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パリ最新情報「ダイヤモンド婚を迎えた、フランス人夫婦の愛」 Posted on 2021/10/22 Design Stories  

高い離婚率、多様化するカップルの形。現代フランスの家族構造は複雑なケースが多い。
そんな個人主義を追求するフランスにおいて、60年という長きに渡って愛を貫く夫婦が存在する。

銀婚式や金婚式をお祝いする習慣は日本にもあるが、このしきたりはもともとヨーロッパから始まっている。
フランスはそのなかでも種類が多く、結婚1周年から100周年までなんと84種類もの結婚記念日が存在するという。
(例:1年目は綿婚式、10年目は錫婚式、100年目は“水”など)
そしてフランスでは、50周年を迎えると各自治体でもう一度結婚式を挙げることができる。

パリ最新情報「ダイヤモンド婚を迎えた、フランス人夫婦の愛」



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パリ郊外に住むマルセルさんとジャクリーヌさんは、今年さらに長い60周年のダイヤモンド婚を迎えた。
今回、そのお二人に話を伺うことができたので、ここでご紹介したい。
映画のようなラブストーリーを歩んできた二人の絆は、ダイヤモンドのように硬かった。

パリ最新情報「ダイヤモンド婚を迎えた、フランス人夫婦の愛」



1934年生まれのマルセルさんと1939年生まれのジャクリーヌさんは、50年代にダンスパーティーで知り合ったという。
実は同じ会社で働いていたという二人だが、ジャクリーヌさんはマルセルさんの存在を知らなかったそうだ。

ところがマルセルさんは「会社に素敵な子がいる」と兼ねてからジャクリーヌさんを意識していた。
しかし、シャイなマルセルさんは、声をかけることができずにいた。
彼女がきっとダンスパーティーに現れるに違いないと信じたマルセルさんは、毎週のように地元で開催されるパーティーに顔を出したそうだ。(当時フランスではダンスパーティーが男女の出会いの場だったようで、各地で頻繁に開催されていた)

そして、とうとう会場にジャクリーヌさんの姿が。
マルセルさんは意を決してダンスに誘った。そして、二人が恋に落ちるのに数分かからなかったという。

あまりの衝撃的な出会いに、ジャクリーヌさんは彼の名前も仕事も聞くことを忘れてしまったそうだ。家に帰ってからそのことをひどく後悔したそうだが、マルセルさんは日を置かずに会社で声をかける。

後の妻となるジャクリーヌさんはその瞬間を「人生で最もロマンチックなひとときだった」と話してくれた。

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二人はほどなくして結婚、すぐに子宝にも恵まれた。
建築関係の会社に勤務していたマルセルさんはその後一度転職し、40代で自分の会社を立ち上げる。ジャクリーヌさんは結婚後も彼にゾッコンだったようで、3度の職歴すべてを夫と共にした。
マルセルさんも妻と子供のためにパリ郊外に不動産を購入し、総面積300㎡の一軒家を自力で建てた。

まるで映画の『きみに読む物語』のように一途な二人の愛。
今まで一度もその絆が揺らぐことはなかったという。

お互いのどこが一番好きですか?という問いには、「マルセルのロジカルな、筋の通ったところが好き」とジャクリーヌさんは答えてくれた。
一方、シャイなマルセルさんは「料理」とだけ答え、「料理以外も好きでしょう」と怒られていたところも微笑ましかった。

そして、60年間でいちばん嬉しかったことについては、「二人の出会い」とお互いが答えた。子供を授かったことも素晴らしいが、出会った時の感動がいつまでも忘れられず、そのまま60年が過ぎたという。

お互いへの疑問をそのままにせず、今まで徹底的に会話をしてきたという二人。
モットーは「喧嘩を寝室まで持ち込まないこと」。長引かせず、寝る前にすべてを解決させるのが秘訣のようだ。

逆にいちばん辛かったことといえば、マルセルさんが階段から落ちて怪我をしてしまった時と、ジャクリーヌさんが緑内障の手術をした時だそうだ。
お互いの健康が損なわれることが何よりも辛いと語る二人は、体調管理にも気を付けている。

パリ最新情報「ダイヤモンド婚を迎えた、フランス人夫婦の愛」



ジャクリーヌさんはロックダウン中に自宅の庭を往復し、外出することなく毎日2km歩いたという。今でも欠かさず外を歩き、足腰を鍛えている。そしてマルセルさんは大好きな赤ワインとスイーツを「控えめに」毎日楽しむことがコツだ、とニコニコしながら語ってくれた。

ライフスタイルの多様化が進み、パリでは夫婦の約半数が離婚すると言われている。
幸せの形は人それぞれなので、結婚が正解とは限らない。ただ今回、マルセルさんとジャクリーヌさんの本物の愛を目の前にして、一種のヒーリングセラピーを受けたような感覚になった。周りを癒す愛、というのが行き着く先なのかもしれない。

自分の人生を一本の映画にするとしたら、それはアドベンチャー映画となるのか、コメディ映画となるのか。このご夫婦は間違いなく、ラブストーリーになるのだろうな、と思った。(大)

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