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建築家が作ったラグ「ZAPETTO」がもたらす居心地。 Posted on 2016/12/12 エルンスト 順子 ビジネスコーディネーター パリ

私が暮らしているパリ郊外のアパルトマンは1930年に建てられた戦前の建物だ。
フランスでは歴史的建造物同様、あちらこちらに古い住居用物件が残っていて、住人は内装工事を繰り返しながら昔と変わらず暮らしている。

大きな扉をくぐると建物のエントランスには幾何学モチーフのブルーのセラミックタイルがあり、
アールヌーボー末期の装飾がいつも私を迎えてくれる。
高い天井には石膏彫刻が施され、亜麻色になった床張りも美しい。
 

建築家が作ったラグ「ZAPETTO」がもたらす居心地。

Photography by Junko



と、ここまでは聞こえが良いが、この手の古い建物には欠点もたくさんある。

一番の欠点は古い建築構造ゆえに生活音が響くことだ。ミシンの音、洗濯機の音・・・。
そのため、我が家では防音のための絨毯やラグが欠かせない。
特に気に入っているのは北アフリカを旅した時に購入したアラビアンキリム。
エスニックの柄物のラグがインテリアのアクセントに加わると、全体の空間もしっくりとまとまるから不思議だ。

昔、日本ではリビングやダイニングなど部屋の用途に応じた名称はなかった。
座布団と円卓を置けばダイニングになり、布団を敷けば寝室。それらを終い、建具を開けば催事の広間ができあがる。空間の考え方が実に自由で合理的。

家の中のどこにでも自分の居場所を作れるということなのだ。
 

建築家が作ったラグ「ZAPETTO」がもたらす居心地。

©wacca architects



住宅・店舗等の設計デザインを手がける、ワッカアーキテクツデザインのラグもそこが原点となっている。

一級建築設計士が手がけるインテリア ラグ 「ZAPPETO(ザペット)」。「丹後段通(ハンドタフト)」という手織りの伝統技術を使い、海が近く、自然豊かな京都の町、網野町で作られている。
 

建築家が作ったラグ「ZAPETTO」がもたらす居心地。

©wacca architects



建築的な施工視点のエッセンスを加え、人と人がつながる空間を生み出し、居場所をつくる。

そんな日本の空間文化から生まれたラグはここ、ヨーロッパでも注目されているのだ。
 

建築家が作ったラグ「ZAPETTO」がもたらす居心地。

©wacca architects



椅子文化のヨーロッパでこのラグが人気なのは「座り心地」にあるだろう。

椅子の上に敷いても、床に置き座布団のように使ってもいい。驚くほどのフィット感と吸い付くような座り心地。
古き良きものを大切に使うヨーロッパの人々も、馴染みの椅子にザペットを添えるだけで、今までと一味違う心地よさを見つけ出せるだろう。

お気に入りのカフェにも、ブルターニュの浜辺にも・・・、ザペットはヨーロッパのライフスタイルによく馴染むのだ。
 

建築家が作ったラグ「ZAPETTO」がもたらす居心地。

©wacca architects



私のアパルトマンのアラビアンキリムが敷かれたサロンにも、色とりどりのザペットが並んでいる。

普段、床に座ることはないが、ザペットには家族みんなが座りたがる。
そして、私はそこに座るたび、日本で過ごした家族との団欒の時を思い出す。

人と場所、そして私の記憶をこのラグが繋いでくれている。
 

建築家が作ったラグ「ZAPETTO」がもたらす居心地。

©wacca architects

 
 

Posted by エルンスト 順子

エルンスト 順子

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Junko Ernst
ビジネスコーディネーター。神奈川県生まれ。2006年より渡仏。欧州販路開拓 エージェント JPLUG-IN(ジェイプラグイン)代表。フランス、べルギー、イギリスの室内装飾展示会の現地窓口、ブース専門施工、グラフィック、会場通訳、オーダ成約、欧州窓口 のトータルサポート。販売代理店契約、輸出アドヴァイザリー、パリブランディングプロモーションなども加え新しい欧州マーケットを開拓している。