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パリ最新情報「最近のフランスの日常について」 Posted on 2021/02/16 Design Stories
バカンス期間に入ったことで、パリから人が離れており、いつもより穏やかな感じを受ける。
昨日は月曜日ということもあり感染者数は4千人台であった。(バカンス中の日曜日だったことで検査数が少ないものとみられる)
たしかに、少しずつ感染者数が減っている気もする。AFP統計によると、全世界の感染者数も半減した(過去一か月で44,5%の減少)、というようなニュースも出ていたので、もしかすると明るい兆しが見えてきたのかもしれない。
また、このロックダウンや夜間外出禁止令下の生活に身体と心が順応してきたのも事実で、去年の今頃の精神的な苦痛とは比較にならない。
ある種の慣れが生じているのであろう。その勢いで、周囲の知人たちはみんな田舎の別荘へと旅立っていった。
印象に過ぎないけれど、この暮らしにちょっと慣れてきた、というのか、制限内でなんとかやりくりできるようになってきた、というのが正直な現在の状況であろう。
カフェやレストランは相変わらず閉まっているが、補償金が出るので、営業をしないことに危機感を持たない店主も出てきた。
アジア系レストラン店主のパトリックは「今はやる気になれないし、なんとかなる」と毎日、YouTube三昧で生活している。
一方、稼ぎ時だと踏んだ真面目な料理人たちはテイクアウト営業をガンガン続けている。というのも、テイクアウトで稼いだお金は申告しなくていいと決まったからだ。
補償金を得て、さらにテイクアウトで足りない分を補填し、前年比同額程度の売り上げを目指す猛者もいる。
カフェを営業しているジャン・フランソワは昼の15時までテイクアウトでの料理とコーヒー販売をやって、補償金以外の収入を得ている。
「だって、みんなもいつまでも自炊は辛いからさ、やっぱ、誰かが作った温かい料理食べたいよね。ならば、テイクアウトであろうと出来ることをやろうと思った。利益を出そうと思ったら、こっちが変異して新たな価値観に適合させていかなきゃならない」
マスク同様、このように制限があるのが当たり前の暮らしにいち早く適応することが、逆にこのコロナとの共存の上で大事だと考え、今のところ上手にやっている人たちが増えてきた。
しかし、とジャン・フランソワは付け足した。
「問題は、俺たちが貰っている補償金って言わば自分らで払っている税金だから、永遠というわけにはいかない。この先、飲食業を続けるなら、なんらか新しい方法を考えないとやっていけなくなるだろう。制限が緩和されて営業が出来るようになっても、すぐに客が戻ってくるかどうか、分からない。でも、パン屋は逆に儲かっている。人々は食べないと死んでしまうからだ。ぼくらは知恵を出して、生き残りをかけた変異をする必要があるね。そこはコロナウイルスに学ぶことになるよ」
子供たちはどこで会っているのか?
「ぼくたちはマックでハンバーガーを買って、店内ではどこも食べられないから、公園で食べたりしている。でも、中には追い出される公共施設もある。歩道でササっと食べたりしている。でも、寒空の下、こうやってみんなと会って、遊ぶことにも慣れてきたから、夏なら、公園でもぜんぜんいけるね」
デパートなどの大型店舗は閉鎖中だが、小さなブティックなどは営業している。
ただし、入店制限があるので、入るまでに30分待ちの店もある。
とくに若者に人気の店に長い行列ができている。若い子たちは、その列に並びながら、仲間たちと語り合い、時間を潰しているのだ。
感染者の数が減ってきたことで、安心をしていたけれど、見回すと、通りには閉店の張り紙が増えている。
生き残れず、赤字が大きくなる前にやめてしまおう、という会社や店舗が一気に出てきた。
パリ市内中心部のオフィス街には「閉店」「貸します」の張り紙が溢れかえっている。経済への直撃を想像すると心配にもなるが、それでも、さらに厳しい意見を言う人たちがいる。
科学者や医師たちだ。
彼らはこの制限に慣れだした世界に対し、強い警告を発信している。
「三月に感染症危機が終わるなんて程遠い。こうやってのんきに過ごしていることが、春に3倍返しでリスク増しになるからね。よーく考えないと」
こう述べているのはフランスの感染症学のカリンヌ・ラコンブ博士だ。この警告は政府へ向けられたもののようである。
同じく、フランスのレ・ゼコー紙は「急速な変異株の進化が医療ひっ迫へのリバウンドを生みかねない」と最大級の警告を発している。
つまり政府は不満を抱える国民の顔色を常に見て行動し(そうせざるを得ない立場は理解出来る)、今、ロックダウンに踏み切らず夜間外出禁止令でお茶を濁しているが、(確かに今は一定の成果を出してはいるけれど)、変異株は着実に感染拡大しており、春になると大変なことになる可能性がある、と指摘しているのである。
それが証拠に、とレ・ゼコー紙がパリ首都圏で感染者の数字が不気味な伸びを示していることを挙げている。
油断は禁物ということのようだ。
やはり、目に見えないところで、感染症は新たな進化の道を辿りはじめている。従来型と変異株を同じに扱わないように、と警告する医師たちの声に耳を傾けよう。(ひ)