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パリ最新情報「シドニーでゲイ・プライド、イスラエルでは野外コンサートが再開」 Posted on 2021/03/08 Design Stories
3月5日、イスラエルのテルアヴィヴでは野外コンサートが行われ、3月6日にはオーストラリア、シドニーで、ゲイ・プライドが行われた。大勢の人が集まる様子やマスクをつけた観客が踊りながらコンサートを楽しむ姿がテレビで流れ、今にも再ロックダウンが行われるか否かの瀬戸際に立たされているフランスは、その光景を指をくわえて眺めた。
シドニーで開催されたゲイ・プライドには、5000人がパレードに参加、約3万6千人が集まったという。ゼロコロナを目指し厳しいロックダウンを半年ほど続けたオーストラリアだが、その措置が功を奏し、シドニーや首都のあるニューサウスウェールズ州では48日間新規感染者ゼロの状態が続いている。そのため、このような大掛かりなイベントが、ほぼ普段通りに開催できたのである。
一方、イスラエルのテルアヴィヴのスタジアムでは、観客約500人を入れた野外コンサートが行われた。
このコンサートはテルアヴィヴ市が計画した4つのコンサートのうちの1つで、同市は今週、ワクチン接種者に向け徐々に文化施設、イベントを再開していくと発表。その記念イベントということになった。
「ワクチン接種者向け」と書いたが、これらのコンサートやイベントに参加するには条件がある。その条件とは、イスラエル保健省が発行したワクチンの証明書。ファイザー・ビオンテック社のワクチンを2回接種したことが記載されていなければならない。集まった人々はそのワクチン接種証明(アプリ)とコンサートチケットを手にし、「やっと普段の生活に戻ることができる!」と、満面の笑顔で会場入り口の列に並んでいた。
イスラエルは昨年12月、2021年3月末までに16歳以上の全国民(人口900万人のうち640万人)にワクチンを接種することを目標とし、世界最大規模のワクチン接種キャンペーンをはじめた。イスラエルはワクチンの有効性に関する医療データを引き換えに、ファイザー・ビオンテック社と数百万回分のワクチンを確保しているのだ。
その研究結果はすでに、2月24日のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(英語版)にて発表された。12月20日から2月1日までの間にワクチン接種した60万人近くのグループと、ワクチンを接種していないグループを比較。その結果、ファイザー・ビオンテック社のワクチンは、1回目の投与で46%、2回目の投与で92%の感染予防効果を示した。また、ワクチン接種は87%の入院、92%の重症化を防ぐことができた。これは非常に心強く、希望のある結果である。
現在、人口900万人のイスラエルは国民の半分以上である約500万人がワクチンの接種を終えている。まだワクチン接種をしていない人には電話をして接種を促しているそうだ。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、自国がコロナに勝利する日は近いとし、2月15日には50歳以上のすべてのイスラエル人が予防接種を受けた場合、「我々はコロナとおさらばできる」と発言した。50歳以上の国民のうち、57万人ほどが接種を拒否、または接種の呼びかけに応じていないらしく、それに対しユリ・エデルスタイン保健相は、「予防接種を受けることは道徳的義務である」、「予防接種を受けない人は放置される」などと厳しい見解を述べた。
すでにイスラエルでは今回行われたコンサートなど、スポーツや文化イベントにはワクチン接種証明の提示が条件となったため、申請先であるイスラエル保健省のサイトは一時利用できなくなるほどアクセスが集中しているという。バーやレストランの再開にもこのパスが必要になるとすれば、ワクチン接種は実質義務のようなもので、接種しなければ普通の日常生活を送ることができないという新しい世界が生まれる。
しかし、フランスでは、ワクチンに100%の有効性が認められていないことから、パスポートを作って安心するのは危険だという専門家の意見もある。フランス政府もワクチンパスポートの導入を検討しているようだが、今後も議論が繰り返されることは間違い無いだろう。
厳しいロックダウンを続けたオーストラリアとワクチンキャンペーンに力を入れたイスラエル。国の規模や国民性、プライオリティー、生活スタイルの違いがあるため、この2国がとったコロナ措置をそのまま他国、例えば日本やフランス、に当てはめる事はできない。各国の政府は自国民の命と経済をうまく考えながら国にあった措置を模索し続けているのだ。
それにしても、まだまだ収束の光の見えない国に住む者にとって、収束の光が差す2国の映像は羨ましい光景となった。