PANORAMA STORIES
「イタリアの春はまだ遠く」 Posted on 2021/02/08 奥山 理恵 ワイン輸入・コーディネーター イタリア・ピエモンテ
イタリアでは現在、イエロー、オレンジ、レッドと三つのゾーンが色分けされ、行動制限がとられています。
3種類の色分けは、安全の順位ではなく危険度を優先して選ばれているのです。レッドゾーンがもっとも危険な状態にあることを示しています。一番、制限が緩やかなイエローゾーンのカフェ、バール、レストランなどでは、5時~18時まで飲食が可能となります。
イエローゾーンに指定されたロンバルディア州(州都ミラノ)の最初の土曜日、ミラノ中心部には多くの人が集まりました。人気店舗前には大勢の行列ができ、入店の制限が実施されたのです。
街の声「ミラノの商業活動にとってはポジティブな一日だった。バーやレストランでさえも良いペースで仕事をしている。」
そしてパンデミック時に死者が多かった同じくロンバルディア州ベルガモの中心部、メインのショッピングストリート、旧市街にも人がたくさん集まったため、いくつかの通りが封鎖されてしまいました。そして、マスクの適切な使用と安全な距離を守っていない若者グループを分散させるために警察が介入することになりました。
ベルガモの市長は、市民にこう呼びかけています。
「このままでは、再びレッドゾーンとまではいかないまでも、すぐにオレンジゾーンに入ってしまう。再び病院が感染者でいっぱいになり、閉鎖を余儀なくされた経済事業者に大きなダメージをもたらしてしまう。私たちは、感染率を下げることがいかに難しいか、また感染率が再び上昇することがいかに簡単かということを学んできた。すべての人、特に若い人たちには責任感を持っていただきたい。」
私が暮らすピエモンテ州(州都トリノ)もイエローゾーンに指定されました。
トリノの人々もやはり、歴史的中心部の通りを散策したり、買い物をしたり、食前酒を飲んだり、外でランチをしたりしています。(ただし、土日はショッピングセンターや美術館は閉まったまま)
バールでカプチーノとブリオッシュを嬉しそうに楽しむご夫婦の声。
「私たちの家は、すぐそこなのよ。友達と飲食をしながら楽しく会話することができないので、今まで通りではないけれど、久しぶりにリラックスして自由な空気を楽しめたので本当に嬉しい。」
ピエモンテ州内にあるアウトレットショッピングモールでランチタイムに、大勢の人たちが、飲食店に入るために列を作っていました。しかし、仕方ないことですが、18時までには家に戻らないとならず、今までのようにのんびりアペリティフをすることが出来ません。
さて、イタリアのデザイン、そしてワインの世界の再スタートの動きについてもお伝えしたいと思います。
毎年春に開催されるイタリアの大きな国際見本市がそれぞれ、延期となりました。
まず、デザイン業界にとって最も重要なミラノサローネ国際家具見本市が4月から、秋、9月に延期されたのです。(再開催予定日、2021年9月5日 (日)~10日(金))
毎年、この国際見本市期間は、国際レベルのデザイン、製品に取り組む世界中のデザイナー、企業が集まり、ミラノの街を華やかに彩ってきました。
ミラノサローネ代表 クラウディオ・ルーティ氏は、社会的距離を保ちながら新しいアイディアでデザインのスタートの機会を得たいとコメントしています。
同じく毎年4月にイタリア北東部のヴェローナで開催されるイタリアで最大のワインの国際見本市Vinitaly(ヴィニタリー)も延期に。(再開催予定日、2021年6月20日(日)~23日(水))
先行きが不透明なため、訪問観光客も少ない可能性があり、再開催日もさらに延期される可能性が指摘されています。
今後、海外への移動、海外からの入国にPCR検査の陰性証明書でなくワクチン接種が義務付けられることが予想されているため、夏前までにこの問題が解決する可能性はかなり不透明で、海外からの訪問客を見込めないだろう、というのが専門家のもっぱらの意見です。
そこで、ワクチンの接種状況と予約方法についてのイタリアの最新状況をまとめてみます。
私の友人の家族がそれぞれ、小児科医、小児精神科医ですでにファイザー製ワクチン2回接種しています。80歳以上の家族がいる友人は、一回目のワクチン接種日が決まっています。接種会場は、地域の大きな病院となりますが、移動が不可能な高齢者の場合、看護師や医師に自宅に来てもらい受けることが出来ます。
ワクチン接種の予約について。イタリアでは、地域の管轄保険局(ASL)で医療保険に加入し、その地域の医師リストの中から自分でホームドクターを決める仕組みとなっています。ホームドクターからの書面に従い、オンラインで予約が可能です。(ピエモンテ州の場合)
ワクチン接種の状況は、州ごとに管理され、ロンバルディア州、そしてピエモンテ州も病院医療スタッフと老人介護施設を終えて第2段階のカテゴリーの人たちへの接種が開始されています。
2月7日現在、イタリアは、2回接種済み人口の1.82%、1回目の接種済みが人口の2,35%。
なかなか思ったように、接種の数は増えてはいきません。
人口が多いロンバルディア州では、1日11万9千人がワクチン接種を必要としています。これを実施するためには、アクセスのスケジュール、電話、調整、資料の準備だけでも合計で2500人の専任オペレーターが必要になるのだということです。
そこでワクチンの投与を実施するための最適なルートを特定することを目的とし、24時間で行うことができるワクチンの総数を理解するために、現在、ミラノの国際見本市会場パヴィリオンを利用した臨時病院では、地域緊急医療機関スタッフの投与の開始から終了までに使用される時間が計測されています。
結局、健康、仕事、学業、そして社会的な日常を取り戻していくために、現状では、ワクチンの接種状況とゾーン別の行動制限を守るしか手がない、ということが分かってきました。
変異型が急速に拡大しており、感染性が高いと思われることから、集団免疫にはまだ程遠く、ロックダウン、行動制限を唯一の武器として戦うしかないのが現状です。
しかし、ワクチンだけに頼るのは、ウイルスの進化についての不確実性がまだ非常に高いこともあり、大きな賭けであるという科学者の意見もある。
そのためワクチン接種と並行してウイルスの主な伝播経路を特定するための調査、データの取得などの長期計画に取り組む必要があると専門家が警鐘を鳴らしています。
*イエローゾーン:夜間外出禁止時間(22時から午前5時)
土・日・祝日、そして祝日の前日は、ショッピングモールにある商店は閉鎖。(食料品、薬局、新聞、タバコ屋は除く)
飲食サービス業の開店時間は、5時~18時まで。テイクアウトは、22時まで(バールでの持ち帰りサービスは18時まで)。宅配サービスは、時間の制限はなし。
劇場、映画館、ジム、プールは、閉鎖のまま。
*日本からイタリアへの留学生の方で国民保健サービス(Servizio Sanitario Nazionale)に加入してい
ない方は、地域の管轄保険局(ASL)の窓口で申請できます。
Posted by 奥山 理恵
奥山 理恵
▷記事一覧2001年よりイタリア在住、ボローニャ、ヴェネツィア、ローマに滞在後、現在北イタリア ピエモンテ州北部ノヴァーラ県で暮らす。イタリアソムリエ協会ソムリエ資格、マスターコース修了。2008年、日本にワインを輸入するため株式会社Wine・Artを設立。ピエモンテワイン、イタリア食材の直輸入、ワイナリー訪問、農業視察や農業調査などイタリア現地コーディネート。