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パリ最新情報「免許証がなくても、14歳以上であれば乗れる?車が登場」 Posted on 2021/01/04 Design Stories
パリの街角で時々、目にするようになった水色の愛嬌ある車。駐車スペースが少ないというパリ特有の事情に、世界的な「脱カーボン」の流れが組み合わさり、いま、急速に広がりつつあるカーシェアリング用のEVだ。
ピーク時の大気汚染が、北京や上海よりも深刻だったこともあるパリ。自動車の交通量が多いのにも関わらず、昔ながらの街並みで細い路地が多く、渋滞しやすいという悩みも抱えている。そんな中、パリ市は2030年までにすべてのガソリン車、ディーゼル車の乗り入れ禁止を宣言し、あと10年足らずで、電気、及び水素自動車のみが、市内の走行を許された存在となる。
そういった背景から、パリのカーシェアリングへの意識は高く、サービスが始まってから既に10年ほどが経過した。2011年に「オートリブ(Autolib’)」が始まり、2019年より「フリートゥムーブ(Free2Move)」へと切り替わった。「フリートゥムーブ」のサービスでは、1分単位で車を借りることができ、基本料金1.5€(約190円)に、1分あたり0.45€(約60円)加算されていく方式だ。
コロナ禍において、他人とモノを共有することに対してへの抵抗感もしばしば語られるが、ロイター通信によると「フリートゥムーブ」は、2020年の春先のロックダウンでサービスを停止していたのにもかかわらず、第1四半期の売り上げは23%増加とのこと。また、医療従事者への車両提供なども行ってきた。
※話題のシトロエンの新しい超小型電気自動車「アミ(ami)」
パリといえば路上駐車が名物だが、道端に止まっている車両を気軽に借りることができ、返却も路駐スペースであればどこでも乗り捨て可能。以前の「オートリブ」では、専用の充電設備がついた駐車スペースへの返却が必須だったため、それに比べてだいぶ手間が省けるようになった。事前に免許証と身分証明書の登録は必要だが、それさえ済めば、スマートフォンひとつで簡単に借りることができる。お目当ての車の位置を専用のアプリで探す楽しさも。すべて電気自動車で、プジョー「iOn」、シトロエン「C-Zéro」、そして2020年よりシトロエンの新しい電気自動車「アミ(ami)」が投入され、3車種から選べるようになった。ちなみに「iOn」も「C-Zéro」も、ベース車両は三菱自動車製の「i-MiEV」なので、実質2車種といっても良いかもしれない。
※シトロエン「C-Zéro」、
中でも「アミ」は、「低価格」で「運転免許が不要」という点で、従来のEVとは一線を画した存在だ。
一般販売もされている「アミ」の価格は6000€(約75万円)で、月々19.99€(約2500円)のリースも可能。製造工程での徹底したコストダウンがこの低価格帯を可能にした。例えば、フロントとリア、左右のドアはそれぞれが全く同じ形状でできているのは、部品の種類を大幅に減らしたため。そのため、ドアの開き方が左右非対称なのはご愛嬌。ボディパネルの素材にはシトロエンが得意とする色付きのポリプロピレン樹脂を採用した。通常は金属の板を成形したものに塗装を施すが、「アミ」は着色された樹脂をインジェクション成形することで塗装工程を省き、軽量化している。
※この車(?)が「アミ」。仏語で「友」という意味。
そして、免許がなくとも運転することができる「軽四輪車(quadricycle léger)※」というセグメントの車で、シトロエンが公式に「免許不要の電気自動車(la voiture électrique sans permis)」と銘打って販売している。フランスではまだ珍しく、非常にインパクトがあった。デザインのポップさも家電の延長線上にあり、売っている場所は家電量販店かネットのみ。乗り込むと、広々とひらけた視界は日本の軽自動車を彷彿させ、乗り心地はややレトロだ。
シトロエンは、「アミ」を車ではなく、「都市を移動する機器(objet de mobilité urbaine)」と呼んでいる。コロナ禍で生活に多くの変化が生まれたが、「アミ」も自動車の境界線を曖昧にし、移動の概念を変えるきっかけになる製品になりそうだ。(ウ)
※軽四輪車(quadricycle léger)は、1988年以前生まれの人は免許不要。1988年以降生まれで14歳以上の人は、最低8時間の講習後に取得可能なPermis AMで運転可能。