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滞仏日記「クリスマスなのに、苦しみますプレゼントな父ちゃんであーる」 Posted on 2021/12/21 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、「クリスマス・プレゼント、今年は無し」紙上宣言をしたのは、読者の皆さんのご承知のところであろう。
息子の耳にも親戚筋などから、噂は届いているかもしれない、と思っていた。
ところがである。
息子がなんとデザインストーリーズの編集者さんに、SMSを送り、「カメラかレザージャケットがほしい」と間接照明を照らしてきたのであーる。
これには思わず、やられてしまった父ちゃん。どこで連絡先をいつ交換したのか!
やっぱり、プレゼントは欲しいですよね、と言ったスタッフさん。←怪しい。
先日、廊下ですれ違った時に、「クリスマスプレゼントもお年玉も、成人になったら終わりだからね」と伝えたところ、「そうだね」という返事だったので、最後くらいはなんか買ってあげなきゃ可哀そうだな、と思っていたところへきての先制パンチであった。
カメラもレザージャケットも結構高いので、父ちゃんは、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、財布と相談をした。
しかし、清水の舞台から飛び降りたら、人間は死んでしまう、というのが父ちゃんの持論なので、どうしたものか、と悩んでいるところ・・・。
ぼくは別に、ケチではないので、買ってあげないわけでもない。ただ、そんなに高価なプレゼントを、はい、そうですか、と言って買ってあげるのもどうか・・・。

滞仏日記「クリスマスなのに、苦しみますプレゼントな父ちゃんであーる」



カメラは、それなりの値段がするし、それなりの値段のものじゃないと持っていても、応用がきかないので、表現する者としては、いいものを持たせてあげたい。
最新刊「パリの食べるスープ」の印税が1月には入る予定なので、(笑)、それでカメラは買ってあげてもいいな、と思った涙ぐましい父ちゃんであった。
じゃあ、レザージャケットはクリスマスプレゼントにすればいい。なるほど、それは名案だと思った、( ノД`)シクシク…涙ぐましい父ちゃんであった。
しかしであーる。
だいたい、レザージャケットが欲しい、と言われても、ぼくが勝手に買っても、喜ばないし、喜べないだろう。
何を着たいかすでに持ってる年齢なのだからであーる。
なので、ネットで買ってあげようと思って、廊下ですれ違った時に、ネットで探しておいてごらん、と言ったのだけど、・・・返事なし。
ネットじゃ売ってないのかもしれない。高そう・・・。(-_-;)

滞仏日記「クリスマスなのに、苦しみますプレゼントな父ちゃんであーる」



今日、クリスマス・イブのパリ市内オンラインツアーの打ち合わせが午後、行われたので、ギャラリーラファイエットに行った。
当然のことだが、プレゼントを買い求める人々であふれかえっていた。
父ちゃんは打ち合わせの後、スタッフと別れて、メンズ・コーナーを歩き、息子のジャケットを探しまくったのであーる。
ところが、あまりに服がありすぎ、また、あまりに人が多いので、普段、引きこもり傾向の強い父ちゃんは一時間も探せずにいたら、ふと、目の前に、かわいらしいハンチングを見つけたので、かぶったら、横にいた、おじさんが、同じ帽子をかぶって、ぼくの頭をじっと見ているのであーる。
なんだ、このお父さん、と思ったのだけど、こっちもお父さんなので、ひるむわけにはいかない。
「なにか?」
と言ったら、
「そのサイズはいくつかね?」
と訊いてきたので、
「59」
と言ったら、
「わしがかぶってるのは58だが、交換しないかね」
と言いだした。
つまり、そのお父さん的には、今かぶってるのがちょっと小さいのである。←知らんがな。
ぼくは買うつもりでかぶったわけではなかったのだけど、そう言われると人間というものは手放せなくなる。
え? そんなに小さな人間なのか、辻仁成よ、と思ったけど、そのお父さんの目つきが気に入らない。君には似合わないよ、みたいな言い方(目つき)なのであーる。
そしたら、店員さんがやってきて、
「お二人ともとってもお似合いです。お二人、いい関係ですね」
というような滅相もないことを言ったので、違いますよ、この人、他人です、と言ってやったら、そのお父さん、笑ったのだった。
とにかく、何か、釈然としないものを感じたのだけど、帽子を脱いでそこに置いてしまうと、そのお父さんに買われてしまうのが癪に障るから、ぼくはそのままレジに行き、買ってしまった。冬用のハンチング。こちらです↓

滞仏日記「クリスマスなのに、苦しみますプレゼントな父ちゃんであーる」



ということで、ぼくは買ったハンチングをかぶって、息子のためにレザージャケットを探したのだけど、やっぱり、見つからず(めっちゃ高いのはあった)、ま、仕方ないな、ということで、息子よ、父ちゃんの努力を買ってくれ。
そのまま、蕎麦屋の東郷に行き、常連の顔をして、キツネ蕎麦を食べた父ちゃんであった。さて、プレゼントはどうしたものか???

つづく。

またまた、お知らせです。すいません。

12月24日は、辻仁成と歩くクリスマスイブのパリ・オペラ地区オンラインツアー「ギャラリー・ラファイエットの巨大クリスマスツリー前からヴァンドーム広場まで」
2021年12月24日(金)19:30開演(19:00開場)日本時間・90分を予定
【48時間のアーカイブ付き】
※アーカイブ視聴URLは、終了後(翌日を予定)、お申込みの皆様へメールにてお送りします。

この講座に参加されたいみなさまはこちらから、どうぞ

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※ 当日はギャラリーラファイエット屋上からパノラミックな世界を御覧頂く予定の生配信を準備しておりますが、天候など様々な理由で一部変更になる可能性もあります。入念な電波チェックはしておりますが、各階の移動時に若干、電波が乱れる可能性もあります。また、当日は嵐ではないかぎり、決行します。そして、ZOOMより画像のキレイな高画質のVIMEOシステムを採用させてもらいます。大画面でもお楽しみいただけます。
 

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