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パリ最新情報「頑張るブキニスト、存続をかけたパリ市の試み」 Posted on 2021/11/21 Design Stories
400年の伝統を持つ、パリのセーヌ川沿い古本屋ブキニスト。
そのブキニストたちが今、存続の危機にさらされている。
合計でおよそ900軒の「緑のボックス」が存在するものの、現在開いているのはたったの18店のみ。
2019年のノートルダム寺院の火災から客足が遠のき、コロナ禍で絶体絶命の窮地に立たされているというのだ。
セーヌ河岸を歩いていると、川沿いに屋台のような古本屋を見かける。
パリを旅行された方なら一度は目にするであろう光景だ。
その歴史は実に古く、16世紀から始まっている。
そして1606年にパリのポン・ヌフが完成すると、橋の上にブキニストたちが店を構えた。
開いている店の多くは今でもポン・ヌフ周辺に集まっている。
古くは「違法な露天商」として扱われていたものの、1859年には決められた場所での営業が正式に認めらた。
2019年2月からはフランスの無形文化遺産にも登録され、「パリの風物詩」として街に溶け込んでいる。
またブキニストには出店料の徴収や収入課税も免除されており、パリ市によって営業が守られている。
ブキニストになるのにも公的な認可が必要で、以前はかなりの高倍率だったという。
最盛期にはセーヌ河岸の約3キロに渡って店が並び、約20万冊の古本が置かれていた。
商売っ気のなさもまた魅力といった感じで、誰もが自由に、気兼ねせず立ち寄ることができる。
どの季節にも合う深緑色のボックスはセーヌ川と一体化していて、あるのが当たり前だと思っていた。
しかし、無形文化遺産に指定されているにも関わらず、客足も出店者も離れ始めているというのが悲しい現実だ。
今年10月からは市の公式ホームページでブキニスト専用のオンラインショッピングを開設(マージンなし)。
彼らが売る古本を中心に、1000点以上ものアイテムがパリ市のサイトで買えるようになった。
同時に人材募集、そして店自体の買い手を募るフォーマットも作り、これは2022年2月18日までサポートが続けられるという。
しかしパリ市によると、11月半ばの時点で応募があったのはわずか12組のみ。
依然として厳しい状況が続いていると公表された。
ブキニスト組合の会長であるジェローム・カレー氏はこの事態について、「ブキニストのないセーヌ川は、ゴンドラのないヴェネツィアのようなもの。古本屋のないパリを想像できない。私は人々の無関心が何より怖いです」と語っている。
なお、カレー氏はパリ市の公式ホームページを借りて署名活動も開始した。
「書店の経営危機やマルチメディアとの競争、ますます広がる教育の欠如と直面するなか、我々に注目が集まる日が来るのを望んでいます。古本屋は知識も多く、彼らと会話することも魅力なのです」とし、ブキニストの存続に邁進している。
ブキニストで売られている古本は一般的に割高のものが多い。
しかし、パリの文化を愛する人にとって、希少な価値を持つ本やポスター、古い雑誌を発見しつつセーヌ川沿いを散歩するのは、やはり気持ちが良い。
失って初めてその大切さが分かる、というが、ブキニストもそうした存在なのではないだろうか。
コロナがこれ以上文化を破壊しないよう願っている。(ル)