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愛すべきフランス・デザイン「小さなパリっ子たちの乗り物事情」」 Posted on 2023/11/13 ウエマツチヱ プロダクトデザイナー フランス・パリ

愛すべきフランス・デザイン「小さなパリっ子たちの乗り物事情」」

パリの子どもたちの、生まれて初めての乗り物、ベビーカー。そして、ベビーカーを卒業したら、みな一様に、とある乗り物を愛用し始める。そんな小さなパリっ子たちの定番乗り物事情をご紹介。



愛すべきフランス・デザイン「小さなパリっ子たちの乗り物事情」」

※ ベビーカーは黒であれば、自分の服と何でも合う、とパリジェンヌ

ママになったパリジェンヌたちが迷わず選ぶのが「BABYZEN YOYO(ベビーゼン ヨーヨー)」という、超小型モデルだ。パリ市内で見かけるベビーカーの8割がこのモデルといっても過言ではないほど。ではなぜ、このモデルがここまでウケているのか。
それは、そのサイズ! フランス製で、パリジャン、パリジェンヌのライフスタイルに合致している。パリのメトロの細ーい改札を通り抜けられて、バカンスで旅立つ際、飛行機に手荷物として機内持ち込みができる。このサイズ感が、選ばれている一番の理由だ。都市型に特化したベビーカーだからか、フランスも郊外にいくとYOYO以外のモデルが多く見られる。

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※ パリのメトロの細い改札も通れる

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※ 機内持ち込み可能なサイズに折りたためる。



航空会社エールフランスともコラボレーションしており、限定モデルも。通常であれば、預け荷物にしなければならないベビーカーだが、搭乗チェックインの際に「YOYO? OK!」と合言葉のようだ。

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※ エールフランスコラボレーションモデルは紺色のパターン入り



一瞬でコンパクトに折り畳めて、ヨーヨーを弾くように開くことができるので、YOYOという名前がついた。新生児から4歳まで、土台の本体部分はそのままに、座席ベースを付け替えることで、長く使えるのも魅力。モノを長く大事に使うフランスならではだ。

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※ 6ヶ月までは寝かせられる形

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※ 6ヶ月以降は座れる形

そして、ベビーカーを卒業してからの乗り物、それはトロチネット。いわゆるキックボードだが、フランスでは一般的にトロチネットと呼ばれている。その中でも、ダントツ人気のブランドは「GLOBBER(グロッバー)」だ。こちらもまた、1歳から3歳過ぎまでと、長く使える設計になっている。ちなみに我が家の娘は、もうすぐ4歳になるが、とても怖がりなので、未だに1歳児モードで使用している。年齢はあくまでも目安で、子どもの成長に合わせられる。

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※ GROBER公式サイトより

保育園や幼稚園の送り迎えに、トロチネットに乗ってくる子たちの多いこと。そのまま園に置いて行くことはできないので、子どもを見送った後にトロチネットを引きずって帰る親の姿をよく見かける。帰り道に多少重い思いをしたとしても、朝の忙しい時間にヨチヨチ歩かれるよりは、素早く移動ができて効率的なのだ。

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興味深いのが、ベビーカーの「BABYZEN YOYO」も、トロチネットの「GLOBBER」も、パリの市場を独占しているのではないかというほど、みんなこのブランドのものを選んでいる。フランス製ということを誇りにするフランス人だからかもしれないが、それに次ぐメーカーが出てこないのも、オリジナリティを大事にするお国柄だかもしれない。

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※ 左はふたり乗せられるタイプの大型ベビーカー、右はBABYZEN YOYO

そして、どちらも大人気商品なのに、新しいものがドンドン追加発売されるわけではなく、定番のデザインとして定着した上で、少しずつ改良されていっている点も面白い。「BABYZEN YOYO」は2012年、「GLOBBER」は2014年に最初のモデルが発売され、それぞれ徐々に進化しているが、並べてみてもパッと見の違いはわからない。日本人の感覚だと、ヒット商品が出た後は、更なる商品展開や、バリエーションを出したくなる気がする。

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※ 左から、初代YOYO、YOYO+、YOYO2(中古ベビーカー販売サイトbiicou-comより)

これは、欧州での自動車の進化の仕方に似ている。欧州車は新車が出た! といっても、前のモデルとあまり見た目が変わらないことが多い。日本車でいうところのマイナーチェンジぐらいでも、新車だったりする。それは既に築き上げたブランドイメージを保つために、大きく変更しないという文化があるのだ。
子ども用品に関しても、現時点で好評を得られている部分は変えずに、問題点のみ改善するという姿勢を感じる。そして、新旧、大きく変わらないので、古い世代のものを使っていても、劣等感があまりない。それもあってか、ベビーカーもトロチネットも、中古車市場が活発だ。フランスの良いものが定番化しやすい文化は、そんな「変えない勇気」でできている。(ウ)

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(Photo : Nahoko Takano)



自分流×帝京大学

Posted by ウエマツチヱ

ウエマツチヱ

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tchie uematsu
フランスで企業デザイナーとして働きながら、パリ生まれだけど純日本人の娘を子育て中。 本当は日本にいるんじゃないかと疑われるぐらい、日本のワイドショーネタをつかむのが速い。