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パリ最新情報「パリジェンヌが提案する、オペラ地区の新しい「クールワーキングスペース」」 Posted on 2021/12/17 Design Stories
12月6日、ジャン・カステックス仏首相はコロナ第5波を受け、国内企業に向けて「可能な限り」週2~3回のテレワークを設定するように要請した。
コロナ禍を経て、新たな働き方として定着したテレワークだが、フランスにおける人々の反応はさまざまである。
「通勤時間が省けるため仕事の効率がいい」「家族と過ごす時間がフレキシブルに組めストレスが少ない」などのポジティブな意見がある一方、同僚との接触がないため孤独になる、オンとオフの区別がつけにくく働きすぎになるといった否定論もある。
フランスではテレワークが可能な職種の人は就労者全体の約6割とされているが、現在では週に3日テレワーク、2日出勤というハイブリッド方式をとる企業が多いようだ。
そんな中パリでは、全てのテレワーカーに向けた新たなワーキングスペースが登場し、「自宅にいるようなおもてなし」が受けられるとして話題を呼んでいる。
パリのオペラ地区にあるLe Shack(ル・シャック)は、コロナ禍の2020年5月に誕生した新しいコワーキングスペースだ。
もともとはパリの出版社、カルマン店=レヴィ社の印刷所があった建物を改装し、「隠れ家スポット」として働くパリジャン・パリジェンヌの注目を集めている。
Le Shackが他のコワーキングスペースと違うのは、何よりその気軽さにある。
多くの場所が時間制・会員制度を導入しているのに対し、Le Shackは一杯3€のコーヒーで何時間でも滞在OK。一階のラウンジであれば、ドロップインで誰もがラフに訪れることができるという。
個人事業主やフリーランスは気分転換にここで作業をすることができるし、ミーティングも可能とのことだ。さらに、コーヒーを飲むだけだったり、落ち着いた場所で読書したい、といった人もウェルカムなのだとか。
オーナーは、パリジェンヌの女性起業家、エミリー・バスケス氏。
従来の「堅苦しい」コワーキングスペースのイメージを払拭し、「家にいるように快適で居心地の良い場所を作りたかった」とのこと。
コワーキングならぬ、女性目線の楽しく健康的な「クールワーキング」を目指しているという。
その内装は素晴らしく、19世紀半ばの印刷所というクラシックな雰囲気はそのままに、インテリアを現代風にアレンジした。
18時以降はバーとなり、訪れた人はミーティングの後にそのままアペロ、といった流れにも持っていける。予約すれば貸し切りでレセプションパーティーやライブ会場にもなるそうで、その柔軟さが地元パリジャン・パリジェンヌに受けている。
そして建物の2階、3階部分はレンタルオフィスとして運営。
15のオフィスを構え、現在はスイスの時計メーカーやフランスの出版社などが契約しているという。
また、地下にある多目的スペースではヨガや瞑想のイベント、楽器(パーカッション)のレッスンなども定期的に行い、テレワークの「マンネリ」を解消する。
Le Shackの評判はかなり良いようで、12月初めには仏紙Le Parisienが特集を組んだほか、ブリジット・マクロン大統領夫人もサプライズで訪れた。
そして目立ったのは、やはり女性の利用客が多いことだろうか。私が訪れた際は女性中心のスタートアップ企業の説明会が行われていて、働くママさんと思われる姿が多くあった。
産後もフルタイムで仕事復帰をする人が多いパリ。在宅勤務では家事・育児が頭から離れないし、同僚とお茶でも飲みながら意見を交換する場所が欲しい…そういった、テレワークのデメリットを撤回する場となっている。
仕事でもプライベートでも、良い意味での「逃げ道」は必要だ。
家や会社で気持ちが行き詰まった時、環境を変えただけで仕事がはかどることもある。
そういった意味では、やはりパリジェンヌは息抜きを見つけるのが上手だな、と思った。
母でも妻でもない自分になれる、Le Shackのような場所がこれからどんどん増えていくのだろう。(せ)