JINSEI STORIES
退屈日記「パリが水の都ベニスのようになりました」 Posted on 2021/02/06 辻 仁成 作家 パリ
この美しい絵画のような景色をご覧ください。これは今のセーヌ川の様子です。
この一月半ほど降り続いた雨のせいで、水位が上がって、氾濫気味。
前回は2016年でしたから、5年ぶりの風景です。
でも、申し訳ないですが、綺麗だなぁ、とため息がこぼれました。
フランス全土が大雨で、地方の街の中にはベニスのように水浸しになっているところもあります。
雨はまだ数日、フランス全土で続く見通しです。
気候温暖化の問題もあるようですね。
左岸から右岸に渡る途中にある川中島の、サンルイ島とシテ島、絵になる地域です。
カメラをぶら下げて、昔はこの静かなカルティエの風景の写真を撮るのが好きで、歩きました。
コロナ禍ですけど、空とか水とか光に癒されます。
この氾濫しそうな川のしたに道があります。
川岸の家々、ぎりぎり、浸水はしていません
たぶん、これから水位が下がって、再びもとのセーヌに戻るのでしょう。
ぼくはずっとセーヌの河畔に近い場所で暮らしてきました。
セーヌ川はドナウ川に比べると小さいのですけど、その流れは穏やかで、柔らかく、癒されます。
ぼくはこの川岸の小さな歩道で「発声練習」をしているんです。ここならだれからも怒られないから、笑。
セーヌ川に向かって声を出すと、ストレスも出てゆきます。
早く、この世界の心の水位が落ち着きますように。