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パリ最新情報「18時以降の外出禁止、パリのレストランのアイディア」 Posted on 2021/01/18 Design Stories  

フランス政府は1月16日(土)より、18時から翌朝6時までの夜間外出制限措置をフランス全土に導入。これに伴い、 商店や商業施設は18時には閉店となったが、レストランのデリバリーは、18時以降も受け付けており、従業員の帰宅が18時以降になることに関しては、例外的に認められている。
20時以降の外出制限は、昨年12月15日から始まった。その時点でフランス政府は、1日の感染者数が5000人を切れば、レストランや映画館、美術館などの文化施設の再開を1月20日としていた。1月20日という明確な日付に多くの人は希望を感じていた。しかし、新年から日々、新規感染者数が20000人という、当時の予想からは程遠い状況が続いている。通常の営業を禁止され、苦境に立たされているパリのレストランは、持ち帰りやデリバリーで、なんとか耐えてきたところに、更なる外出禁止時間の繰り上げ。
そんな中、パリ14 区で「Aux Plumes(オー・プリュム)」を経営する日本人 シェフ、藤枝和洋さんに話を聞いた

パリ最新情報「18時以降の外出禁止、パリのレストランのアイディア」



「Aux Plumes」では、昨年春のロックダウンの終わり頃から、持ち帰りとデリバリーを試し始めた。長く続くこの異常 事態に、その都度、柔軟に対応してきている。今回も新たな 外出制限措置を受け、通常であれば12:00営業開始だったと
ころを10:30に前倒し、閉店の18:00までノンストップでの営業を決めた。料理の提供は全てデリバリーか持ち帰りのみだが、「Aux Plumes」は大きく4カテゴリーに分けた。ひとつは開店時から15:00までの間に提供される「Menu Déjeuner(昼食メ ニュー)」。これは前菜+選べるメイン+付け合せで、一人 前18€だ。ふたつめは15:00時以降閉店までの「Menu Bar à la maison(おうちでバー)」で、5種類の冷製タパスが用意されて10€。そのほか「Aux PLUMES à la carte(オー・ プリュムの単品料理)」と「Menu spécial famille(家族の 特別メニュー)」は取り分けサイズの大皿料理が一皿20€からで、提供は終日行っている。
「家族の特別メニュー」は、取り分けることを前提にしたもの。フランスでは、一人一皿が基本だが、あえて日本の取り分け文化を取り入れて、食卓を分かち合う喜びを提案している。

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興味深いのが、昼食メニューはすぐに食べることができる温かく調理済みのものに対して、夜にオーダーが多い単品料理と家族の特別メニューは家で仕上げるという点だ。日中、仕事の合間に買って食べる人が多い昼食と、家で家族とゆっくり味わう夕食というように、顧客の生活パターンを意識したスタイルになっている。
藤枝さんは「食にこだわりのあるフランス人が、プラスチック容器のままで食べる姿が想像できなかった。家でちょっと調理してお皿に移し替えられる状態で料理を提供する方が、食卓として良いなと思った」とい
う。
冷製タパスは、アペリティフという、夕食前に軽くつまみつつ飲むフランスの食習慣にピッタリだ。

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パリ最新情報「18時以降の外出禁止、パリのレストランのアイディア」

昼食メニューの持ち帰りを試してみた。既に温かく仕上がった状態だったので、急いで家へ。前菜は、フランスでは珍しい生のマグロのタルタル、香ばしく焼き上がった自家製パンに挟まったチョリソーのミニサンドイッチ。2人前頼んだの で、ひとつはタラとマグロのバジルクリームソースいくらのせ、カニのリゾット添え。もう一品は、子豚のきのこクリームソース、カレーリーフのペストソース仕立てのペンネ添え。どれも、家庭では作れない味で、まるでレストランで食べているような気分に。ちなみに通常の前菜はスープだそうで、この日は、着いた時点でほぼ完売状態だったため、急遽、別のもので対応していただいた。人気店のため、事前の予約が必須だ。

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また、ワインも販売しており、グラス2杯分にあたる25clを 10€、ボトル一本より少なめの50clを18€と、小瓶での小分け販売も行っている。もちろん、その場で味見をしてからの購入も可能。まずは、前菜に合わせて白、そしてメインディッシュに合う赤というように、レストランのマリアージュを自宅で少人数でも楽しめる。小瓶で販売することで手間はかかるが、儲けが出ているというわけでもないという。ただただ、美味しい料理を合ったワインで食べてもらいたいという、シェフの愛を感じる。
「レストランだからできることはなにか、自分がこうだったらいいな、という想いをにしている」と藤枝さんはいう。

パリ最新情報「18時以降の外出禁止、パリのレストランのアイディア」

18時からの夜間外出禁止措置は既に25の県で導入されており、感染拡大防止に効果が出ているようだ。この措置は、少なくとも2週間は継続される予定だが、パリの街を支えるレストランたちの1日も早い復活を願わずにはいられない。 (ウ)



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