JINSEI STORIES

退屈日記「甘党のぼくがなぜケーキを毎回、二つ買うのか。その謎に迫る」 Posted on 2021/10/04 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日のバスツアー&ライブは楽器搬入から片付けまで、・・・全部終わると、間違いなく、夜になるので、息子の昼と夜のご飯を用意しないとならず、ここはやはり、無難にカレーということになった。
朝、出かける前に、ご飯を炊いといてやれば、あとは自分で出来る。
二食、カレーというのが可愛そうなので、10ユーロを特別夕飯代金として支給し、カレーが嫌だったら、なんか好きなもの食べてな、父ちゃんは歌のお仕事やから、と言っといた。
でも、カレーライスに勝るものはない。彼は10ユーロをインマイポケット・・・。
残っていたら、ぼくが寝る前に食べればいい。すでに、腹が減った・・・。

退屈日記「甘党のぼくがなぜケーキを毎回、二つ買うのか。その謎に迫る」



で、今日、10月4日はきっとバースデイケーキとか食べる時間もないだろうし、買いにも行けないから(毎年、自分で買ってる、笑)、昨日、ピエール・エルメに行って、店員さんおススメの最新作のミルフィーユとノアゼットのタルトを買い、これを前夜祭的な感じで、息子と、分け分けして食べたのだった。
「ケーキ。食べる?」
半分ずつカットして、子供部屋に持っていったら、
「いらない」
とそっけない返事。
「マジか、ピエール・エルメなのに」
と言ったら、
「食べる~」
と、即、戻ってきた。なんやねん。

退屈日記「甘党のぼくがなぜケーキを毎回、二つ買うのか。その謎に迫る」



ぼくはここ最近、甘いものを買い漁っている。これは一種のストレスからきた病かもしれない。
ケーキ症候群と呼んでみよう・・・。
先日、ここで、紹介した、6区にあるケーキのセレクトショップ「フー・ド・パティシエ」は、家も近いし、週に一度は顔を出すので、ほぼ、常連となった。
ボンマルシェの近くにジャンポール・エヴァンの新店舗が出来たので、並んで、モンブランを買った。ダコワースを敷いてあるのが特徴なのだ。
一つ星レストラン「ES」のMARIKOが作るシュークリームはダントツに美味しい。
ここのきなこのシュークリームと抹茶のシュークリームは、もう、愛しているかもしれない。きな子ちゃーーーん!
ぼくのストレスを取り去ってくれる解毒剤でもある。←ごめんなさい。

退屈日記「甘党のぼくがなぜケーキを毎回、二つ買うのか。その謎に迫る」



他にもいろいろと、好きなケーキ屋さんに行っては買う、のが習慣化してきた。
ケーキを食べないと禁断症状が出る。
それくらい、ケーキが大好き。
ぼくは外食をほとんどしないし、お金のかかる飲み会とか行かない。一番贅沢しているのが、ケーキかもしれない。
一つで十分なのに、息子の分も、という言い訳で二つ買うのが常になって、息子に拒否られたあげく、結局、ぼくが二つ食べることもママあるが、そのママが、めっちゃ、嬉しい。
なんだ、喰わないのか、勿体ないなぁ、と言いながら、二つ食べる父ちゃん。ふふふ。
ケーキをアテにしながら、ウイスキーやラムをロックで飲んでいる。
結構、こういうおやじは珍しいかもしれない。気持ち悪い? そんなこと言わないで、自分も十分、わかってるんだから・・・。

退屈日記「甘党のぼくがなぜケーキを毎回、二つ買うのか。その謎に迫る」

※ ジャンポールエヴァンのモンブラン。



甘党なのに酒好き、という内臓面からするとあまりよくない習慣ではあるが、体重は50キロ台をキープして、62歳的にしては数値もいいし、健全なのだ。
たぶん、腹はそこまで出てないし、ライブに向けてきちんと運動もしているし、何よりも毎日、歌っているから、腹筋もそこそこあり、・・・ケーキは別腹なのである。
ユゴー&ビクトールも常連で、店番のあんちゃんに、ハロー、と言われるような仲。
アンジェリーナの店長は年配の紳士で、彼もぼくを知っている。ボンジュール、ムッシュ~、と言ってくれるのだ。
コンチシー二は若い女店員さんが、入れ替わり立ち代わりなので、覚えてもらえない。
でも、置いているケーキはだいたい同じ顔触れで、好き嫌いはあるけど、バニラのタルトがおいしい。
セドリック・グロエは、行列がすごいから、買いたくても買えなくなった。一度、大人気になると、人がどこからともなく集まって来るのが、ケーキの世界。消えるのも早い。
マレ地区のレ・トロワ・ショコラね、美味しいね、ふふふ、顔が緩んでしまう。
全くの新人でも、新しいケーキショップが出来たら、必ず試すほど、ぼくはケーキに目がないのである。ご存じだとは思いますが・・・。

退屈日記「甘党のぼくがなぜケーキを毎回、二つ買うのか。その謎に迫る」



しかし、自分の誕生日に、ケーキの話しをしているくらい、さみしいこともない。
ほんとだ、それはかなり、寂しいおじさんである。
ライブが終わったら、みんなで行きつけのカフェに行き、ケーキを注文して、食べればいい。そうだ、そうしよう。
フランスは、誕生日会は本人がオーガナイズしないとならない。なぜか、そういうルールがあるのだ。
実は、内緒にしておいたけど、バスツアー&ライブを自分の誕生日にぶつけたのには、理由がある。
どうせ、息子は祝ってくれないし、たぶん、今現在、なんも言わないところからすると、彼は、記憶の片隅にすらないはず・・・。
寂しい一日を過ごすより、ミュージシャン仲間たちと、それと日記の読者の皆さんとか、と(笑)、一緒に過ごせればいいな、と思ったのだ。
「自分の誕生日にイベントをやるなんて、なんて寂しい男なの」とか言わないで。
子育てで忙しいし、更年期障害気味のぼくにとって、一年で一日くらい、心から楽しい日があってもいいよね、という、甘えでもある。甘党だけに、えへへ。
ともかく、今日は、余計なことは考えず、精一杯歌ったろう!
甘党万歳!!!

つづく。

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