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熱血子育て日記「子育てが苦しいというあなたに、父ちゃんは応援歌を届けたい」 Posted on 2023/01/23 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、「子育ては自分育て」とはよく言ったもので、子育てを通してぼく自身、ずいぶんと逞しく成長させられたと思う。
一人の子を社会に送り出す経験は、生ぬるかったぼくという人間を鍛え直すのに役立った。
息子が成人し、大学生になったことで、ぼくの大役は今、終わろうとしている・・・。
ところで、そんなぼくのところに、「子育てが苦しくて」、という意見がよく届くようになった。
そりゃあ、大変なことである。
子犬を育てるのでさえも、大変なのだ。
子供を学校に行かせ、社会の荒波に押し出すのは並大抵のことじゃない。
思春期や、反抗期がある子供を大人にさせることは、想像を超える一大仕事なのである。
だから、苦しいのは仕方がない。
でも、やり遂げたなら、あなたはその瞬間、それまでの苦しみをこの上もない幸福に変えることが出来るのだ。

熱血子育て日記「子育てが苦しいというあなたに、父ちゃんは応援歌を届けたい」

熱血子育て日記「子育てが苦しいというあなたに、父ちゃんは応援歌を届けたい」



ぼくは息子にとって、どういう親だろう、と思うことがある。
かつて、ぼくが野心的に生きていた時、子育ては母親がするものだ、とある種の誤解を持っていた。
なので、子育てに関心がなかった。
不幸か幸いか今となってはわからないけれど、予期せぬ離婚があり、子育てをやらないとどうしようもなくなった時、ぼくは自分が子育てに関して、間違えたイメージを持っていたことを知った。
一人の子供を世に送り出すことが、どんなに重要なことか、気づかされていくことになる。

熱血子育て日記「子育てが苦しいというあなたに、父ちゃんは応援歌を届けたい」

熱血子育て日記「子育てが苦しいというあなたに、父ちゃんは応援歌を届けたい」



最初、子育てはちょっとめんどうくさかったし、仕事が出来なくなり、ぼくの人生を邪魔する障害物のように感じることもあった。
でも、そこに幼い子が生きる姿があり、校門の中へと歩いて行くその子の背中を見ながら、涙をこらえて生きる彼の姿を通して、そのうち彼が困惑しながらもぼくに親を求めている姿を知った時、どこからか不意に、この子を育て上げなければいけない、という母性に近い感情が芽生えたのも事実であった。
それは激しい困惑や葛藤の中に最初あった。
母性のないぼくにそれが務まるのか分からなかったけれど、子育ては待ったなしで、ぼくの人生を大きく変えたのだ。
食べさせなければならないし、学校に送り届けないとならないし、学校行事には嫌でも出ないとならないし、PTAにも、親との関係も、ありとあらゆる問題が降りかかって来た。
日本に逃げ帰りたいけど、フランスで生まれ仏語教育を受けてきた子をこれ以上混乱させられないので、ぼくはこの国で子供を自分の力で育てよう、と決断することになった。
仕事にしか興味のなかった自分を、一時期ではあるけれど、ぼくはある意味、葬り去ったのだ。
子育てをやるんだ。今は、それ以外考えるな、と自分に言い聞かせるようになる。
まずは、自分の野心や出世みたいなことは忘れよう、と決めた。お金は貯金を崩し、最低限でなんとかしよう、と思った。
仕事主義はここまでにして、この先、十年、この子と向き合おう、子供主義で行こう、と思ったのだ。
夢半ばだったので、悔しかった。
でも、それをやらないとこの子が死んでしまう、と思った。
親なんだから、つべこべ言わずにやれよ、と自分に言い聞かせた。働き盛りの時期だったので、本当に、辛かった。
でも、悲しみを必死でこらえる子供がそこにいた。

熱血子育て日記「子育てが苦しいというあなたに、父ちゃんは応援歌を届けたい」

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※ そんな子育ての大変な時期、フランスの日本人学校で、子供たちに「夢」を語った父ちゃんであった。えへへ。みんな、元気かーい。



そう決めたら、決めたことで、納得も出来た。
毎日のやらないとならないことをこなせるようになった。
たぶん、ぼくは修行をしているのだ、と思うようになったし、このトンネルを抜けられたら、きっとぼくは人間として成長できるかもしれない、と思うようになった。
いくつかの仕事を諦め、子育てに専念をすることになる。
映画も中止、ライブも中止、何もかも中止にした。
最初は力の加減もやり方も分からない子育てだったが、次第に、力の抜き方が分かるようになってきた。
短距離走のような子育てでは身体も心も持たないことがわかり、長距離走の走者のような気持ちに切り替えた。
のんびりと子供と向き合うようになってから、再び、自分の仕事が少しできるようになっていく。
余裕?
そうだ、子育てのコツがわかってきたら、やりくりしてできた時間を使って、自分の夢を再び動かすことが出来るようになった。
離婚から、数年後のことである。
自宅で出来ることをやればいい。作家業は、それに適していた。子供が寝てから、ぼくはパソコンと向き合うようになった。
そこから、デザインストーリーズというウェブサイトが誕生し、今に至っている。
この連載日記も、子育ての中から誕生したのであった。

熱血子育て日記「子育てが苦しいというあなたに、父ちゃんは応援歌を届けたい」

※ オランピア劇場でのライブを控える父ちゃんだけれど、離婚直後、カフェの片隅で、こんな子供たちを前に歌ったこともあったのだ。お客さんは数人であった。でも、あれがあったからこその今なのである。熱血~。大丈夫だ、負けるな!!!!



元祖、テレワーク人間になっていくのだけど、家事と育児と仕事は、すべて同じ屋根の下で、バランスよく振り分けられるようになっていった。
家事をしながらも、原稿を書くことが出来るようになった。
ツイッターも役立った。
小学生だった息子は中学生になり、中学生だった息子は高校生になり、高校生だった息子が志望校に合格する。
そして、大学生になった。
この経験で、つかんだ自信は、「時間がない」というのが言い訳に過ぎなかったことの証明へと繋がったし、修行や滝行に負けない自信をぼくに植え付けることになった。
なので、ぼくはいいたい。
ぼくのようなダメおやじでも、出来たのだ。
あなただってできますよ!!!!

熱血子育て日記「子育てが苦しいというあなたに、父ちゃんは応援歌を届けたい」



早朝に起きて冷たい水で米を研ぎ、毎日黙々と掃除機をかけ、洗濯をし、それからエッセイや小説を書いて、買い物に行き、学校の送り迎えや、学校の集会にも参加し、子供が道を踏み外さないように導く生活の中で、ふと聞こえてくる、誰かの成功を耳にするのがつらい時もあり、それを振り切るように、地面を見つめて黙々と生きた日があり、でも、成長した息子が「バレーボールの大会で優勝したよ」とメダルを持って帰ってきた日に、自分がどんな賞を受けるよりも、素晴らしいことが起きたのだ、と思えるようになったし、その目元を湿らせた日々こそ、死ぬ時に、いい思い出となって記憶の中で輝くのだろう、どんなメダルよりも輝くのだろう、と思うようにもなった。
そうやってこの子を世界に送り出せそうな今、ぼくは改めてこれからどうするのか、自分に問うてみたい。
この経験が、ぼく自身の未来に与えるだろう何かを、見極めなければならない。
今日も読んでくれてありがとうございます。
熱血で、頑張ろう。
あなたは、負けません。

熱血子育て日記「子育てが苦しいというあなたに、父ちゃんは応援歌を届けたい」

そして、お知らせです。

父ちゃんが講師になり、エッセイとの向き合い方を語る「文章教室」を、1月29日に開催します。
ええ! 参加してみたい、という皆さま、下記をクリックくださいませ~!

地球カレッジ

熱血子育て日記「子育てが苦しいというあなたに、父ちゃんは応援歌を届けたい」

5月29日のオランピア劇場での父ちゃんの単独ライブ、これはね、たぶん、もう生涯で一度しかできないライブだと思います。間違いなく、ぼくの歴史の中で、最高の瞬間になるはずだから、見に来てほしいです。DeepForestのゲスト出演も決まったことだし!!!!!
JALパック・パリが企画したライブ翌日のランチ会が「完売」したことを受け、参加できなかった人のために、当日、追加でランチ会がもう一回行われることになりました。まだ、先のことですが、パリ旅行を計画されている皆さん、ご参考ください。詳しくはこちらの、URLをクリックしてみてください。

5月30日 辻仁成 オランピア公演記念 『感謝!Merci!』 トーク&ランチ会 《追加設定》



そして、NHKの「パリごはん」来月、新作(秋冬編)が登場をします。
2023/2/17(金)後10:00~10:59【BSプレミアム・4K同時】です。ついにちくわず男の義和Dが編集に入った模様です。4か月半に及ぶ、父ちゃんのアフター子育ての記録です。引っ越しあり、三四郎との旅もあり、てんこもりですぞ。
「辻仁成のパリごはん 2022年秋冬」(59分)
そして、再放送もあります。
2023/2/21(火)後5:00~5:59【BS4K】※再放送
2023/2/21(火)後11:00~11:59【BSプレミアム】※再放送

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