JINSEI STORIES

父ちゃんの料理教室「フレンチの代表選手、ロティー・ド・ポー(ローストポーク)」 Posted on 2022/01/20 辻 仁成 作家 パリ

あのね、とにかく、フランスという国はオーブン料理が多いじゃん?
君が食べている肉料理の半分は、いや、ほとんどはオーブンを使ってるんだよ。
オーブン料理が欧米の料理と思ったって構わない。
フランスのオーブンは食洗器並みにでかくて、どこのお宅のキッチンにも巨大なオーブンがある。
パパの知り合いの日本人に、どうやったらフランス料理を自宅で再現できますか、とよーく訊かれるけど、まずオーブンかオーブンレンジを買いましょう、と最初に助言している。
つまり、君がこの国で本格的なフランスの家庭料理を作りたいなら、オーブンの使い方をマスターするのが早道となる。



レンジは電子で食材を温めるけど、オーブンは熱を対流させて上下左右からまんべんなく温めることが出来る。
食材を天板に載せるのはこの対流熱を均一化させるため。
でも、ダイヤルをグリルに合わせると、上と下からの熱源で焼くことも可能。
とにかく、天板がとっても重要だからね、覚えておくように。
次に大事なのが、使う前に必ず予熱、つまり前もって加熱しておく必要があるということだ。
電子レンジと違って、入れてすぐには温まらないから先に予熱しておく必要がある。そして、もう一つ予熱じゃなく、余熱ね。
温めた後に残った余った熱を使ってじっくり火を入れていくという方法も活用するからね、これもいつか教えてあげるよ。
このように、オーブンは手間がかかるけど、電子レンジなどでは絶対に再現できない深みと奥行きのある美味しさを作りだすことが出来る。
一度、これをマスターするともうなんでもオーブンを使いたくなる、実に便利な調理器具なんだ。なんたって、フランス料理はオーブンの歴史と密接なつながりがあるんだから‥‥。



ということで、今日はフランスの家庭料理の定番中の定番と言えば、必ずみんながここから作ると言われている、ロティ・ド・ポーを教えたる。
英語だとローストポークになる。
君も大好きだよね? 
これさえ、覚えておけば、フランス人と結婚をしても、彼女に作ってあげることが出来るよ。
「なんで、ぼくが作るの? それ、差別でしょ?」



ニンニクは1片を4等分に切り分けておこう。
じゃがいもと玉ねぎは2mm厚さにスライスし、じゃがいもは1度水にさらしてから水気をよーく切っておこう。
オーブンは200度に予熱しておく。
豚肉は全体に満遍なくナイフに先で穴を開け、16個のニンニクを差し込みタコ糸で形を整えるように縛り、全体に塩胡椒をする。
あ、なんで、タコ糸で縛るかわかる?

父ちゃんの料理教室「フレンチの代表選手、ロティー・ド・ポー(ローストポーク)」

地球カレッジ

父ちゃんの料理教室「フレンチの代表選手、ロティー・ド・ポー(ローストポーク)」



「え? 分かんない。面倒くさくない? しないでも良さそうだけど、やらないとダメなの?」
「あのね、煮たり焼いたりしていると肉の形が崩れるからさ、これで、こうやって縛って、崩れにくくする。慣れてくるときれいに縛れるようになる。パパは性格が細かいから丁寧に縛っちゃうけど、これが趣味だし、でも、君はここまでやる必要はない。型崩れしない程度に工夫しておけばいいよ」
「それだけのために? やっぱ、面倒だよ」
「フライパンで焼いたり、鍋で煮たりするとき、肉が動くと肉汁が出ちゃうから、それを防ぐ理由もある。物事にはすべて理由がある」
「そっか、でも、ひもで縛るって、なんとなく不衛生な感じがするけど‥‥」
「いいや、タコ糸は綿100%だから、心配なし。それにかなり丈夫だから、パパの経験からするとこれが切れたことは一度もない。納得した?」



じゃあ、続けるよ。
フライパンに大さじ2のオリーブ油を熱しじゃがいもを炒める。
じゃがいもに火が通り半透明になってきたら玉ねぎを加えしんなりしたら耐熱容器に移す。
豚肉も全体にしっかりとした焼き色がつくまで焼く。
耐熱容器に入れたじゃがいもに、スープを注ぎ、生クリームを満遍なく振り掛け、豚肉を中央に乗せたら200度のオーブンで1時間から1時間15分程焼くんだ。
竹串で刺しに抉るが透明になったら20分ほど(アルミホイルで包んだ方がいいかな)休ませてから切り分ける。
好みでマスタードを添える。ほら、出来た! めっちゃ、美味そうだろ。
これが美味そうだと思うよりもさらに美味いからね。オーブンとタコ糸の勝利と言える。さあ、喰うか! 

父ちゃんの料理教室「フレンチの代表選手、ロティー・ド・ポー(ローストポーク)」

【材料 4~6人分】
豚肩ロース塊り肉約1kg、ニンニク4片、じゃがいも500g、玉ねぎ大1個
【スープ材料】
熱湯300cc、ブイヨン1個、乾燥タイム2つまみ、ローリエ1枚、カレー粉小さじ1、塩胡椒適宜、生クリーム100cc、オリーブ油適宜、好みでマスタードなど。

自分流×帝京大学

父ちゃんの料理教室「フレンチの代表選手、ロティー・ド・ポー(ローストポーク)」

※おまけ。りんごのコンポートをジャガイモの代わりに使うことも多いから、追記しておくよ。

皮をむいて4等分に切ったりんごをココット鍋に入れ、大さじ3の水を加えたら、フタをして火にかける。りんごが柔らかくなってきたら、木べらでりんごを潰しトロトロになるまで煮込めば完成。

【材料】
りんご小さめだったら4個、大きめだったら3個、水大さじ3、以上。ボナペティ!

父ちゃんの料理教室「フレンチの代表選手、ロティー・ド・ポー(ローストポーク)」

父ちゃんの料理教室「フレンチの代表選手、ロティー・ド・ポー(ローストポーク)」

※ 息子のための料理教室は大和書房刊。

地球カレッジ