JINSEI STORIES

退屈日記「雑感。コロナについて、ぼくが今、考えていること」 Posted on 2021/03/18   

某月某日、今日あたり、フランスは「週末ロックダウン」を宣言しそうだが、思うに、カステックス首相は早い段階でロックダウンをやりたかったけれど、世論のことを考慮し出来なかった、というところが本音だろう。
長引くコロナ制限下で、国民の感情はもう限界を超えている。
医療従事者はさらに厳しい。
極右と分類されている国民戦線のルペン党首とマクロン大統領の支持率が拮抗しているので、首相は、国民のこれ以上の反発は避けたかった、と思われる。
しかし、カリンヌ医師が予告した通り、3月になり感染者が急増した。
実はみんなわかっていたことで、その数字を国民に突き付けてある程度、仕方ないよね、というムードを作っての三度目のロックダウンということになるのであろう。
カステックス首相はかなり行動力のある人物で、それでも、フランス人を捌ききるのは至難の業だ。
オーストラリア人、ニュージーランド人とはわけが違う。なにせ、自由を発明した国の人たちだからだ。

退屈日記「雑感。コロナについて、ぼくが今、考えていること」



パン屋のベロニクと昨日、道端で立ち話をしたが、彼女いわく、
「大きな家に住んでいる人たちはいいけど、狭い部屋に大家族で暮らしてる移民家庭の方々が精神的に限界を迎えているし、そこから感染が広がっているので、心配なのよ」
と…。
フランスだけじゃなく、この生活環境の問題が、感染を広げる大きな原因の一つにもなっている。

退屈日記「雑感。コロナについて、ぼくが今、考えていること」



変異株の出現はコロナパンデミックの第二段階というよりも、新しい事態に人類が直面していることを物語っている。
PCR検査をすりぬけるウイルスが登場してきたということで、ワクチンもそのうちあっさりとすり抜けられそうだ。
この新型コロナはよく出来ている、と変な言い方だけど、ぼくは毎日、感心している。コロナが持っているメッセージを知りたい…。
だいたい、どうやってウイルスはPCRをすり抜ける知恵を持ったの? 
じゃあ、そのうちファイザーのワクチンくらい簡単にすりぬけるんじゃないか。
彼らの進化? というか変異速度に人類が追いつけるのだろうか? 
いたちごっこが相当の期間、続くような気がする。
すくなくともコロナはまもなく収束すると語っていた専門家たちは、変異速度やPCRをすりぬけるコロナの出現を念頭にいれてなかったはずで、当てにならない。
しかもアストラゼネカへの不安が欧州の人々にワクチンに対するブレーキをかけだしており、ワクチン接種スケジュールがくるう可能性も高い。
そういう一連の新しい出来事に目を向けると、まだまだ、このパンデミックははじまったばかりじゃないのか、と勘繰ってしまう。

退屈日記「雑感。コロナについて、ぼくが今、考えていること」



昨日、テルアビブの街から人々がマスクなしで、カフェやレストランで大騒ぎをする映像がフランスのテレビで流された。
若い司会者たちが、うらやましそうに、眺めていた。
フランスでは考えられない映像で、当然、その映像のあと、人々はフランス政府を批判した。
ぼくの友人のユダヤ人たちは、フランス人がアレルギーを持っているのに、当初からワクチン受け入れを表明しており、この日記にもよく登場するアリスさんは、75歳だけど、率先して打つ、怖くない、と豪語していた。
その通り、イスラエルは人口900万の半分がすでに接種済、まもなく、100%の接種率になるだろう。
しかも、ワクチン政策を当初からがんがん推し進めていたので、ワクチンはファイザーのみだ。
彼らはファイザーと取引して、全国民が治験のようなことをしているのだそうで、そのデータがファイザーにもたらされている。
どちらにしてもイスラエルらしい戦略だった。今のところ、功を奏している。
しかし、これは人口が900万人だからこそできることで、6000万人のフランス、その倍以上の日本ではこうはいかない。

退屈日記「雑感。コロナについて、ぼくが今、考えていること」



じゃあ、お前はどうする? ワクチンを打つのか、と問われれば、今のところ年齢的にも、アストラゼネカしか僕には選択肢がないと思われるが、打つだろう。
打たないと何もできない時代が目の前まで迫っている。ただ、今すぐじゃなく、もう少しだけ時代の動きを見つつというのが正直な気持ちだ。
何もなければワクチンなど打ちたくないが、ぼくの周囲は火事で、火の手が迫っている。目の前は崖で対岸へ飛ぶ必要があるが、対岸までの間には底なしの谷間がある、そういう状況なのだ。飛べる距離だけど、中には飛べない人も出てくる。
他の選択肢を模索しつつ、確実に飛べるタイミングを待っているというところだ。
フランス人はワクチンにもともと懐疑的な国民性だったが、それでも意識が変わってきた。マスクは絶対付けない国民だったが、今はほぼ着けている。
ワクチンパスポートが出来ても、ワクチンをすり抜けるウイルスが増えればこのパスポートの意味は失われる。
すべてのウイルスが変異し、PCR検査をすり抜けるようになったら、人類はお手上げだ。もはや、SF小説以上の速度で、世界は動いており、この激しい振れ幅の中で、ぼくは今日も可能な限りの幸福について哲学している。

息子が登校した。朝の7時42分ということである。さ、掃除でもしようかな。

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