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パリ最新情報「パリの街に突如現れたクマさんたちの秘密にせまる」 Posted on 2021/12/03 Design Stories
パリの街を歩いていると、ところどころに出没するビッグサイズのテディベア。クマさんたちはカフェでお茶をしていたり、本屋で本を読んでいたり・・・。
ロックダウン中、閉鎖しているカフェやレストランをこのでっかいクマさんたちがジャックしている光景は、思いがけずご褒美をもらえたような、疲れた心をほっこり癒してくれるものでした。
では、このクマさんジャック現象、いったい誰が、どんな理由ではじめたのでしょうか?
はじまりは2018年の10月末。パリ13区にある書店のショーウィンドウに突如でっかいクマさんが現れました。
仕掛け人はその書店の店員、フィリップさん。アートだとか、何かのメッセージだとか、クリスマスのデコレーションというわけではなく、目的はとてもシンプル。
「街を行き交う人々に優しさやユーモアを与えたかったから」
行き交う人々は口々に「かわいい!」「日々に幸せをもらたらしてくれる!」などと言いながら一緒に写真を撮ったり、ハグをしたり、フィリップさんの思惑通り。
街の人々に笑顔が広がり、あっという間に街の人気ものになったのでした。
フィリップさんはその後、近くのレストランや商店にもテディベアを贈り、じわじわと広めていったのだそうです。
パリ中にこのクマさん現象が広がることになったのは、2020年春のロックダウン時。
街は全て閉鎖され、住民は1日に1時間、半径1km以内しか外を歩くことができないという厳しい時期でした。
フィリップさんは、そんな厳しい時期だからこそ、人々の繋がりを強くさせ、パリの街を盛り上げなければいけない、と、クマさん運動により力を入れたそうです。
書店のショーウィンドウでテレワークさせてみたり、カフェでお客を待つ姿を演出したり・・・。
そんなかわいい姿がSNSなどで拡散されるようになり、ロックダウンが明け、カフェやレストランの営業が再開されると、レストランの椅子にクマを座らせてソーシャルディスタンスを取るお店が出てきました。
再び秋のロックダウンでカフェやレストランの営業が禁止されますが、その頃には、パリ中のカフェやレストランのオーナーが、クマさんをお店に座らせるようになっていたのでした。
クマさんたちは、お客さんを迎え入れることができなくなったカフェやレストランの席を埋めることで、その場所に小さな命を保ち続けていたのです。通りがかった人々に、「いつか日常が戻る日まで、この場所をしっかり温めて待っていますからね」というメッセージを伝える手段であり、殺伐とした街の光景に温かさを添えるデコレーションにもなったのでした。
すっかりパリの景色の一部となったこのクマさんたち。厳しい日常にも優しさやユーモアを忘れないでほしい、フィリップさんが仕掛けたクマさん運動は、今日も忙しいパリジャン、パリジェンヌにしっかりと愛を届けているのです。