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リサイクル料理教室「鶏もも肉のケッパートマト煮込み」 Posted on 2023/04/07 辻 仁成 作家 パリ

パパは物を捨てるのが嫌いなんだよ。冷蔵庫の中で忘れ去られていく物がかわいそうでしょうがないんだ。必要な時だけちやほやされて、でも、余ったらそのまま放置されて、気が付いた時には手遅れ。
カビが生えていたり、風味が飛んでたり、消費期限が過ぎていたり…。どう思う? そういうの、地球環境的にも許されないことじゃないのかい? 何がおかしいんだよ。
え? パパが買ったものばかり?




つい買いすぎてしまって、残って残念になる食材を生かすことを日々考えている。 料理を愛する人は食べ物を粗末にしない人でもあるからね。いただきます、と日本人はご飯を食べる前に言うけれど、あれは、命を頂きます、という感謝の言葉なんだ。野菜だろうと、お魚であろうと、もちろん、お肉であればなおさら、余すところなく食べな きゃいけない。だからパパは残った野菜は全部、煮込みにするんだけど、それでも残ってしまう野菜はおしんことか、ふりかけなんかにする。
いや、たとえば人参の葉っぱあるだろ? あそこは人間はあまり食べないんだけど、パパはあれでふりかけを作るんだ。みじん切りにした人参の葉っぱをごま油で炒めて、みりんと酒と醤油で味付ける。 最後に、ゴマをたっぷりかける。いつも、君がおいしいおいしいって言って食べてるふりかけ、あれ、お馬さんが大好きな人 参の葉っぱなんだよ、知らなかったんだ。
なんで、そんな顔する? 笑。

リサイクル料理教室「鶏もも肉のケッパートマト煮込み」

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で、うちの冷蔵庫である頻度で必ずこのような残念な末路を辿る食材がある。 それはケッパーとオリーブなんだよね、なぜか。 ケッパーはスモークサーモンを食べる時に必ず使うので買うのだけど、それ以外の応用がなかなか効かない。オリーブは大好きだから買うけど、買いすぎちゃって、どんどん古いものが冷蔵庫の奥へ奥へと行きがちな食材ナンバーワンということになる。
何、にやにやしてんだよ。

それで、パパはこの二つを使った料理をいろいろと開発してきた。 捨てきれない食材で、お金を出してでも食べたくなる料理を目指すって、かっこよくね? ケッパーとオリーブのコンビだと、パスタとかにもあうし、地中海風の魚料理なんかにもあ うのだけど、一番おいしいのは鶏もも肉の煮込みなんだ。ということで、今日はそれを作ってみよう。

まず、フライパンにオリーブオイルをひいてだな、中火でいいよ。 そこでもも肉を焼くんだけど、皮面を下に、フライパンに載せて、まずしっかりと皮目をパ リパリに焼く。皮にきれいな焦げ目がついたら、裏返し、にんにく、唐辛子(種を抜いて)、玉ねぎのみじ ん切りを加え、ちょっと火を弱め、鳥を焼くというより、ここは野菜に火を通す感じね。

白ワインを加え、フライパンにこびり付いた焦げを木べらでこそげ取り、ケッパー、オリーブオイル、トマト缶、チキンブイヨンを加え、蓋をして煮込む。煮込みながらトマトを崩していこう。

20分ほど煮込んだら蓋を取り、少し水分を飛ばし、トロっとしたら最後に生クリームを加え、さっと混ぜて完成となる。塩味はケッパーとオリーブから出るので、味見をして、必要ならば塩を足し、胡椒で味を整えればいいよ~。パスタ(ラザニェッテやフェトチーニなどが合う)を茹で、オリーブオイルで和えてお皿に盛り、上から煮込んだチキンとソースをたっぷりかけて、パルメザンチーズもたっぷりかけて、さぁ、じゃあ、喰おう!!!

リサイクル料理教室「鶏もも肉のケッパートマト煮込み」




材料:鶏もも肉(できれば骨付き)4枚、ケッパー大さじ1、オリー6個、トマト缶1つ、にんにく2片、乾燥唐辛子1個、玉ねぎ半個、オリーブオイル大さじ1、こしょう少々、白ワイン50ml、チキンブイヨン1個、生クリーム大さじ2、パルメザンチーズ適宜

リサイクル料理教室「鶏もも肉のケッパートマト煮込み」

今回使ったケッパーは、イタリア食材店で買った塩漬けのケッパー・ベリー。さくらんぼのような枝がついていて、オリーブに少し似ているけれど、中にある小さな種がプチプチとした食感です。塩漬けのものの場合は3時間ほど水で塩抜きしてから調理してください。

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