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パリ欧州情報「お惣菜新作発表 ルノートル」 Posted on 2021/09/26 Design Stories
秋分を迎え数日。
共に四季を巡らせ、地球の反対側にありながら同じ時期に同じ季節を迎える日本とフランスは、隣にいなくとも同じ方向に歩む同士のよう。
今どちらの国からも美しい秋の便りが聞こえています。
日本では芸術の秋、スポーツの秋、読書の秋、食欲の秋と言いますが、フランスに同様の言葉があるとすれば最後の一つだけ。
しかし「食欲の秋」ならぬ「美食の秋」。
フランスでは芸術もスポーツも読書も通年のこと。
けれど「美食の秋」と言えるのは実りの季節だからです。
毎年9月4週目には国をあげての「美食の祭典」も行われます。
美食の国と言われるフランスですが、毎日三食美食を堪能しているわけでは勿論ありません。
けれど例えば週末に親しい友人を家に招待し、一緒に美味しいものを堪能するのはフランスの文化、習慣の一つ(日本はその代わりに贈り物の習慣がありますね)。
そんな友人を呼んでの食事会は、それが気軽なものでもフルコース。バーベキューの時だって例外ではありません。
とはいえ三ツ星レストランのようにかしこまったものでは無く、コース=食べ物を順番にゆっくりと頂くというわけです。
始まりは前菜、ではありません。
その前にアペリティフがあります。
アペリティフは訳せば食前酒ですがフランスではナッツやオリーブ、カナッペ、ミニパイ等の食べ物付きの総称。
これをソファーに沈んで、又は立ったままで1時間くらい。
それからテーブルについてワインが注がれ、前菜、主菜、デザートと順に続き、それで終わりではなく、最後にお茶かコーヒーに、チョコレートやミニサブレなどを頂きながら…お喋りに花を咲かせ続けます。
そしてそのお喋りには出されたお料理が必ず一度か二度、又は三度、話題に登るのです。
お家ごはんに招待したりされたりの文化の中で、美味しい食べ物が育まれていくのは当たり前。
お料理をするのは女性だけではありません。
料理は男子担当ということも多く、女性ならキッチンでエプロンを外してお化粧を直して皆のいるテーブルに着くのに、なぜか男性家庭シェフの場合、彼らの多くが、僕が料理担当ですよ!とばかりにトーション(布巾)を手に、エプロン姿で皆を出迎え、居間に入ることが多いのは微笑ましい限り。(筆者女性)
しかしフランス人にだって料理が苦手な人はいます。とは言え、友人8人、自分たちを入れて10人を‘代わりにレストランにご招待’とは余りなりません。
フランス人にとっては「お家ごはんに招待する」ことに「心を開いています」のジェストがあるのです。
では料理の苦手な人たちはどうしているか?というと、そのためと言ってもよいお惣菜屋さんという強い味方があります。すでに調理された四季折々の素材を使った食品が並ぶお店。
今年もそんなフランスの高級お惣菜屋さんたちが、お家ごはんのクライマックスでもあるクリスマス(フランス人が大切にする家族が集まるの一大行事です)を視野に入れた、お惣菜やデザートの新作を発表し始めました。
フランスにも日本同様、秋、冬の定番料理がありますが、そこにシェフのこだわる今年の新しい味を入れるのが、フランスの高級お惣菜屋、お菓子屋の特徴。
それは最新モードが発表されるのと同じように、9月の中旬に様々な高級お惣菜屋、お菓子屋がほぼ一斉に、冬への新作を発表します。
例えば、1957年創業以来、フランスのお惣菜屋とお菓子屋のトップを走り続けるルノートルの新作はこんな感じ。
冬の料理でありながら、フランスの南、プロバンスからインスピレーションを受け、この地の素材や風習を取り入れた、新しい味覚の逸品たち。レモンのリゾット、肉や魚料理には南フランスの柑橘果物を使ったソース、太陽の匂いさえしてきそうなバジリコのアクセント…。
これを生み出したシェフ、エリック・フィノン氏とクリエーションディレクター、ギー・クレンゼール氏は国家最優秀職人(日本でいう人間国宝)章を持っています。
お皿からそっとフォークにのせた、見慣れない色のソースのかかった一切れの魚とその上にのった小さな野菜を、まずしっかり見つめて、匂いをかいで、そして舌にのせて、胃におくる、その時間のなんたる長さ、を、またこの秋冬も愉しみましょう!
(ア)