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ロンドン最新情報「ワクチン接種に応じない選手を説得するBOA、他」 Posted on 2021/06/29 Design Stories
イギリスのマット・ハンコック元保健相は、側近の女性とキスしている写真が先週大衆紙に掲載されたのを受け、27日に辞任した。
43歳のハンコック氏は既婚者で3人の子どもがいるが、辞任理由は不倫ではなく、自らが国民に呼びかけていたソーシャルディスタンスの規定を守らなかったことだ。
直ちに解任しなかったボリス・ジョンソン首相に対し、コロナウイルスの死者の遺族団体や野党からは批判の声が上がっている。
後任のサジド・ジャヴィス保健相は就任直後、「できるだけ早く規制を緩和したい」と発言した。
28日夕方には、かねてからの発表通り「7月19日にロックダウンが終了できない理由はない」との見方を示した。
イギリスでは感染力の強いデルタ株が猛威を振るい、ワクチン接種が済んでいない若者を中心にコロナウイルス感染者数が増え続け、28日には1月末以来はじめて2万人を超えた。
しかし死者の数は非常に少ないレベルにとどまっていて、この日も3人だった。
高齢者を優先して年齢順に進められてきたワクチン接種は、10日間ほど前から18歳以上の成人全員にまで広げられ、7月19日までには成人の3分の2に2回の接種を完了できる見込みだ。
政府は科学者の助言を受け、ワクチン接種に死亡率を抑制する効果が十分に見られていること、また接種計画が順調に進んでいることを踏まえて、今後は感染者が減少に転じるとの見方を示している。
週末はアーセナルのサッカースタジアムが大規模接種会場になり、接種者にはスタジアムの裏側公開という特典が用意され、マスコットの人形も「接種」を受けてアピールに努めるなど、全国各地で「ワクチン接種イベント」が行われた。
イギリスでは大規模なスポーツイベントやコンサートで感染状況を調べるパイロット実験の結果が発表され、「感染拡大はなかった」と結論づけられた。一部の科学者は、簡易検査による結果のため不確実だと批判しているが、7月にはサッカーのユーロ2020の決勝に6万人の入場が決定されている。
また、28日にはテニスのウィンブルドン大会が開幕した。
音楽・演劇業界からは、スポーツイベントばかりが優先されているとの批判が高まっている。
ミュージカルで有名な作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーは「6月21日に予定通り定員で公演を実行する、逮捕されてもいい」と発言していたが、結局規制に従っている一方で、政府からの新作ミュージカルのパイロットスキームへの協力要請は、「ウインブルドンなどのスポーツイベントが許可されている中で、演劇・音楽業界が平等に扱われるようになるまでは協力できない」と拒否した。
ジャヴィス保健相は、規制緩和の見通しを発表するとともに、「コロナウイルスとともに生きることを学ばなければいけない」と述べた。
今後、どれだけ「コロナ前の日常」に戻ることができるのかは、政府が国民の信頼を得られるように、すべての立場の人に公正な政策を打ち出していけるかどうかにかかっている。
一方、東京オリンピックに参加するイギリス代表チームは、副反応を恐れてワクチン接種に応じていない選手がいることを明らかにした。
イギリスオリンピック協会(BOA)のアンディ・アンソン会長はポッドキャスト「スポーツデスク」に出演し、イギリス代表選手370人のうち、9割以上が渡航前に2回の接種を済ませ、ほとんどの選手は少なくとも1回の接種を済ませる見込みだと述べた。
接種を拒んでいる一部の選手については、接種は強制ではないものの「接種は正しい選択だということを説得しようと試みている」と述べた。
さらに、東京会場の選手村について1万1000人収容の食堂で食事をすることなどを含め、「現時点でスポーツ選手にとっては最も過酷な環境かもしれない」と述べた。
できる限り他国選手との交流を避け、自国選手団の「バブル」の中で行動する方針だ。
日本でウガンダ代表選手らの感染が明らかになったことについて、イギリス選手について「そんなことはありえないと言うのは甘すぎる」と述べ、ウイルス検査によって陽性結果が出た場合は隔離用の宿泊施設に移されて出場停止となるリスクについては、「選手たちはよく認識している。他の大会でも同じように出場できなかった仲間を見てきたから」と述べている。
現在、イギリスからの日本入国者は、6日間の検疫を求められているが、イギリス選手については例外的に免除される。
入国後の3日間は他国や日本の選手と共同のトレーニングはできないとの規定だが、「いずれにしてもイギリス選手だけで準備を行う予定」だと明らかにした。
さらに「選手からは、このオリンピックをコロナ大会にしないでほしい、あくまでもオリンピック大会で、私たちが活躍するチャンスなのだから、と言われている」と述べ、代表選手が競技に専念できるように、舞台裏の関係者はコロナ対策を徹底して日本に渡るとの意気込みを示した。
日本政府は海外からの観戦者を受け入れない方針で、選手の家族や友人についても例外は認めていない。
アンソン会長はふだんとは違ったオリンピックになると認めつつも、中止になった場合は「B O Aにとっても、世界中の選手団にとっても、非常に困難な状況だっただろう」と述べて、敢行の決断について「私利私欲のためではなく、世界中のスポーツを持続させるため」だと評価した。(清)