PANORAMA STORIES
q.b.レシピのないレシピ帳~アスパラガスのリゾットとオムリゾ~ Posted on 2021/03/31 八重樫 圭輔 シェフ イタリア・イスキア
日本から桜の便りが届き始めると、イスキアの気まぐれな春の空も落ち着きを取り戻し、やわらかな風を吹かせるようになりました。
小さなテラスでは、ちょうど1年前のロックダウン中に挿し木をしたラベンダーが立派に成長して、かすかに揺れています。世界がすっかり変わってしまったように思えた去年も、こうして季節は巡ってきて、そして何事も無かったかのように過ぎて行きました。
イタリアではもうじき、カトリックの一大行事である復活祭を迎えようとしています(移動祝祭日で今年は4月4日)。復活祭とそれに伴う休暇中は各地で大規模な祭典が行われ、親戚や友達同士で集まり伝統料理を頂くのが一般的です。本来ならばレストランにとっても年に有数の繁忙期ですが、コロナの影響で期間中は全土で厳しい規制がしかれるため、去年に引き続き自宅で過ごすことになります。年が明けてから、働いたのはわずか3週間余り。しかも半日営業のみなので、以前は長時間の立ち仕事でガサガサにひび割れていた踵が、すっかりきれいに丸くなりました。ついでに顔もお腹も丸くなったのは頂けませんが。
相変わらず先行きが不透明な今後ですが、考えてみれば先行きが不透明ではなかった事などこれまでも無かったのかもしれないし、半ば呪文のように「今しかできないことを」とつぶやきながら日々有意義に過ごせるよう模索しています。さて、そんな生活の中、食事ができることは大きな喜びであり本当に有難いことだと実感しています。特に今の時期はたくさんの春野菜が出てきて心を軽やかにしてくれます。今回はその中から日本でもおなじみのアスパラガスを使ってリゾットを作りますので、どうぞ参考にしてみてくださいね。このさわやかな一品が、皆さんの生活のほんのちょっとしたアクセントになれば幸いです。
アスパラガスのリゾット
★材料(4人分)
○お米 320g ○アスパラガス 約400g ○白ワイン 100㎖
○バター 40g ○オリーブオイル q.b.(適量) パルミジャーノチーズ 30~40g
○塩 q.b. ○お好みのハーブなど(今回はコリアンダーシードを使用)
○玉ねぎ 50g
(補足)イタリアにはリゾット用のお米が数種類ありますが、日本では入手しにくいかと思います。今回は、普通はリゾットには用いられない、日本米にごく近いタイプのものを使用しましたが手順を守れば美味しくできます。お米を洗わないことに抵抗がある方は無洗米を使うと良いかもしれません。また、リゾットはブイヨンでお米を煮ていきますが、ブイヨンを作るには手間がかかります。顆粒や固形のものも売っていますが味が濃く、アスパラの風味を損なわないためにも今回はゆで汁を使って煮ていきます。
★作り方
①アスパラの根元部分の皮をむき、お湯に軽く塩を加えて数分さっと茹でます。軽く火が通る程度で結構です。補足にも書いたように、ゆで汁も使いますので捨てないで下さい。ゆで汁は弱火で常に熱々の状態にしておきます。
②アスパラをすくい上げて、茎の部分を適当な大きさに輪切りにします。オリーブオイルを入れて熱したフライパンで、塩少々を加えて2分程炒めます。
③鍋にバター20gとオリーブオイルをひとまわし入れ、みじん切りにした玉ねぎをしんなりするまで弱火で炒めます。玉ねぎが炒まったら中火にしてお米を入れ、表面が半透明になるまで1~2分程炒めます。油分でお米をコーティングすることにより、煮ても粒がしっかり残るようにするためで、この作業は重要です。くれぐれも炒めすぎて焦がさないようにしてください。
④次に白ワインを回し入れ、強火にしてアルコール分をとばします。アルコール分が飛んだら再び中火にし、アスパラのゆで汁をお玉2杯分ほど加えて煮ていきます。
その後も常にお米がちょうど浸かる位の量のゆで汁を加えながら、時々木べらで混ぜて煮ます。
⑤5分ほどしたら先ほどのアスパラを加えて更に煮ます。穂先は飾り用にいくつか別にしておきます。アスパラを炒めたフライパンにもゆで汁を入れて、うまみを残さないようにしましょう。
⑥お米が煮えると全体的につややかな感じになってきます。鍋を動かすと全体がタプタプと揺れるくらいの状態で火を止めます。残りのバターとパルミジャーノチーズを加えてよく混ぜ、1~2分程休ませて出来上がりです。お皿に盛り付けて、お好みでパルミジャーノチーズをかけます。
※お米の種類によりますが、煮る時間は大体15分前後、ゆで汁は1ℓ前後使います。
詳しく説明したため難しく感じるかもしれませんが、要領をつかんでしまえば意外と簡単です。他の具材を加える事もできますが、まずはシンプルにアスパラの味を楽しんでみましょう。
さて、更にここで僕の大好きなB級グルメをご紹介します。タイトルの一部にもあるオムリゾなのですが、僕が勝手にそう呼んでいるだけでイタリア料理には存在しません。余ったリゾットをオムライスのように卵で包むだけですが、これがまたトロトロで実に美味しいのです。前日のリゾットをレンジで温めても良いですし、あまりにパサつく状態なら小鍋に入れてお湯でのばすと良いでしょう。卵には砂糖と塩一つまみ、牛乳少々を入れ、バターをひいたフライパンで焼きます。あとはオムライスのようにリゾットを入れて包むだけですが、コツは卵を半熟状態で仕上げることだけです。特にこのアスパラのリゾットとは相性が良いので機会があったら是非試してみてください。
それではまた、普段着の食卓でお会いしましょう。
※タイトルのq.b.とは適量を意味するイタリア語quanto basta(クワント バスタ)の略です。細かいことは気にせず臨機応変に、あなたなりのレシピにして頂けたらという思いを込めて。
Posted by 八重樫 圭輔
八重樫 圭輔
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シェフ。函館市生まれ。大学在学中に料理人になることを決め、2000年に渡伊。現在は家族とともにイスキア島に在住。