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ロンドン最新情報「ついに一日のコロナによる死者ゼロを実現させた英国に学ぶ」 Posted on 2021/06/02 Design Stories  

 
イギリスでは6月1日、2020年3月以来初めてコロナウイルス感染による全国の死者の数がゼロになったと報告された。
マット・ハンコック保健相は、ワクチン接種計画の進展によりコロナウイルス感染で重症化する患者が減っている成果だと述べた。
6月の初日に死者数ゼロが記録されたことを受けて、保守党議員の一部は、政府の「規制緩和へのロードマップ」によれば早くて6月21日に計画されている規制撤廃を予定通り実施するよう、ボリス・ジョンソン首相への圧力を高めている。
ただし、週末には医療機関によっては報告が遅れることがあるため統計上の死者数が減る傾向があり、5月31日は祝日で連休だったことからも、この数字は慎重に受け止めるべきだとの声が強い。
さらに、インドで発見されたデルタ株が拡大して感染者が微増傾向にあることから、イギリスは感染拡大の第3波に入ったとの見方が科学者の間では有力だ。
デルタ株はイギリスで発見されたアルファ株と比べて30〜40%感染力が強いとみられる。
政府へのアドバイスを行う科学者のグループ「インディペンデントS A G E」に参加する一人で、バース大学のキット・イエーツ教授(数理生物学)はツイッターで「私たちは非常に不安定な状況にある」と述べ、「6月21日の規制緩和の条件が満たされていないのは明らかだ」と警告している。
また、ワクチン接種の見通しが立っていない5〜17歳の児童・生徒の間で感染者が増えているとのデータがあることも指摘し、学校での感染対策を強化するよう政府に求めている。
 

ロンドン最新情報「ついに一日のコロナによる死者ゼロを実現させた英国に学ぶ」

ロンドン最新情報「ついに一日のコロナによる死者ゼロを実現させた英国に学ぶ」

※ロンドンはやっと初夏らしい陽気に恵まれ、5月末の連休には多くの人が野外でくつろいだ。ただし海外旅行はしばらくお預けという人が多数派。
 



 
5月末までにイギリス全国で1回の接種を済ませた人は約3950万人、2回の接種を完了した人は2570万人に達した。現在、イングランドでは30歳以上の人がワクチンの接種対象になっている。
5月31日にはロンドン西部のラグビー場トウィッケナム・スタジアム(収容人数82,000人)が1日限りの大規模接種会場になり、18歳以上の人を対象に予約なしで接種を行った。
「デイリー・メール」紙ウェブ版(6月1日付)によれば、大規模野外音楽フェスティバルとして知られるグラストンベリー・フェスティバルを上回る若者たちの行列ができ、15,000本の接種が完了した。
ワクチン接種開始当初は、高齢者に比べて若者は接種に消極的な傾向があるとみられていたが、今回の大規模接種の人気はこうした懸念を覆した。
 

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一方で、スコットランドではニコラ・スタージョン自治政府首相が、スコットランド域内でゾーン別に実施している規制について、6月7日以降もエジンバラなど13の自治体でこれまでと同様の「レベル2」の規制を続ける方針を示し、「より多くの人がワクチン接種を完了するまで、注意深いアプローチを今行うことで、全体として正しい方向に進める確率を最大にすることができる」と説明している。
「注意深い(コーシャス)」という形容詞は、イギリスでコロナウイルス関連の規制緩和に関してキーワードになっている。
イングランドでは先月、「ハグ・コーシャスリー」つまり「注意深くハグするように」という勧告付きでハグが解禁された。
そもそも一部のヨーロッパ諸国に比べて濃厚なスキンシップの習慣がないイギリス人だが、「ハグ解禁」後も、街角で出会ってハグや握手をする人はほとんど見かけない。
 



 
イギリスは世界各国を信号のように「赤」「黄色」「青」の3色に分けて、それぞれに検疫や検査などの規制を定めている。
デルタ株の拡大については、ボリス・ジョンソン首相がインドを「赤」(渡航中止勧告)にする判断を遅らせたことや、ヒースロー空港内の入国審査の混雑と長時間にわたる待ち時間が批判されてきた。
ヒースロー空港は6月1日、「赤」の諸国からの入国者を他の入国者と接触させないための専門ルートを、第3ターミナルに設けた。
日本は「黄色」で、イギリス入国時は2回にわたるウイルス検査と自宅などでの10日間の検疫が義務づけられている。東京オリンピックについてはジョンソン首相が5月28日に開催を支持すると明言した。
一方、英メディアは全般に批判的な見方だ。
「ガーディアン」紙のジャスティン・マッカーリー東京特派員は6月1日のポッドキャストで「東京は本当にパンデミック・オリンピックを開催するのか?」と題する報告を行なった。
この中でマッカーリー氏は日本のワクチン接種計画の遅さは経済協力開発機構(OECD)加盟諸国で最悪であり、「カタツムリのよう」と説明。
さらに、選手が規制に従うとしても、メディアなどの関係者が世界中から訪れるため、「非常に魅力的で24時間眠らない都市」である東京ですべての人が規制に従うとは思えず、感染拡大や、ひいては変異株の発生により、「今後100年にわたって人類の愚行として記憶されるかもしれない」と悲観的な見方を示した。また、オリンピックのスポンサーでもある朝日新聞さえも、世論調査でオリンピックの中止や延期を求める声が大多数であると報じたと指摘している。
I O Cによる「日本人は原爆や地震、津波に耐えてきた国民だから、チャレンジに強い」「たとえ菅首相が反対してもオリンピックを敢行する」という趣旨の発言について、日本人は怒りの声を高めていると伝えている。(清)

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