JINSEI STORIES
退屈日記「日本がEU入域原則禁止になったのは仕方ないが、ね、しかし」 Posted on 2021/01/29 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、昨日のフランスニュースで物凄く気になったのが、日本がアジアの中でコロナ優秀国から外れてしまった、ことだった。
EUは昨日、「日本での感染拡大を受け、日本からの入域を原則禁止する措置を決めた」と速報が流れた。
※日本からの渡航を実際どう扱うかは各国が判断する。実はフランスは反対しなかったのだけど、ポルトガルが強く反対をした。なぜかというとポルトガルはブラジルからの感染拡大に悩んでいる。
要は、ブラジルから日本に戻った方々の中にブラジル株のウイルス保持者がいたこと、その変異株をこちらではいまだ「ブラジル―日本株」と呼んでいること。
驚くべきことに、局によっては「日本株」と呼んでいるところもある。しかし、ブラジル移民の多い日本とブラジル、歴史的に強い繋がりがあることは知られており、なので、ポルトガルのように、日本でブラジル変異株が流行しそうだ、と思っている国があっても、不思議じゃない。
実際、ブラジルと歴史的繋がりの深いポルトガルで、新変異株が見つかっているので、…。
で、逆に「アジアにはゼロコロナに成功した優秀な国が多い」と司会者は続け、台湾、ニュージーランド、オーストラリアの成功例をあげた。また、引き続きEUに入域できる国として中国、韓国をあげ、日本との各国比較のような話題ばかり。日本人としてはちょっと嫌なニュースであった。
というのも、知り合いから「去年、3月、フランス人はみんな日本を見習ってマスクをつけよう、と言い合った。なのに、なぜ、勤勉な日本人だけがアジアの先進国の中で感染拡大を許してしまったのか?」と知り合いからのメッセージを受け取ったのだ。
ぼくはこの日記で、一年前から言い続けていることがある。もう何度も書いてきたことだけど、理由はオリンピックだ。
もしも、日本がオリンピック開催国でなければ、当初から日本政府は厳しい措置をとり続け、ゼロコロナ国の筆頭だったと予想出来る。
しかし、本当に不運なことに、日本は空くじを引いた。オリンピックにこだわるせいで、国はコロナに対して後手後手に回ざるを得ない。
これでは、台湾のようなコロナゼロ環境など整うわけがない。
で、国民にはお願いが続いているけど、個人個人がいくら優秀でも要請レベルには限界もある。
国が立ち上がらない限りコロナを食い止めることなど、出来やしない。
ゼロコロナを成功させている国を見てほしい。
オーストラリアは数人感染者が出ただけで、6か月間もロックダウンを続けた。この差はなんだろう。
オーストリア政府の自国を守る強い態度がこの成果を出している。
日本は要請レベル、しかも、政治家はのんきに大人数で夕食会をやり続け、これでは、国民の士気も上がらない。
どんなに優秀でももう国民は限界だと思う。オリンピック開催と共に、日本の未来も、…。
政府の中に、気骨のある人がいるなら、国のために、立ち上がってもらえないか。
感染拡大の酷いEUが日本を入域させないと言ってる意味の分からない状況は、深読みするならば、今、EUの眼中にオリンピックがないことを物語る強いメッセージと読み取ることが出来まいか、…。