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パリ最新情報「オルセー美術館で感じた芸術の秋」 Posted on 2021/09/07 Design Stories  

セーヌ川沿いにあるオルセー美術館は、印象派の殿堂とも言える場所。
パリの廃駅と名画のコラボ、この趣深さが人を惹きつけてやまない理由かもしれない。

普段はそうでなくても、海外旅行に出かけるとついつい訪れてしまうのが美術館である。
パリは「芸術の都」として君臨して久しいが、フィレンツェでもなく、ロンドンでもニューヨークでもない、なにか圧倒的な吸引力を持っているように感じる。

中世から継続的に優れた美術作品を生み出し、加えて19~20世紀にかけて印象派の爆発的な力を持った街。これは世界広しと言えど、パリだけなのだ。

パリ最新情報「オルセー美術館で感じた芸術の秋」



パリのいくつかの美術館は、毎月第一日曜日に無料デーとなる。
「もっと文化に触れてほしい」と2000年に打ち出されたフランス文科相の計らいだったのだが、結果として訪問者の大幅な増加につながった。
フランスでは毎月第一日曜日は「文化の日」というイメージが定着している。

パリ最新情報「オルセー美術館で感じた芸術の秋」

そんな初秋の日曜日、印象派の楽園には多くの人が集まった。
現在は無料デーも完全予約制となっている。オンラインで事前予約が必要なものの、入り口付近に行列をつくることもなければ、人混みに合うこともない。衛生パス(ワクチン2回接種証明もしくはPCR陰性証明)のチェックのために5分ほど並ぶだけで、すんなりと入館できる。

常に世界でトップ10に入るほどの集客力を見せるオルセー美術館、その企画展はいつも切れ味があって面白い。しかし桁外れな魅力を放つのは、やはり常設コレクションではないだろうか。モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホなど、私たち日本人にも馴染みのある作品が多く、出会えた時の感動は他に例えようがないほどだ。

印象派は「自然光」を操った作品が多い。
この日はそんな「光」を操った、オルセー美術館の傑作3点を訪れてみた。



パリ最新情報「オルセー美術館で感じた芸術の秋」

まずはルノワールの「ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレットの舞踏会」。
19世紀末、パリのモンマルトルの庶民の様子を描いたものだという。
木漏れ日、女性の衣装、人々の表情などから心地よさが伝わってきて、絵のなかに飛び入り参加したくなる。ロックダウン直後のパリのイメージとも重なって、少し心がふっくらした。今も昔も、パリにはカフェの風景がよく似合う。

ルノワール自身は「私の絵は喜びにあふれ、陽気で、愛らしくなくてはならない」と語っていたそうだが、150年後もこうして最前線で人を喜ばせるとは、本人も思ってみなかったことだろう。

印象派の色合いはフランスの光そのものだ。
特に光の強さが弱くなる今の時期、その美しさが際立つ。先ほど歩いたセーヌ河岸の木漏れ日に「ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレットの舞踏会」の光が重なって見えた。



パリ最新情報「オルセー美術館で感じた芸術の秋」

そしてモネの「日傘をさす女」も素晴らしい。
「日傘をさす女」はモネの、早逝した妻カミーユとの美しい思い出を回想したものだという。よく見ると表情が描かれておらず、完全に風景と一致している。
「最愛の人は風景とともに生き続ける」というモネの切ない心情が表れていて、さながらジブリ映画の「風立ちぬ」のようだった。

風を感じさせる筆運び、躍動感、構図なども見事で、もしモネが現代に生きていたら凄腕のカメラマンになっていたかもしれない。
とにかく色彩が優しく、人物像を描くことが少なかったというモネの作品のなかでもとりわけ愛情にあふれた一枚だ。

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最後にゴッホの「ローヌ川の星月夜」。
これはゴッホが南フランスに滞在していた時のもので、夜のローヌ川を背景に、愛し合うカップルが描かれたロマンティックな作品である。

先の2つの作品とは違い、夜の風景というのがゴッホらしい。ゴッホにとって、夜は昼にも増して色彩豊かな世界だったという。
夜空にうるむような星の光、方角を示す北斗七星など、この絵には「これから理想の画家生活を送ろう」と夢見るゴッホの幸せな心が投影されている。
秋の夜長に合いそうな、本当に素敵な作品だ。

パリ最新情報「オルセー美術館で感じた芸術の秋」



名作が勢ぞろいするオルセー美術館は、今年で開館35周年を迎える。
この美術館は、絵にさほど興味のなかった人も美術好きに変えてしまう、魔法の力を持っているのかもしれない。観たあとの満足度も別格だった。
眼下に広がるセーヌ河岸では、日曜日の昼下がりを楽しむ人々で賑わい、その表情はみな生き生きとしていた。この日はパリの光が特別なものに見えた。(大)

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