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パリ最新情報「モノの価値を使い切る。ゼロウェイスト活動が加速するフランス」 Posted on 2021/08/06 Design Stories  

「無駄」「ごみ」「浪費」をなくすという「ゼロウェイスト」活動が、3度のロックダウンを経験したフランスで加速している。

外出制限やレストラン閉鎖といった不自由で不安な生活が1年以上も続いたので、自分の生き方や地球環境に目を向ける時間は当然増えた。レストランに行けないので食べる手段は自炊だけだったし、ほとんどの人が料理に工夫を凝らした期間だったのではないだろうか。

ただこのロックダウンは、「食品ロス」について考える良い機会でもあった。フランスでは今、食品レスキューアプリ「Too Good To Go」に熱い視線が注がれている。

「Too Good To Go」というアプリは、2015年にデンマークで始まった。現在ヨーロッパを中心に15カ国で展開され、4000万人近くのユーザーを抱える。2016年から今までになんと7650万食がレスキューされたという。具体的には、 レストランやスーパー、パン屋などで賞味期限切れ間近だったり、パッケージが破損してしまったりといった「食べるには問題ない食品」が元の販売価格の3分の1程度で手に入るというものである。

パリ最新情報「モノの価値を使い切る。ゼロウェイスト活動が加速するフランス」



まずアプリをインストールしたら、ユーザー登録をし、国を選ぶ。半径3㎞以内、5~30㎞以内で店舗リストがマップ上に表示されるので、現在地から加盟店を表示し、食品ロスのある店舗を探す。

予約をした後はネットで支払い、指定時間に実店舗へ受け取りにいく。あくまでも余剰食品を無駄にしないことが目的なので、食材をリクエストすることはできないが、例えば2人暮らしで2食分4ユーロ(約520円)であれば家計にも優しく、嬉しいことしかない。

加盟店には大型スーパーのモノプリ、オーシャン、人気パン屋のポールなどが名を連ね、最近では市場の魚屋や肉屋、花屋なども参加。顧客と余剰食品がある店舗をつなぐ「Too Good To Go」は時代のニーズとぴったり合っている。

食品を焼却処理する際に排出されるCO2は、地球温暖化の要因となる温室効果を助長する。 今日では平均して一人当たりおよそ茶碗一杯分の食品ロスが発生しているということなので、これは今すぐ取りかかるべき行動であると言える。

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またフランスのゼロウェイスト活動は、衣食住の「衣」の分野でも広がりを見せている。
というのも、服に第二の命を与える「リサイクルポスト」の利用が急増しているからだ。

これは要らなくなった服や靴、バッグを投入する回収箱なのだが、パリ市をはじめ各自治体が運営している。その数はフランス全土で約44,000個。使えるものは古着として再販され、使えないものはリサイクルされクッションの中綿や断熱材として使われたり、リサイクル繊維として生まれ変わるという。

ここ最近、リサイクルポストを利用する人が急激に増えた。多くの人がロックダウン中に家の整理整頓をしたのだと思うが、場所によっては回収箱に入りきらずにあふれている所もある。

ご存知の方も多いかもしれないが、フランス人は服をなかなか捨てない。ボロボロになっても捨てることはなく、お直しに出して長く着ることが多い。母から娘へ、父から息子へ、さらには祖父母から孫へと、思い出とともに伝わっていく。「エコ大国フランス」と言われて久しいが、フランスの国民性と「サステイナビリティ」の相性がとても良いことに気づいた。食品ロスの件もしかり、この相乗効果があってエコフレンドリーの精神がここまで浸透しているのではないかと思う。これにポイ捨て癖が解消されれば街はもっと綺麗になる。

パリ最新情報「モノの価値を使い切る。ゼロウェイスト活動が加速するフランス」



フランスはコスメ大国でもあるが、実は化粧品業界は自動車業界、ファッション業界に次いで世界第3位の汚染産業である。これを踏まえてフランスの化粧品業界では、持続可能な製品開発、容器リサイクルの啓蒙を急いでいる。

化粧品メーカー最大手の仏ロレアルは「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」を考慮したビジネスモデルに転換すると発表。

新たなサステナビリティ目標として、2025年までに全世界の拠点を100%再生可能エネルギーに移行すること、2030年までには全てのパッケージのプラチックをリサイクル可能もしくは植物由来に切り替えることを宣言した。

ロレアルのジャン=ポール・アゴン会長兼CEOは、「新型コロナウィルスによって世界は危機的状況にさらされたが、さらに危機的な状況をもたらすのが気候変動である。2013年からロレアルは、環境の危機的状況に対応するため、サステナビリティと企業責任を果たすことに取り組んできた。これから新たな変革の時代に入るだろう。」と述べ、このパンデミックを通してサステナビリティへの取り組みが加速するとの見方を示している。

パリ最新情報「モノの価値を使い切る。ゼロウェイスト活動が加速するフランス」



パリ発のコスメセレクトショップ、セフォラでは使用済み香水ボトルや化粧品ケースの回収が積極的に行われている。セフォラの店舗にあるリサイクルボックスに容器を投入するというシステムで、香水ボトルは新たなボトルとして生まれ変わり、プラスチックのチューブ・パレットはペットボトルや布繊維にリサイクルされるという。

セフォラではこのゼロウェイスト活動を「美の無限の力」と称し、消費者のサステイナブル意識を促している。大手ファッションブランド、シャネルも同様、香水ボトルのリサイクルに力を入れている。

ただ、このような企業努力だけでは地球温暖化をストップさせることができない。ゼロウェイスト活動やオーガニック製品は「意識高い系」と揶揄されることも多いが、普段の暮らしに根付いた存在にすることが理想である。

洋服1枚を買い控える、容器をリサイクルに出す、茶碗1杯分の食品ロスを無くす、など、毎日少しのことを「気にかける」だけでもエコにつながる。便利でスピーディーな物が逆に「持続不可能」になる時代。これからは人間も、地球と一緒に綺麗になることが不可欠となりそうだ。(大)

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