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滞仏日記「今、ぼくは南仏に向かうTGVの中でこれを書いている」 Posted on 2021/09/10 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、朝の6時に目覚ましが鳴り響き、息子のご飯をちょっと整理し、というのは、昨晩、2人で近所のスーパーに4日分の食材を買いに行ったのだけど、なんか「冷凍とかレトルトはちょっと飽きたから、自分で作りたい」と言い出したのである。
で、彼の得意料理はカルボナーラ! まだこれしか出来ない。料理に使うラルドン(ベーコン)とかパスタとか卵なんかを買った。他にひき肉とかハムとか野菜とかジュースとかも。足りない分は自分で買いなさい、とお金を少し渡しておいた。

滞仏日記「今、ぼくは南仏に向かうTGVの中でこれを書いている」

滞仏日記「今、ぼくは南仏に向かうTGVの中でこれを書いている」



朝の8時にパリ右岸のリヨン駅に到着、一時間早く着いたので、カフェでカフェれタイム。駅で、コーヒーを飲むと旅が始まる予感がする。
「ボンジュール。辻仁成の秋ごはん」で撮影を担当するカメラマンの小田さんら撮影スタッフと合流し、TGVに乗り込んだ。
今回、「地球カレッジのプロバンス散歩」がメインだけど、どうせなら、その模様もドキュメンタリーにしよう、ということになった。
ホームに入る時に衛生パスの提示、車内ではマスクが義務だった。車内は新幹線に負けないモダンな作り・・・、快適であった。

滞仏日記「今、ぼくは南仏に向かうTGVの中でこれを書いている」



斜め前の席に、小さいお子さんとお母さんがいて、二席とっているのだけど、「マモン? こっち来てー」とお子さんが甘えて、お母さんが横にしたアジア人の人と席を変わってもらい、その人はぼくらの横にやってきた。
「日本の方ですか?」ときかれ、びっくり。ああ、狭い世界ですね、となった。
男の子はずっとお母さんに語り続けている。静かな車内に子供の声だけが聞こえている。お母さんは子供の耳元で優しく諭している。やりとりがむっちゃ、可愛い。うちの子にも、こんな時期があったっけかね・・・。えへへ。
なんとも温かい車内の光景である。みんな南に向かっているのだ。パリはどんより小雨が降り、暗い。南が晴れていることを願う。
明日、明後日は天気予報によると快晴なので、生配信が楽しみでならない。

滞仏日記「今、ぼくは南仏に向かうTGVの中でこれを書いている」



今回の旅は、プロバンスでシャンブルドット(フランスの民宿)を経営する町田さんご夫婦に会いに行く。DSが出来た頃からの初期のライターさんで、プロバンスでは有名な案内人のスペシャリストである。「若かりし頃、ECHOES聞いてました」とのことで照れた、笑。
ご主人のダビッドさんにぼくが南仏料理(多分、ラタトゥイユと野菜のグラタンかな)を習うというのがもう一つの目的。
これはNHKの番組の方でご紹介できればと思っている。地中海人に嫁いだ日本人妻である町田さんとダビッドを通して、まずは、フランス風の夫婦や家族の在り方を学んでみたいと思う。
そして、実ははじめてのプロバンスの田舎町を堪能してみたい。フランスの民宿も紹介したいし、出会いもあるだろう。
ぼくはギターを持ってきているので、路上でライブもやりたい。←マジか!
とまれ、旅は予定調和にならないことが大事だ。わくわくしながら、TGVの中で、新しい出会いへ思いをを馳せている。

つづく。

滞仏日記「今、ぼくは南仏に向かうTGVの中でこれを書いている」



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