JINSEI STORIES
退屈日記「スケジュールあけて待ってた父ちゃん。依頼した人から連絡なし。怒ってます」 Posted on 2021/12/30 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、年の瀬でばたばたしている。皆さん、お忙しいでしょうね。
ぼくには仕事納めとかないから、今日も普通に仕事をしている。
その合間を縫って、おせちの準備、家で息子とカウントダウンをして、いろいろとあった2021年とお別れという感じになるのだろう。
秘書さんのメールアドレスにやっと入ることが出来て、パスワードが見つかったので、昨日は彼女が亡くなった以降に入ってきたメールのチェックなどをやった。
それからdancyuのサラダ連載(今回はファラフェルのサラダです)の原稿を植野編集長に送り、一応年内の連載は終わりとなった。植野さんからご丁寧な返事が毎回、2通ずつくらい届くのだけど、頭の下がる素晴らしい編集者さんだと思う。
編集長なのに、もう何年も担当をやってくれているのだから・・・。
そういえば、その植野さん経由でネットから出現した若手の大変人気のある作家さんととある雑誌(みんな知ってる雑誌だよ)でラジオ対談をという話しが来ていた。ラジオ特集とかあるのかな?
秘書さんが亡くなった直後でほかの仕事は全部キャンセルしていた父ちゃんだったが、植野さんが仲介され、その作家さんが、昔、オールナイトニッポンを聞いていたらしく(そう説明を受けた)、ラジオ対談だというので、申し訳ないことに外国暮らしだし、その人の作品は読んだことないけど、面白い経歴の作家さんだったから、気にはなっていた人だったし、楽しみにしていたのだけど・・・。
手元に本がないから、彼のツイートとか、読んで、へー、とか勉強していた愚かな父ちゃん・・・。おひとよしさん。
ぼくは秘書さんがいなくなり、連日、パニックになっていた時期だったけど、なんとか日程を調整し、その日をあけて待っていたのに、前日になっても連絡なし。
植野さんに、あの話しどうなってんですかね~、と確認したら、
「え? まだ、担当者から連絡ないですか?」
と驚かれ、その直後、
「辻さん、別日とかありますか? 別の日程提案してみます」
と訊かれたので、さすがに、これはよくない。植野さんにそこまでさせられない、と思って、
「植野さんは編集長なのに、植野さんにそういう仲介をぼくはさせられないから、この話しはちょっと人間として失礼なので、やめませんか?」
と戻した。(でしょ? 相手はぼくのメアド、知ってるのにね、メール一つ、よこさないってどういうこと?)
そしたら、植野さんから、
「やめましょう」
と一言戻ってきた。おしまい。
なんの行き違いかわからないけど、そこの雑誌の編集方針とかがわかって、やめて当然だったな、と思った。
みんなもよく知る人気雑誌かもしれないけど、人が不幸を抱えて大変なことは取材を申し込んだのだから、それくらい調べて知ってるだろうに、これしか日程もないことをわかって、急な話しなのに、対応をした父ちゃんは、お人よしか・・・
年末に、人間のかまびすしさを覚えたよ。まったく。
人間、こちらに非がなくてもいちいちがこうなのだから、面倒くさい。皆さんも気を付けて。
そういう不快な思いをしたら、速攻無視して、明るい未来を考えてください。
来年は、なんでも引き受けるのはやめようと思った。
ということで、ぼくは今、気持ちを新たに、おせちへと向かっているのだ。
今日はこれから、スーパーにおせちの材料を買いに・・・。
つづく。