JINSEI STORIES
パリ居酒屋店主の独り言「自宅で焼き鳥屋さん並みのパリパリ焼き鳥が食べたい」 Posted on 2021/02/26 辻 仁成 作家 パリ
お客さん、まいど。
ぼくは焼き鳥が肉料理の中で一番好きでしてね、昔から焼き鳥屋通いを人生の愉しみの一つとして生きてきたのです
昔、西荻窪に住んでいました。中央線沿線にはそれこそ名だたる焼き鳥屋が犇めいていたのです。
今も、東京に戻ると必ず訪れる行きつけが2,3軒あるのですが、こっそり顔を出し、カウンターの隅っこでひっそり食べる焼き鳥は本当にたまらないですよね。
焼き鳥の何が美味いって、あの、表面のパリパリ感と中のジューシーさ、そして、塩加減でしょう。
いろいろな部位を味わいつくしながら飲むビールの美味さったら…。
しかし、この焼き鳥、フランスでも人気なのですが、もちろん、日本のような美味さは残念ながら求めてはいけません。
だいたい、焼き鳥は、「寿司、てんぷら、焼き鳥」を置いてるSUSHI屋さんで食べることが出来るのだけど、炭火焼などは滅多にないし、似て非なるものばかりなのです。ごめんなさい。でも、それはそれで、美味しいと思うこともありますけれど…。えへへ。
パリの吉祥寺とぼくが呼んでいるモンパルナス(笑)には「鳥兆」という焼き鳥屋があって、ここは日本で修行した料理人がいて、日本の味が再現されているので、昔はよく通っていました。
そこで、ある時、自宅で日本の焼き鳥屋さんレベルの焼き鳥を作りたい、と思うようになるのですが、試行錯誤を繰り返して完成させたのが、父ちゃんの皮パリパリ焼き鳥ということになります。
パリはパリとかけているのだけど、そこはお愛嬌ということで。えへへ。
今日は、炭火がなくても負けないくらい美味しい焼き鳥を作るコツをお教えしたいと思います。
在仏歴ほぼ20年になった焼き鳥好きの父ちゃんだからこその裏技といえるでしょう。
材料は、皮つきの鷄モモ肉2本、塩とこしょう、だけ。
マジでこれだけで、本格的な焼き鳥が出来るんですよ、本当です。
必ず、骨付き+皮つきの鳥のモモ肉をご使用ください。
すでに解体してるのでもいいけど、骨から分離してしまうと、アボガドが種を取ると酸化が始まるように、なんか鮮度が薄まる気がするので、必ず調理する直前に解体します。
で、出てきた骨は、ネギとか、生姜、ニンニク、などを入れてスープにしてしまい、翌日、ラーメンでも、鳥ガラスープでも、なんでもお好きにアレンジして食べちゃってください。笑。
じゃあ、さっそく焼き鳥を作りことにしましょう。
鷄モモ肉の分厚い部分に少し切り目をいれ、まず、ある程度しっかりと塩こしょうをします。
この塩加減がね、重要になってきます。
それから、鶏肉の皮をきれいに伸ばし、フライパンに並べ、フライパンを火にかけます。皮から脂が出るので、ここは油無しで焼きますよ。これがとっても大事。
中火で皮面を10分くらいじっくり焼き、皮がきつね色に、パリパリに焼けたらひっくり返し、肉面を3分ほど焼いたら完成なのですが、この皮目を、パリパリにすることに命を懸けて貰いたいです。
父ちゃんのこだわりはそこのみ。
きつね色、焦げる手前ぎりぎり、が求められます。
放置出来る気力が必要で、中途半端に焼くと残念な結果になるし、焼き過ぎるとやはり残念になります。
ここは目が離せないところかな。
皮目パリパリに焼けたら、ひっくり返す前に軽く塩を振りましょう。
うちの場合、ここで息子の登場になり、一流シェフみたいに、息子は塩をつまんで、高い位置から、ちゃちゃっと振りかけます。時々、背中越しに振りかけたりして遊んでいますが、…要は仕上げの塩ですね。
美味しい焼き鳥屋さんは結構、塩を焼きながら振りかけていますが、自宅ではフライパンなので、塩が回っちゃうので、完成してからでいいです。
食べる前に、柚子胡椒、七味など、お好みで、お使いください。
冷やしたビールと焼きたての焼き鳥、もう、最高です。ボナペティ!