが毎年のように頻繁に起きていることだろうか…。
さらに現在、フランスでは南西部を中心に5つの県が、差し迫った冠水の危険性がある「レッドゾーン」に指定されている。
ピレネー=アトランティック、アリエージュ、ジェール、オート=ガロンヌ、オート=ピレネーの、いずれもトゥールーズからピレネー山脈近くの、南西部での洪水が深刻だという。
約110年前の洪水では、パリ市街は数カ月にわたって浸水し腸チフスなどの伝染病が広がった。
「100年に一度の洪水」と呼ばれる1910年の災害だが、皮肉にも今度はコロナがパリを襲っている。
度重なる洪水被害を受けて、「パリ市は“100年に1度”の洪水への備えができていないのでは?」という声も上がっているようだ。
(写真は2018年のものです。)
(こちらの写真は2021年2月のものです)
(同じく、2021年2月。この時も氾濫しそうになった)
しかし、実は2014年以降、パリは大規模な洪水に備えていくつかの施策を講じている。
2015年から始まった市の緑化計画に始まり、そして新たな洪水防止案として、パリ上流での調節池や遊水地の建設も含まれている。
パリを含むイル=ド=フランス地域圏は、フランス経済活動の三分の一を占めるユーロ圏最大の経済地域である。
政府機関、主要産業、研究機関、輸送拠点等を有し、1910年時点よりも重要性が増していることから、さらなる洪水被害に備えるためにコンクリートで覆われた街に多くの緑を植える必要があるという。
パリの水害は日本と異なり、決まって冬に起こる。
気候変動で地球が温暖化し、干ばつ、山火事、台風などを引き起こしている今、対策を投じても自然災害を防ぎきれないこともある。
「まだ大丈夫」といった過信がさらなる被害をもたらすので、コロナと同様、気を引き締めていきたい。(大)