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パリ最新情報「仏ケリンググループ、毛皮の使用全廃へ」 Posted on 2021/09/26 Design Stories
9月24日、フランスの高級ブランド大手、ケリングは2022年の秋冬コレクション以降、同グループのすべてのブランドにおいて毛皮の使用を停止すると発表した。
ケリングでは2017年より傘下のグッチ、バレンシアガ、ボッテガ・ヴェネタなどが毛皮の使用を停止することを発表していたが、サン・ローランとブリオーニだけが現在も使用を継続していた。
今回、ケリングのフランソワ=アンリ・ピノー会長は声明で「すべてのコレクションで毛皮の使用を中止し、さらなる一歩を踏み出す時がやってきた。世界は顧客とともに変化しており、高級品も当然適応しなければならない」と宣言。
同グループ、開発ディレクターのマリー=クレア・ダヴェウ氏もまた、通信社AFPのインタビューで「社会的なインフルエンサーである私たちは、トレンドを立ち上げるにあたって、持続可能を実現することが責任の一部であると考えている」と答えた。
ファッション業界は、化粧品業界、自動車業界とともに世界の3大汚染産業とされている。ファッション業界をリードするケリングは、この分野でもイニシアチブを取っていくことになるだろう。
ファーフリー(動物の毛皮を使用しない)に限らず、クルエルティフリー(動物実験を行わない)やヴィーガニズムなど、持続可能性や社会的責任に対する消費者の意識は高まる一方だ。
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フランスも例外なく動物愛護の精神が強い。
フランスでは、SPA(La Société Protectrice des Animaux【動物保護協会】)、30 millions d’amis、ブリジット・バルドー財団がメインとなり、動物の救助活動を行っている。
2020年6月には、SPAと高速道路会社APRRがコラボしたキャンペーンが話題となった。
動物に優しい環境作りに取り組む一方、ペットの遺棄がゼロというわけではない。残念ながら、フランスではその多くが高速道路脇やサービスエリアで発見されるそうだ。
そこで立ち上がったのがAPRRである。
APRRは、公式SNSで啓蒙動画が1回シェアされるごとに、SPAに支援資金として1ユーロの寄付を行った。結果、保護動物用のおよそ8万食分にあたる金額(約4000ユーロ)が集まったという。
新型コロナウィルスによるロックダウンの関係で、APRRとSPAの保護活動は一時停止となったものの、期間中も約2000頭の犬猫を救助し、新しい飼い主のもとに届けるという実績を上げた。
フランスでは動物の里親になるにも厳しい書類審査がある。
保証金は150ユーロ、書類審査を通過した人にはSPAから電話が入り、選んだ動物の里親としての適性を審査される。
コロナ禍でペットの需要が増えたことを受け、SPAでは「ペットの養子縁組とは一時的な娯楽ではなく一生のもの」と引き続き注意を促している。
2021年1月には、フランスの議会でペットの店頭販売を禁止とする法案が可決された。2024年からは犬猫の店頭販売が原則禁止、ネット販売はプロのブリーダーに限られる。
今後は、優良ブリーダーから購入する、もしくは保護施設・シェルターなどから譲り受けるの2択になっていく。
近年、高級ブランド各社で進む「アニマルフリー」。
エルメスではキノコ由来のフェイクレザーの採用に乗り出すなど、新たな研究も盛んに行われている。
地球環境に配慮した「エシカル」消費を支持する声とともに、動物由来の素材を使用しないファッションがこれからの主流となりそうだ。
今回、毛皮の全撤廃を発表したケリングは、何年も前から自社の最優先すべき課題としてサステナビリティの向上を掲げている。欧州ではこの考えが随分と浸透しているが、サステナブルな暮らしを単なるトレンドと捉えず、これからも地球にかかる負荷を減らしていきたい。(オ)