JINSEI STORIES
真夜中日記「やっぱり、おせちに飽きたらカレーなのであーる!!!」 Posted on 2022/01/04 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、無性にカレーライスが食べたくなる時期でもある。(ちなみに、今はフランス時間の深夜3時半)例のごとく、父ちゃんは眠れないのだ。
一度、寝たのだけど、誰もいないはずのこの田舎の古い建物のどこからともなく、スパイシーな香りが漂ってきて、くんくん、していたら目が覚めてしまった。幻覚だろうか。
「カレーが食べたい」
と思わず、言葉が飛び出して起きてしまったが、田舎のアパルトマンなので、パリだったらレトルトのカレーがキッチンの棚の中に一つや二つあったはず。いや、冷凍庫に冷凍にしたカレーがそもそもあったのだけど、ここには残念ながらカレー粉さえないのだ。
高級な数の子を日本から送ってくださった身として申し訳なくてこんなことは口が裂けても言えないのだけれど、数の子ばっかりは毎日食べてはいられない!
やっぱり、おせちに飽きたらカレーだよね、という昔の広告が頭を過った父ちゃんなのだった。
それで、パソコンに入っていた辻家の食歴史ファイルを開いてみた。
カレーコーナーというのがある。この映像ファイルには、他に、ラーメンコーナーとか、うどん&蕎麦コーナーなどもある。
ここ数年の辻家の貴重な(笑)食の資料館的役割を果たしているのであーる。
うわあ、こんなの作ってたっけ・・・よだれが出るゥ・・・。
※ 塩昆布カレーである。辻家定番の和風カレーは、塩昆布で作る。黒いにょろが、塩昆布ね。
ぼくはオクラが好きなので、オクラを多用したカレーが多い。エビ・オクラカレーとか、ガンボ風カレーとか、・・・。
それから、黒カレーも良く作る。真っ黒なカレーライスだ。昔、神保町にこの黒カレーを出す名店があった。濃厚なスパイスのなせるわざなのである。
それから、黒カレーにもカツがあうけど、辻家定番のカツカレーは美味い。おせちに飽きたら、文句なしで、カツカレーが食べたい。
あの歯ごたえとカレーソースの見事な融合、カツカレーはフランスでも現在大ヒット中で、これはまさに、インドのカリーとフランスのカツレツが日本で結実した証なのであーる。画家の千住博氏も昔、力説していたっけ。
それから、タイ風カレーというのも忘れてはならない。
辻家はイエローカレーを作ることが多いが、時々、グリーンカレーやレッドカレーを作ることもある。
タイ人独特のスパイス感には頭が下がる。やっぱり、おせちに飽きたら、タイ風カレーでもいいじゃないの~。
ともかく、おせちに飽きてしまったのだ。
みんなに褒められて、インスタで1万を超える「いいね」を貰ったのだけど、しかしであーる。
あんなに大量に作ったから、しかも、日本の知り合いが辻親子のことを考えて送ってくれた各種の高級食材を、無駄にすることはできない。
でも、かまぼこ、とか、いくら、とか、にしんの昆布巻きとか、数の子を使ってカレーライスはできないのだ。絶対無理っ!
昨日、ラングスト(仏風伊勢海老)が余ったので、もったいないことにパスタにしたのだけど、自分が嫌いになるくらい不味かった~。タイ風カレーにすればよかったのに・・。ああ、なんで後悔先立たずなんだよー。
ともかく、フランスの田舎で眠れず、どこかから漂ってくるスパイスの香りをかぎながら、3時半に、これを書いている父ちゃんなのであった。
しかし、誰が、こんな時間にこのようなスパイシーなものを作っているのであろう・・・。もしかすると、幻覚かもしれない。おせちの亡霊の仕業かもしれない・・・。
ああ、腹が減った。やっぱり、おせちに飽きたら、カレーなのであーる!!! 明日は、カレーにします。
あ、カレーうどんもいいよねー。
つづく。